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日記のようでそうでないもの #9

2018.11.23(fri)

2016年に公開されていた映画、「怒り」をAmazonプライムで見たので、個人的な感想(ネタバレ無し、だと思う)。

主演級の名だたる役者が揃い踏みのなか、主要な登場人物としての一人の沖縄の少年を演じていた、今作品で初めて見る、役と同世代であろう、少年の役者の演技に一番心を揺さぶられた。

一番初めに登場してきた場面では、正直お世辞にもイケメンでもなく、垢抜けない、多分本当に沖縄に住む、エキストラ程度の素人の少年だと思っていたのだが、ストーリーが進むに連れ、本作の要ともいえる、「怒り」を象徴する人間像として描かれており、彼はその難しい役どころを見事に演じきっていたと賛辞を贈りたい。

人間が生きていく上で、憤怒を抱えるとしたら、自己への愛、もしくは自己と繋がる他者への愛、どちらかに分別はされるだろうが、根底に愛情が潜む。

他者への愛が故の怒りと、自己への愛が故の怒り、この愛の対比を描いたのが今作品なのではなかろうか。

同監督の過去の作品「悪人」では、原作を読了後に映画の作品を視聴したのだが、善と悪の、倫理観とエゴイスティックによる境界線の本質の危うさを観る者に問いかけるような、演出の難しい作品を、よくぞ劣化させず実写化できたものだと唸らされた。

今作品は原作を読んでおらず、果たして原作の世界観はどうなのか、原作の吉田修一氏の小説も気になるところであるが、ミステリーとしての視点で言うと、映画では、冒頭の殺人事件の犯人の、動機の背後にある心理的要因は映画では今ひとつ説明されておらず、ただのエゴイスティックなサイコパス野郎、としか伝わって来なかったのが残念である。

だが、邦画としては良作であるので、未視聴の方、現在Amazonプライムでは無料期間なのでオススメしたい。


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