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進行形JR乗りつぶし日記(少しのオマージュ)#32~ひさびさ二人旅北海道(5)【比羅夫→余市→小樽→新千歳】

 2023年9月24日(日)比羅夫駅で朝を迎える。始発列車の発着も部屋の小窓から見て、食堂で朝食を頂く。ごはん、みそ汁、鮭、玉子焼き等々の伝統的な和食にベーコンのバター炒めを加えたメニューで、昨日のバーベキューに負けず劣らず美味しい。ワンテーブルをTさん、Mさんと私たち4人で囲むというのも最近にはあまりない光景で楽しい。各自の今日の予定の話になり、全員同じ列車でひと駅先の倶知安までは一緒であることが判明する。Tさんは倶知安から『ニセコ号』で函館に戻り、Mさんは旭山動物園に行ってから夕刻の飛行機で関西戻り、とのこと。
 前述のとおり北海道新幹線の札幌延伸により山線は廃線必至という情勢だが、この宿は果たしてどうなるのか気になったので、オーナーさんに訊いてみると、そもそも2030年の新幹線延伸開業を待たずに廃駅になる可能性があるとの答えが返ってきた。毎日の乗降客数をJRに報告しているのだが、どうもあちらは都合のいい数字だけを資料にして早めに廃駅に持っていこうとしている気配が漂っているらしい。クルマで来るお客さんも多いだろうし、ずっと『旧駅の宿ひらふ』として続けてほしいと勝手に思うが、オーナーさんにも色々あってなかなしんどい状況のようである。
 そんなこんなの話をしていると、食堂に置かれたタブレットの画面が明るくなり「3分後に汽車が到着します」という自動音声が流れる。汽車、というのが非常によろしい。しかし廃線あるいは廃駅になってしまったら、宿はあってもこのような趣向はなくなってしまうのだなぁとも寂しく思った。

 これも何かのご縁ですからということで、オーナーさんに4人での記念写真を駅舎をバックに撮って頂き、9時8分発の倶知安行き各駅停車に乗り込む。やがて惜別の感に包まれながら真新しいH100形ディーゼルカーは発車した。ホームではオーナーさんが長い間手を振ってくれていた。

 9時16分に倶知安駅に到着、TさんMさんとはここでお別れし、私たちは20分後の小樽行き各駅停車で余市に向かう。倶知安駅は新幹線工事も真っ盛りであったが、その生存が危惧されていた歴史的構造物の転車台はどうやら保存されるようで、以前にレンタカーで来た時より格段に綺麗に整備された駅前公園に健在であった。
 倶知安からは一山二山と越えて海岸沿いの余市に徐々に下っていく。ニュースによると余市~長万部間は問答無用で廃線決定、余市~小樽間がどうするのか揉めているらしいが、実際に乗ってみると倶知安~余市間も相当の旅客需要があるように感じる。比羅夫辺りと違って結構住宅地も拓けているし、何と言っても観光客の姿が多い。観光客は倶知安まで新幹線に乗ったらいいという単純な結論ではないと思うが、部外者の私の感想はここまでである。

 市街地の進展に反比例して旅情が少なくなってきた車窓を眺めているうちに10時27分に余市駅着。列車は数分の停車後に更に小樽に向け進行するので、ホームからお見送りをしようとウロウロしていると、先頭車両にMさんが座っているのを発見する。Mさんもこちらに気が付いたらしくお互いに手を振るが、発車時間間際に駆け込み乗車があったためか列車は中々発車しない。お互いに手を振り続ける私たちは少々気恥ずかしくなった。

 Mさんと二度目のお別れをした後、余市のウィスキー工場見学の試飲で酒に弱い私だけが酔っぱらい、赤ら顔で余市駅に戻る。余市からは13時47分発の列車に乗り、小樽に14時12分着。小樽から先は既乗なので『山線』の未乗区間はここで終了となった。
 帰りの飛行機は新千歳空港19時半発で時間には相当の余裕がある。最初は札幌の地下鉄やら路面電車やらの乗り回ししましょうか等と相談していた私たちだが、旅も最終日で疲労も溜まっていたので、空港に直行して、ラーメン注入とお土産購入時間に充てるということに落ち着いた。
 お土産も買って空港ロビーでまったりと出発を待っていると、何とまたまたMさんと遭遇する。乗る便は違うのだが、Mさんも旭山動物園で疲れてしまい、早めに空港に来て休んでいたらしい。余市駅での長い御手振りはちょっと恥ずかしかったですねと3人で苦笑した。

 道東の未乗区間が多かったCさんは相当の進捗だったようだが、今回乗りまわし旅での私の進捗は2路線147.2キロであった。JR全体の乗車率も87.683%から88.439%へと僅かに0.756%増えただけだが、久し振りの二人旅は楽しかったし、比羅夫でのMさんTさんと過ごした時間も普段の私らしからぬ(?)貴重な経験で、数字以上に有意義な旅であった。

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