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香り空間プロデューサーが教える、季節を「香りで演出する」メソッド

こんにちは。

香り空間プロデューサー、郡(こおり)香苗です。

このnoteでは、香りの演出ウラ話、香りを仕事にするためにやったこと・やらなかったこと、私が最近気になっていることなどをお伝えしています。

手帳術マニアの私は、10月から12月にかけて来年のスケジュールを作り、夢を叶えていくという手帳を愛用しています。「来年は、あんな仕事にチャレンジしたい!」「こんな自分になっているといいな!」という夢を、ワクワクしながら書き出しているところです。

私にとって秋〜冬は、今年も1年頑張った! と自分をねぎらいつつも、来年はもっと大きな夢にチャレンジしようと心の準備をする期間なのです。

「季節のイメージ」を香りで表現

※イメージ写真です


秋が深まり、風が冷たく感じる季節になりました。香りの空間演出のお仕事では「この季節の香りを作ってほしい」というオーダーもお受けしています。

「秋の収穫祭」「ハロウィンの香り」「寒い冬の気分」など、どんなイメージでも、香りをお作りしています。

数年前、某テーマパークで開催された大人向けのハロウィンイベントは古い洋館ホテルが舞台という設定だったので、やや甘めの香りに高級ホテルに置かれているような石けんの香りなどを重ねて。

「雪が降っていて、鼻がツンとするくらい寒い朝の空気」というリクエストには、針葉樹と野焼きの香りで表現しました。

曲をイメージした香りに対して

作曲家からの思わぬ反応とは?


※イメージ写真です


実は、「こんなイメージで」というオーダーに対して、私が的確な香りを提示できるようになったのは、訓練あるのみ!でした。


起業する5〜6年前、私はアートや曲から香りを作る練習をしていました。

しかし世の中にある作品からインスピレーションを受けて香りを作っても、自分ひとりでは、その作品を香りでうまく再現できているのかどうかが判断できません。


「アートの製作者に香りをかいでもらい、感想を聞いて答え合わせをしなければ、訓練にならない」と考えた私は、もともと友人だったとある作曲家にメールで連絡をし、曲の貸出しをお願いしました。

その方はパソコンでインストゥルメンタル(楽器だけで演奏された曲)を作曲されています。いろんな音が出る電子音楽なので、さまざまな香りを創作する訓練にぴったりだと思ったのです。

作曲家からは「外部の会社のために作った曲は提供できないけれど、自分の作品なら渡せます」とお返事をいただきました。私はさっそくその方の曲を聴かせてもらい、香りの創作を始めました。

届いた曲の中で私が選んだのは、歌詞が入っていないアンビエント系(環境音楽)です。強いメッセージが含まれていないため、香りの軸となるのは私が感じた印象だけ。感性を研ぎ澄ませながら作業し、香りのサンプルを3つ作って作曲家にお渡ししました。

「まさにこの曲のイメージ通り!」

「うーん、もっと甘めを足した方がいい」

「全然違うなあ」

といった感想を期待していたのですが、返ってきた答えは

「すごいね、でもどの香りもよくわからない」

という、拍子抜けするものでした。

私はふだんから香りを意識して過ごしていますが、香りを意識していない人にとっては「わからない」世界なのだ、とその時初めて気づきました。

その方からは他にも数曲を提供していただき、私が香りを作ってかいでもらう、というセッションを何度か繰り返しました。

やりとりを繰り返すうち、その作曲家から「香りが理解できるようになった」と言ってもらえるようになりました。理由は、その方の香りに対する感性が磨かれたのと、私の腕が上達したのとの両方だと思います。

香り演出の設営現場

創作した香りは、テーマパークや商業施設などに置かれることも多く、香りをかぐ人たちは「香りに、さほど思い入れがない」ことがほとんどです。香りの訓練で作曲家の方に「わからない」と言われた経験から、「季節の典型的な香り」を求められたときは「わかりやすい」香りを提案することを心がけるようになりました。

