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売上を下げ、社員を増やし、週休3日にする決断の背景

先日、弊社の方針をサクッとTwitterで投稿すると色々反響があった。
このような判断に至った理由が知りたいという連絡を受けたので自分なりの考えを今回はまとめたいと思います。理由はとてもシンプルで「利益よりクオリティ重視」という点。

これら3つの方針は、それぞれ連関しあって作用しています。一つずつその決定に至った考えをまとめます。

売り上げを下げる理由

まず法人組織は拡大していくことが必然的な目標になる不思議な空気があります。投資もそうですが成長分野にお金を突っ込むとか、上場を目指すとか、そういう産業は売り上げも規模もスケールしていくのがデフォです。

しかし、僕がいる産業はジャンルで行くとサービス業?アイデアとかクリエイティブで行くと製造業?という、リソース/人に源泉としたビジネスです。そしてクリエイティブや発想を豊かに生み出し続けるには、人として豊かに暮らしていく必要があります。

徹夜当たり前で土日にも出社して残業地獄という状況から、生活者が喜ぶような表現や発想というのは生み出しにくいという持論もあり、うちの社員は残業なしで人として豊かに暮らしていくことを忘れないように言い続けています。

毎年、かなり変動するんですが、原価率は45−50%あたりの水準のビジネスです。例えば1000万の案件があれば、企画・戦略・制作進行・ディレクション・などなど上流工程の作業を弊社で450−500万で仕切る感じです。残りの半分はデザイナー・エンジニア・印刷・カメラマン・設計・施工とかで500万とか。面白いものあれば、ガンガン自分たちの利益を食って発注かけていくので本当バラバラなんですが。

売り上げでいくと、以下のような推移。

1期目(1人):3500万
2期目(3人):3300万
3期目(4人):7000万
4期目(4人):7000-8000万(予想)
5期目(5人):1億前後!?(予想)

2期目で凹んでるのは社員教育に集中していた1年だった感じです。チームメイク2時間をかけて3期目に倍近く数字が跳ねます。スタッフの成長を鑑みると今期の着地はこのあたりか、それ以上か。

大体損益分岐は半年か8か月あたりでクリアするのだが、今期はコロナパニックもあり仕事が増え、同時にキャッシュも増えた結果すでにクリア済み。ここから先はお金を増やすか、余裕を増やすか。この時点で社員が路頭に迷うことはないので僕は後者を選んだ。むしろ昨年数字を下回ってもいいとすら思っている。

大切なのは利益の最大化ではない。なぜならうちのビジネスの厳選は社員だからだ。彼・彼女らが豊かであることが、うちが長く健全に組織として生きているける唯一の方法だから。いい会社だなーという意見は間違っている。メチャクチャビジネスの話だから。例えば僕がアル中で脳みそが故障すると、もう生産されるクリエイティブは生まれない。壊れた機械では利益がうめない。冷たいように見えるがこれと同じ発想である。

同時にうちが長期的に安定した経営を実現するためには、安定した高いクオリティの納品を行う必要がある。そう考えると、膨大な時間残業させたり、土日も休みなく働かせたり、家族や恋人とゆっくり食事もできないようなオペレーションはクリエイティブの会社を経営している人間として、いい選択じゃないんじゃないかなと毎回思ってしまう。もちろん作ることに熱中して朝まで作ってたみたいな熱狂は最高。それを組織が押し付けるのはNGという価値観だ。

なので、うちは売り上げを下げる。トレードオフで余裕を手に入れる。
このビジネスの良さは、初期投資額の小ささ、リソースは人のみ。という先立つものの少なさだ。守るべきものがとてもシンプルである。社員を守ることは長期的に見て良いクリエイティブの生産性をあげ、単価が上がる。余暇を維持したまま緩やかに利益は上がっていくことが実現できる。

社員の給与を上げながら、組織が維持できるラインを見極める。営業利益が残りすぎても上述したようにうちの組織が投資できるのは「人」のみ。もしくはPCくらい。設備投資もほぼない業態&この原価率だからできることなのだなと思う。売り上げを捨てることで余裕を手に入れる。この価格がついてない「余裕」が未来の利益を生み出していく。なので僕は売り上げを下げる選択をしました。

