見出し画像

ACT.36『半ばにて』

軍港の街からの帰還

 さて、東舞鶴にて抑止を食った状態になってしまった自分だったが、過ごし方に悩んでしまった。
 新日本海フェリーの方には
「16時以降に戻ってきてください」
との指示を受けていたが、結局その時間をどうして潰すかに悩んだのである。
 その時間を、京都丹後鉄道の撮影に費やしても良いし舞鶴の周辺観光をして暇を潰すのも良いし。自分としては悩む判断であった。
 と、結局自分が選んだ選択としては
『一旦、京都市内に帰還する』
という判断だった。この判断にて、自分は再び来た道を亀岡まで特急列車に乗車し、軍港の街である東舞鶴を出発したのである。
 車両は前日の京都丹後鉄道の気動車での運用ではなく、JR西日本の287系電車だった。コレが本来の姿なのだろう。高運転台の電車、というところにかつて山陰地方と関西を結んだ183系電車の面影を彷彿とさせる点がある。

思いがけずとして

 乗車したのは、まいづる8号だ。昼手前に東舞鶴を発車して、京都市内に昼過ぎに到着する列車である。
 本来であれば、東舞鶴を1番早くに出発する特急に乗車でもしようか、そして東舞鶴を少し朝早くに出発する電車に乗車して西舞鶴の京都丹後鉄道の車庫の方をじっくり覗こうかと考えていたが、そうは体力が保たず結局ホテルのアラームコール(あの電話は何というのだろう)で起こされ、チェックアウト10分前の時間となり清掃員氏と気まずい鉢合わせ。時間は昼手前になり、こうして急ぎ気味に特急の方に乗車して京都市内に戻っているという状況なのだ。
 と、そんな失敗を背負っている中に西舞鶴の車庫にKTR001形とKTR8500形が停車しているのが見えた。
 KTR8500形は、今年より新たに仲間入りした新形のJR東海から譲渡されたキハ85形を改番した車両である。
 半分は運転整備として福知山の運転区に送り込まれたが、もう半分は部品確保を目当てにこうして西舞鶴に常備されている状況なのである。
 と、自分ごとなのだがこのKTR8500形には勝手ながら思い出があり、実はKTRに京都丹後鉄道に譲渡された新形車両を確認したところ、車両番号がかつて祖母の介護ついでに撮影したキハ85形と同じ番号であることが判明した。まさかの再会だったのである。写真は確か、伊勢鉄道の鈴鹿付近で撮影した写真だったと思うのだが非常に鮮明な記憶で、
「まさかお前が…?」
とつい小声に出てしまう反応だったのは言うまでもない。
 部品確保編成か、営業編成になるか分からないが、鈴鹿以来の再会を次はじっくりと持てるようにしたい。
 そして、奥に停車しているKTR001形。この車両に関しても、少しまた変わった話が存在した。
 この車両はかつて、『タンゴエクスプローラー』としてJRに直通する特急列車として走行していたのだが、現在は長期休車を経てこのように待機している。
 だが、自分がこの車両を見てから少しした後に京都丹後鉄道が
「タンゴエクスプローラー塗装のメモリアルトレインの運転を実施する」
との発表をしたのだった。
 車両は既存の営業用車両であったのだが、このKTR001形の復活が遠ざかるニュースであった事はほとんど間違いがなかったであろう。
 京都丹後鉄道の時代になってからも、度々の運転。そして記念的な存在として何度も運転を重ねてきた存在の車両だっただけに、こうしてまさかの復活を遂げたのは少し嬉しいようで複雑な気持ちになってしまった。

 その後、列車は綾部で福知山方面からの特急列車と連結して長編成を組む。
 この時点で列車の椅子を回転させ、京都方面に向ける事になるのだが少しこの作業というのはなにか億劫なものだった。
 しかしそれにしても、綾部からの線路をじっと見ているだけで自分の中には悔しい思いというか、
「なんで俺は今頃こんな場所に居るんだろうなぁ」
という気持ちが増してぼんやりした感覚になどなっていたのだった。
 山家駅の近くを通る時などは前日の倒竹の話など考え、
「あぁコレが竹の倒れた場所か」
などと考えて少し苛立ちを考えてしまったものである。
 そうこうしているうちに、列車は園部に到着していた。

リターン

 亀岡に到着した。正式には、亀岡に到着してしまった、だろうか。
 今頃は北海道に近い…か、北海道付近の海を眺めて何かものを思っているのだろうかなぁ、なんて考えながら目の前の特急列車を見送るのは少し辛いようなそうでも無いような気がした。
 時刻は既に昼過ぎの時刻になっており、ホテルで蓄えてもなおまだ眠気がする。
「帰ってマンガでも読むかぁ」
なんて少し考えていると、少し晴れそうな気分になってくるのだった。
 亀岡からはこの駅始発の普通電車に乗り換え。
 補助犬がしばらくすると乗車し、そして嵯峨嵐山からは訪日観光客で一杯の車内になった。暑苦しい電車の車内に押され、自分は一時帰宅。
 その後は買い貯めたマンガを読み進め、更に睡眠を貪り夕刻まで過ごした。

 再び、乗車券と特急券を買った。
 さて次は、無事に東舞鶴に到達し、フェリーに乗船して北海道に上陸できるのだろうか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?