日本は四季があり、季節ごとのイベントがきっちり設定されています。街中では、ハロウィンの装飾が終わったらすぐにクリスマス準備のシーズンに突入します。商業施設では、クリスマスが終わるとツリーが片付けられて、次の日にはお正月の門松が置かれます。

シーズンのイベントは「わかりやすい」装飾で、私たちに「クリスマスです!」「お正月の季節がやってきます!」と伝えてくれます。そこに必要なのは「わかりやすい香り」なのです。

見えない香りの深い意図は

「文字」情報を補足すると伝わりやすい

西宮ガーデンズメインエントランス桜の香りの説明

季節感を感じてもらうだけではない、テーマ性のある香りを演出する場合、私は「香りの意図やコンセプトを文字で表現して掲示したほうがいい」と提案しています。

商業施設など不特定多数の人たちが歩く場所でディスプレイや香りで空間演出をしても、ほとんどの人は企画テーマや製作者の想いを受け取るのが難しいからです。

2016年イオンモール伊丹に設置されたクリスマスディスプレイ。
香りを拡散する機械を木の根元に置きました。

2016年にイオンモールの一角でクリスマスのディスプレイが設置されることになり、そこで香りを拡散することになりました。

テーマは「ノスタルジック・クリスマス」。
クリスマスの起源や歴史に想いを馳せてほしい!という意図で、本物のモミの木が置かれることになりました。

クリスマスの起源や歴史を香りにするなら……?

新約聖書を読んで勉強すると、イエス・キリストが納屋で誕生したときに東方の三賢人がやってきて、救世主=キリストに贈り物をしたということがわかりました。

贈り物は3つあり、1つ目は金、2つ目はフランキンセンスという香料。フランキンセンス(乳香)は、現代でも美容液やアンチエイジングクリームなどに合わせられている香りです。3つ目はミルラ(没薬)。防腐や非抗菌の作用があるとされており、古代エジプトではミイラづくりのために作られたと言われています。こちらも現在、アロマの原材料として使われています。

ミルラの木/※イメージ写真です

そうした背景を知り、私はスパイシーでウッディなフランキンセンスと甘く複雑な香りのミルラを合わせて香り作りをしました。クリスマスディスプレイでは、本物のモミの木が数本置かれ、木の下には雪をイメージしたふわふわの綿が添えられました。香りを拡散するオリジナル機械を木の根元に設置し、行き交う人の鼻腔に届くように香りを漂わせました。

そして、ディスプレイスペースの脇には、展示テーマや香りについての説明が書かれたPOP看板を掲示してもらいました。モミの木を見て、香りをかいで、そして説明を読むと、クリスマスの起源や歴史がすっとわかるという仕掛けです。

わかりやすい香りも、そうでない香りも、ひと言では説明できない難しさがあります。香りをかいだ方が「何か香りがするけど、わからなかった」とならないよう、さまざまな工夫をこらして香りをお届けしています。


でも、もし「香りの世界をもう少し知りたいな」と思われたら、普段の生活のなかで香りを意識してみてはいかがでしょうか。

季節のお花の香りが漂っていたら「花はどこにあるんだろう、風はどちらに向いて吹いているんだろう、どの範囲まで広がっているんだろう」、よく行くお店の香りをかいだら「なぜこの香りを選んだのだろう」と、あれこれ考えてみると、香りの世界の一歩奥に進めると思いますよ。


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私が代表を務める大阪・淀屋橋「SceneryScent(シーナリーセント)」では、イベントや展示会、店舗などで香りを演出する事業を行っています。

世の中に「ある」香りの再現も、「ない」香りのオーダーメイドもOK。

また、イベント会場などで香りを拡散する機器を開発。販売やレンタルも行っています。


◆イベント、ライブ、テーマパークで香り効果演出
◆商業施設でのクリスマス装飾香り演出
◆ホテルブライダルでの香り空間演出
◆ミュージカルなど舞台演出での特殊効果の香り演出
◆アニメやゲームなど推しキャラの香り

シーナリーセント https://sceneryscent.com/

郡(こおり)香苗

Instagram https://www.instagram.com/sceneryscent.kanae/

Twitter https://twitter.com/kanae_kori







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