社員を一人増やす

売り上げを下げるのに、社員を一人増やす。これは前々から決めていたのことなのですが、先ほど書いたように営業利益の投資先は社員しかいないから。なので一人増やすと同時に制作のコミュニケーション密度を上げていくことを考えています。それはバディ制度。全プロジェクトをディレクター2名体制で動くためです。

俯瞰して弊社の仕事を見た際にクライアントとの対話とたくさんの制作チームとの対話で恐ろしい数のやりとりが発生する。これらを整理していると対話だけで1日がすぎていく。そこでバディ制度だ。片方はクライアント、片方は制作チーム。時には入れ替わり立ち替わり連携することで対話の密度を上げていく。

このバディ制度を導入する理由で一番大きのは関わるプロジェクトが巨大になって来ている点だ。これを一人で立ち向かっていると心身ともにくたびれてしまう。重責もあるし、人によってはこれで折れてしまう。その負荷分散の意味もある。

また売り上げを下げるという余白の確保と、仲間を増やすことでの負荷分散。この合わせ技で業務効率を上げるとともに極端に数字が落ちすぎない状況を担保することを目指している。実験的ではあるがおそらくうまくいく算段でいる。

週休3日にします

で最後のこれ。売り上げを落とすという目標を達成するために稼働時間そのものを削るという選択。弊社は残業しない会社なので今まで40時間/週の労働が32時間/週に落ちる。

クオリティ担保のために必然的に受注できる案件の総量が決まる。新たに生まれる1日の休日は社員の新しいインプットを与え、体を休め、限られた時間だからこそ業務の深度が上がっていくと思っている。

これを決断できたのも初年度一人の時、それが実現できていたからだ。
32時間だけ働いて、全然生きていけた。僕含め5名いるメンバーが月〜金バラバラに決めた曜日を休みにする。

そして、バディ制度を取ることで一人が休みでも一人がフォローに回れるためにプロジェクトがこれで止まることはない。各社員がしっかり休みながらも現状もしくは現状より高い密度で限られたプロジェクトの制作を丁寧に安全に進めることができる。

稼ぎは落ちるだろうか。短期的な目線でいくと、稼働日数=製造稼働日数に近いので数字が落ちるように見える。しかし、長期的に見ると安定した、地固めされた強い経済基盤になるのではないかと思っている。

クオリティを上げていくための3つの連携

手書きのめっちゃ簡単な図解でごめんなさい。
バラバラのように見える3つのことは、目標とする未来の状態を作るために連環しあっています。細かく書き出すと無限に出てくるのでシンプル目に整理します。

1.クオリティを上げるためには余裕が必要
2.では物理的に稼働数を減らそう⇨週休3日にする
3.稼働は減るが対話密度は下げたくない⇨社員を一人増やす
4.バディ制度を導入し、各自別日を休日と定めることでフォローアップ体制構築
5.売上落ちつつも制作体制としての地盤固めが実現
6.無理のない速度で死なないスコアを維持し、顧客満足度・高いクオリティを生み出しながら正しい成長ルートの確保

みたいなことです。
簡単にいうと倍々ゲームでの成長の中にいるのですが、その成長速度には痛みとリスクが伴うものだと思っています。また同時にそれはいつでもくる破綻シナリオも含まれており、創業まもない組織から5期目は強く安定したチーム体制と経営状況を作っていきたい。そんな思考のはずだったのに、まぁまぁ攻めた判断と決定になっている。

この方法で潰れかけるかもしれないし、どうなるかは僕の責任なんだけど、今まで以上により良いものを生み出していくには、この方法しか思いつかなかった。
4月あたりから週休3日のテスト運用と採用はスタートしていく。どうなることやらだけれど、このチャレンジを成功させるのもぬえという会社の存在意義でもある。今までとは違う組織のあり方を模索し続けていきたい。

潰れたらごめんな。あと銀行もごめんな。

いただいたお金は子どもに本でも買おうかと思ってます。