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皆、去っていった。僕だけが大人になれなかった。雨の日。

本当はわかっていた。どうにもならないし、どうにもなっていなかったことに。

周りを見渡すと劣等感しかない。すげー優秀じゃん。この人らは日々鍛錬し、積み重ねてきた人なんだなということが見て取れる。

器用だなー、小気味よくテキパキこなしていくなー。安定感あるなー。それだけ繰り返してきたってことなんだろうなー。

自分はゴミだなー。少し仲良くしてくれる人がいるのは、僕が奇抜な行動に出て悪目立ちしているだけで、かなりの差があることなんて初めからわかっていた。

だから必死に目を逸らしていた。誰よりも自分がよく知っていたから、強く否定することで忘れたかったのかもしれない。

仲間だと思っていた人の、少し大人びた表情が胸をえぐる。皆、進んでいくんだなぁ。去っていくんだなぁ。自分だけが留まっているんだなぁ。

ちょっと前まで「自分のほうがまだマシだから、この人とは安心して話していられる」と思っていたのに。

そんな驕りがもはや恥でしかない。束の間に胸をなでおろした分、痛みが何倍にもなって返ってきた。人は成長していく。自分だけが立ち尽くしている。

後から始めた人にも追い抜かれていく。そのことによって自らの限界を意識させられる。そして重ねてきた時間の無為を。どこで何を間違ったか。そもそも解を持たない方程式だったか。

不登校気味だった君の姿を探していた僕、空白の席、期待してないふりで通り過ぎた廊下。あの頃から何も変わっていなかった。

ずっと弱いままで、何を為すこともなかった。誰も相手にするわけがない。もはや視線は暴力。

僕も僕なりに必死にやってきたつもりたったが、それはただそれだけの話。

薄くなっていく街灯、まだ照らし出されている雨の粒、顔のない人々が行き交う黒い交差点。

信号機と白線の動きについていけないよ。誰か助けてくれ。

重い雨の中では、誰かが涙を流しても気づかれることはないのか。目立たないほうがいいのか。

君の日々の理想像にも現実的構想の中にも僕は必要ないみたいだ。妥協案の片隅に座り込むことしかできなかった。迷惑がられて心もとなく。押し売りみたく。

走らせるペン、かすれる文字、失われたもの、届かなかった想い。窓の外は雨、ぽつりと知らない植物の葉の上を滴り落ちる。消えていく。

あの日と同じだ。今頃何をしているんだろう。素直に幸せを祈れそうにはない。それよりも……

頂いたサポートは無駄遣いします。 修学旅行先で買って、以後ほこりをかぶっている木刀くらいのものに使いたい。でもその木刀を3年くらい経ってから夜の公園で素振りしてみたい。そしたらまた詩が生まれそうだ。 ツイッター → https://twitter.com/sdw_konoha