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「初心忘るべからず」は、一生忘れられない受講生が教えてくれました。

研修講師の登壇デビュー時、感情が動き過ぎた「初心忘るべからず」が私を救ってくれた嬉しかった一日をお話しいたします。



その受講生との出会い

研修講師デビューは、コミュニケーションがテーマの少人数制研修でした。
名簿を見ると、数人の若手女子の名前が書いてあり、どんな子が来るのかな、とドキドキ不安が大きい、この待ち時間。

開始時間15分前、彼女たちは一緒に会場へ入ってきました。

(あ、ギャルだ)

とてもキャピキャピしていて、でも目はしっかり前を向いていて自分があるな、と思える見た目ギャルなその女の子に、目が釘付けになりました。

ただでさえ初日で緊張しているのに、小心者の私は、反抗的な態度を取られたらどうしよう、、、とそれしか考えられないまま、「おはようございます!出欠をとります!」と内心とは裏腹に、不安を自分で吹き飛ばすために大きな声を上げた挨拶で研修はスタートしました。

私は「講師をするときに一つだけ気を付けたい想い」を持って、登壇することを決めていました。

「講師だからといって偉そうにしないこと」

「みんなに教える」という上からスタンスの発言はしないように、目線は受講生と合わせることを意識しました。ゆえに、意識しすぎて変な敬語を使ってしまったりしましたが。

その意識と行動は、決して間違いではなく、後の研修講師人生を長く続けていくための大切なものになるのでした。

初日を無事終えたときにソレはやってきた

彼女たちはとてもまじめで、楽しんで受講してくれていました。
問いかけにも懸命に頭を抱えながら考えて、堂々と間違えては、お互いに笑いながら指摘し合うといったほのぼのとした空気で、無事に初日が終了しました。

片付けをしているときに、ギャルだと感じた受講生のAさんが私のところへやってきました。
少し怒り気味なトーンで、
「あのぉ!」
と話しかけてくるのです。

無事に終了したと思っていましたが、最後のどんでん返しでクレームがあったのか!?!と心臓がドギマギし、そんな内心を隠すように、平静を装いながら「どうしたの?」と返します。

「今までの講師の先生はー、なんかー、上から目線でー、“教えてあげます”って感じで、話すんですよー。」

Aさんは威圧的に文句を言ってます。もしや、私にもそういう節があったのだろうか、と不安の大波がザブンザブンと押し寄せてきて、初日から講師失敗したのかも、、泣きそうになります。

「それでー」

はい。

「澤田先生はー、そういうんじゃなくてー、最初の挨拶で、●●●●って言ってて~、なんかびっくりして、なんかー、嬉しかったんですー」

「え?」
口に出てしまいました。

そしたら、怒り気味だったAさんが、今日一番の笑顔でニコーってするものですから、私はキュンッとなってしまいました。てっきりクレームだと思っていたのに、真逆でした。
にやけそうになる顔を抑えながらも、笑顔には笑顔でお返しして、「嬉しい」をそのまま伝えました。

「初心忘るべからず」のマインドで登壇して話して良かったと心底思いました。自分から紡ぎ出すことばの一つ一つが相手に与える影響がとても大きいこと、その怖さも同時に知りました。

その後の受講生、Aさん

この研修はシリーズものでしたので、その後もAさんたちと顔を合わせることがあり、Aさんの率直で素直なお人柄が見えてくるようになりました。率直すぎで、思ったことをダイレクトに言ってしまうので、会社ではきっと敵も多いだろうな、と感じるほどです。

素直なAさんは、とても伸びしろがありそうな女性です。

Aさんが他の講師の先生に、彼女のご両親を根拠なしに咎められたことが話題になり、研修中に泣きだしてしまったこともありました。私はなんだかお母さんになった気持ちで、研修を一時中断し、みんなとフォローに入ったこともありました。

ある時の研修では、Aさんが、今日の担当講師が私では無くその因縁の講師の方だと思っていたら、会場に私がいたものだから、「えーー!うそ!澤田先生なの!!まじで!?」って推しのアイドルに会ったかのような(言いすぎかもしれません)喜びを全身で表現してくれた時もありました。

アンケートでは、人生でこんなに嬉しいことばを貰ったことは無いくらい、素敵な言葉を貰いました。私の宝物でもあり、戒めでもあります。

嬉しすぎるAさんからのアンケート抜粋

そして、シリーズ最終日に、PREP法を活用して、自分の思いを伝えるという演習を行った際に、Aさんは、
P(結論)「私は、澤田先生のような上司になりたいです」
と言ってのけたのです。

驚きましたし、うれしくて、うれし泣きしそうになりました。(我慢できました)

そんなに慕ってくれたとは、なんだかAさんの周りの大人環境はどのような環境だったのか少々心配になってしまいました。
だって、私はそんなにたいそうな人間ではなく、ちょっと小心な普通の人間だからです。

それでも、初心を大切に、Aさんをはじめ受講生のみなさんと触れ合ったからこそ、とても素敵な空気でシリーズ研修を終えることができました。

いつかAさんとどこかで会えたら、こんな思い出話をしたいな、と思っています。

余談:学校の先生はスゴイ

私は「先生」と呼ばれていますが、先生ではないと思っています。研修業界の習わしのようなので、そのように呼んでいただけているのです。恥ずかしいです。よって、その恥ずかしさを感じないように、私は学び、経験を積んで成長していきます。

ところで、この仕事をするといつも思います。

「学校の先生はスゴイ」

私は、講師として受講生と触れ合う時間はそれほど長くないのです。1日や2日、長くても数日。その期間で、とてもパワーを使います。

そう考えると、継続的に生徒に寄り添い、叱咤激励をしながら関わり続けている学校の先生はパワフルだと思います。超パワフルです。
身体も精神も全力で生徒たちに、長期間ぶつかっていく、その姿勢が本当にスゴイという単純な言葉でしか表現ができなくて申し訳ないのですが、

スゴイです。


最後までお読みいただきありがとうございました。
株式会社シールズ

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