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All That Meat and No Potatoes

「オール・ザ・ミート・アンド・ノー・ポテイトウ All That Meat and No Potatoes」は、1941年にファッツ・ウォーラー(Fats Waller)とかれのマネージャーであるエド・カークビー(Ed Kirkeby)によって書かれた曲。

食べ物が女性のメタファーに

肉とジャガイモが出てくるが、食べ物の歌そのものではなくて、そういった食べ物をメタファーに情欲を歌っている。大食漢なファッツ・ウォーラーらしい曲かもしれない。また、食べ物の曲といえば「フリム・フラム・ソース」や「エイント・ザット・グレイヴィー・グッド」ある。

さて「肉ばっかりでジャガイモがない all that meat and no pota」という表現は、「大きな身体だけど胸が小さな女性」を意味する。普通、ステーキなど肉料理にはジャガイモがついてくる。しかし、この料理には、あるべきはずのジャガイモが付け合わせていない。そんな矛盾を表現するためのメタファーとしてステーキとジャガイモが使われている。

このについてファッツ・ウォーラーの従兄弟でツアーの運転手をしていたハーマン・バスター・シェパードは次のように語る。

あるツアーで、キティ・マレー[という歌手]がおれたちと一緒に演奏することになって、おれたちは彼女の伴奏をした。キティは背中の大きな女性で、ある晩ステージでファッツが彼女の大きなお尻を見て「肉ばっかりでジャガイモがない all that meat and no potato」と言ったんだ。おれは、ファッツがいろんな女性にその言葉を言うのを何千回も聞いたが、[当時のファッツ・ウォーラーのマネージャーで曲作りの手伝いをしていた]エド・カークビーがそれを聞いたのは初めてだった。カークビーはファッツと座り、一緒に”All that Meat and No Potatoes”を書いたんだ。

(Waller & Calabrese, 2017, p. 146)

この曲は見てくれを蔑む曲では決してない。そんな「見てくれなんかどうでもいい、俺は腹が減った!肉ばっかりでジャガイモがない料理を待ってるんだ!」と歌っている。コメディ・タッチで明るく楽しい曲であることは変わりはない。

録音

Fats Waller and His Rhythm (NY March 20, 1941)
Fats Waller (Piano and Vocal); John Hamilton (Trumpet); Al Casey (Guitar); Cedric Wallace (Bass); Slick Jones (Drum) Eugene Sedric (Alto Sax)
やっぱファッツ・ウォーラーの録音。この時期のこの編成が素晴らしい。アル・ケイシー、セドリック・ウォレンスとスリック・ジョーンズがファッツ・ウォーラーが作るリズムの隙間を埋めてとても濃厚。またこの録音はノヴェルティっぽくもある。そういった意味でみんなに開かれる演奏。

New Orleans Jazz Vipers (New Orleans 2015)
Joe Braun (Alto Saxophone); Kevin Louis (Trumpet); Craig Klein (Trombone); Oliver Bonie (Bari Saxophone); Molly Reeves (Guitar, Vocals); Joshua Gouzy (Bass)
大好きNew Orleans Jazz Vipersの録音。モーリー・リーヴスのギターのボーカルもかっこいい。ファッツ・ウォーラーの録音よりもラフ。そういったラフさがありつつもリズムが芯を食っている。

Gordon Au (Asheville, December 28, 2019)
Laura Windley (vocals); Jim Ziegler (vocals); Gordon Au (trumpet); Keenan McKenzie (soprano sax); Jacob Zimmerman (clarinet); Lucian Cobb (trombone); Jonathan Stout (guitar); Chris Dawson (piano); Jen Hodge (bass); Josh Collazo (drums)
ゴードン・ウーのライブでの録音。サッチモのファッツ・ウォーラー・トリビュートでの録音を下敷きというよりも、サッチモのホット・ファイヴあるいはホット・セヴンに志向しているように聴こえる。この録音でもかなりレイドバックした演奏が聴ける。また最初のトランペットでのテーマのカウンターメロディーをキーナン・マッケンジーがソプラノ・サックスで演奏しているのだが、それがとてもブルージーで素晴らしい。

参考文献

Waller, Maurice & Calabrese, Anthony. (2017). Fats Waller. Minneapolis: University of Minnesota Press.


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