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桁外れの読書家が「図書館」について語った本【徒然読書57】



いつも行く本屋さんの特集で見つけた本です。

少し値が張りましたが、初めてみる本であまり売られていないと判断して買ってしまいました。

表紙の紙がほんの少しざらっとしてて、それもいい!!!
つやつやじゃなくて和紙っぽさがある表紙なかなかないので、心を掴まれました。


さて、著者はどんな人なのかと言うと、アルゼンチンに生まれ各国を行き来した後にブエノスアイレス大学図書館館長になった方です。

半世紀以上自身の蔵書を増やしてきた類なき読書家でもあります。

そんな本には様々なかたちの図書館が登場し、知や時間についての古人の言葉がちりばめられています。
その想像が幅広すぎて、知識が幅広すぎて圧倒されますが、本好きには共感できるところがあると思います。

どこまでが現実でどこからが架空なのか。そう考えるのも楽しいです。


図書館の在り方について

根底にあるテーマは「なぜ人が情報を集めたい」と思うのか?
そう著者は書きます。

その欲がバベルの塔やアレクサンドリア図書館に顕現し、「宇宙」を秩序立てて分類していく。

すべてのテクノロジーは特定のメディアを提供するが、メディアはそれ自体が一つの働きを持ち、最適な収納場所とアクセス方法を限定する。

p78

世界の百科事典、無限の図書館は存在する。それは世界そのものなのだ。

p87


図書館は秩序だった空間でもありながら、ボルヘスの言うように無限でもある。

その性質を華麗に言語化されていると感じました。

本と個人のつながりについて


そんな図書館や書斎の中で、本を読む人の美点は「読書を通じて知ったことを、解釈し、関連付け、変貌させる才能」と主張しています。

本もほかの本の上に積み上げられ、その積み重ねによって変化し、豊かになる。

p187

心と同じように図書館はそれ自身を反映し、新たな光を受けるたびに幾何学的に増殖するからである。

p178

本は独立して存在しているのではなくて、お互いに関わりあって変化していく。
その対象は本だけでなくて私たちの心も含まれます。

自分という個人が何者なのかを意識すると同時に、人間という集団が、理解しがたい世界に住む市民であることを意識する。

p211

図書館にある本たちはその意味らしきものを言葉にし、内包している。著者はそう言います。

自己や社会を客観視する時に本、図書館という空間は有効ですね。

人は光の中で文字を読み、闇の中では会話をする。(中略)光の中で人は他者の創作した物語を読む、闇の中で人は自分の物語を創作する。

p246

これはすっと心に入ってきます。
文字は光がなければ読めなくて、光がない時は心の中の本と話しながら自分の物語や軸を紡いでいくのかなとイメージしました。


難しそうだな~と思うところがあると思いますが、本に部屋が侵食されるとかすべて読んでいなくてもそこにあるだけで良いとか、夜は本と語る時間にするとか、共感できるところは多くありました!

私が本に囲まれて特に幸せな気分になる場所のひとつが、大学の閉架。
地下におりて、ドアを開けたとたんにツンとくる古書の匂い。

そして首を精いっぱい上にあげて読みたい本を探す。
手が届かなければ梯子に上って未知の本と顔合わせしながら手に取る。

それが最高でした。今となってはなかなか経験できないのが残念ですが…


少々脱線しましたがひと味違う読書体験でした!


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