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人には誰しも「心の穴」がある

"人には誰しも「心の穴」がある。それを完璧に埋めてくれる相手は存在しない。魅力も欠点もその穴から生まれるものなので埋めなくてもいい。大切なのはその穴を自覚し、受容すること。受容し、受容されるのが愛"

『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(二村ヒトシ)という本に書いてあったことだ。

この『なぜあなたは~』は、自己啓発本のような風貌だが、読みごたえがある一冊。恋愛論を起点に人間の心理を深く洞察している。

著者は言う。「心の穴」は当人が幼く心が柔らかいころ、自我が固まる前に、その親によって作りあげられたもの。どんな人にも必ず「心の穴」は存在している、と。


僕にももちろんある。それが「心の穴」だと気づくのに随分と時間がかかったが。幼いころからずっと存在はしていたのだろう。でも、そういうものが存在していて、親が深く関わっているということは大人になるまで分からなかった。見えないものを知覚するのはひどく難しい。

僕の「心の穴」の立役者(皮肉)は父だ。詳細は述べないが端的に言うと、父は「何かをやらないこと」によって息子に心の穴を作った。

いろいろ受け入れ難い。ないことが心の穴を作るだなんて。そのないことが他者の心を傷つけさえもするなんて。(いや、穴というのはそもそも空洞を示すものだから当たり前?)。

ないことで僕は、間接的に傷つけられてきたのだろう。そして、返す刀で、僕も何かをしないことで他者を傷つけている可能性がある。むしろ僕は他者を傷つけないように立ち振舞ってきたつもりであるけど。もしかすると、深い関係になればなるほど、知らず知らずのうちにその相手を傷つけてきたのかもしれない。


では、親によって作られた心の穴は、どうやったら埋まるのか。冒頭にも言ったが、埋められやしない。『なぜあなた~』にはこうある。

相手を求めつづけることで自分の心の穴を埋めようとしていると、相手を受容する余裕がなくなります。
だから「恋をしている間は、その相手を愛することはむずかしい」のです。
じつは相手だって、あなたと同じように「そのままで、いいんだよ」と受け入れてもらいたい(愛されたい)のですから、自己受容できていない二人の恋愛は、綱引きをしているようなものです。
「私には、あの人が必要なんだ!」「私は、あの人を強く愛してる!」と思っている人のほとんどは、相手を愛せていません。 ただ「求めて、執着している」だけです。

74ページ

互いの寂しさを埋め合うような相手を探したとしても、それは恋であっても愛ではない。自分を受容できていないと、相手を愛することもできない。心の穴をしっかり見定めること…。耳が痛い。

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