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閑話休題(5)――彼女の事

【注意】今回は特に自分語り&デレ要素が満載です。苦手な方はブラウザバックしてください。

広東語を勉強するために広州の某大学に転学してきた私。

当時はちょうど2年間の中国留学生活の最後の半年ということで、大学に到着した後、気を入れて広東語の勉強をしようと思い、広東語の「相互学習」の相手を探すことにしました。

相手を探す経緯については、「閑話休題~あの日の事。」で話した通りです。Xさんからは、「じゃあ、彼女に●●君(私)の授業の後に会うように言っておく」と言われました。

そして授業が終わった後に、はたして彼女は教室の廊下に立っていました。最初の印象は、、「地味だな」。そして相互学習が始まりました。相互学習は留学生宿舎の私の部屋で行うことになりました。

最初は広東語や日本語で話をしていましたが、彼女は私が思ってたより普通話ができると思ったのか、普通話で会話することが多くなりました。

初めは普通の学習パートナーの関係でしたが、じきに転機が来ます。

日本語学科の彼女はある日私に、「日本語で経済学のレポートを出さなきゃいけないんだけど、自信がない。手伝って」とお願いにきました。そこで私は、留学生宿舎の私の部屋に彼女を呼び、日本語の経済学のレポートのアドバイスをして手伝ってあげました。

そのときからでしょうか。距離が徐々に縮まっているのを私も実感しました。

別の日には、学内で開催されたダンスパーティーに彼女が誘ってくれたので一緒に行ったり、さらに別の日には買い物を一緒にしたりしました。

ある日定例の相互学習の時。

私は彼女に「週末香港に行くんだ。林憶蓮のCD買ってこようかな」と伝えました。すると彼女は「へー!そうなんだ。ちょうど林憶蓮新しいアルバムも出てるしね。李宗盛のCDも聞きたいな」と答えました。

その言葉を覚えていた私は香港に行ったとき、林憶蓮「Love,Sandy」李宗盛「李宗盛的音乐旅程 不舍」を買い、大陸に戻って大学に帰った後、彼女にその旨を伝えました。すると彼女は喜んで「一緒に聞こう」と言ってくれました。

留学生宿舎の私の部屋で、音楽を聴いた私と彼女。私は李宗盛「李宗盛的音乐旅程 不舍」のカセットをデッキに入れてかけてみました。「我是真的爱你」の曲がかかった時、彼女が私にぽつりと言いました。

「これが私の今の気持ちです」

うすうすかんじてはいましたが、それが確信に変わった瞬間でした。私は彼女の思いを受け入れなければと思いました。

当時中二病全開で、今でいう「イキっていた」私。

「人は出会いがあるならば、必ず別れもある」「そういう人生だから、結婚なんかしなくてもいい。ましてや自分がやりたいこともあるし、留学すれば日本に帰っちゃうし」と偉そうに思っていました。だから浮ついた気持ちで、「彼女と付き合うのも留学終了まででいいや」とどこか心の中で思っていました。

でも私のために「糖水」を作ってくれて献身的にしてくれたり、彼女と沙面でデートをして楽しく過ごす中で、心の中にある何かがほぐれていくような気がしました。自分の浮ついた気持ちが、彼女に対するすまない気持ちで書き換えられていくのを感じました。

そのような中、6月のある日に彼女は宿舎の私の部屋で、「卒業式の2次会に使う日本語の歌を探している。何かあるかな」と聞いてきました。

そう。彼女も大学4年生で、7月には卒業していくのです。私は机にあったハイファイセットのカセットを渡して、「卒業写真とかいいんじゃない?」と言いました。

そして卒業式当日。私は彼女の卒業式を見ることはできませんでしたが、その夜に開催された2次会には招待されて参加しました。彼女やXさんを含めた日本語学科の卒業生は「卒業写真」を日本語で歌うパフォーマンスをしました。それを、私は最前列の特等席で見ることができました。

その翌日に彼女は学内の自分の宿舎から退去し、実家に戻っていきました。退去に立ち会うことはできず、さびしい思いでいると、留学生宿舎入口の共有の荷受けスペースに私あてに彼女から小さな箱が届きました。中を開けてみると、箱いっぱいにライチが詰まっていました。その日の夜は、彼女の事を思いながらライチを食べました。

そして、、私も2年間の留学生活を終え、日本に帰りました。

日本に帰ってからの私は就職活動をしながらも、どこかふらふらしていました。中日・日中翻訳者になりたいという夢はある。日本ならば「ひょっとしたら」その夢はかなえられるかもしれない。

一方で中国に残してきた彼女にも髪を引かれる思いがある。でも中国に行って彼女に会うならば、彼女と一生を共にする覚悟をしなければならない。そんな思いから、私はその一歩を踏み出せずにいました。その中で、ちょうど映画館で見た映画が「耳をすませば」でした。

私はそれまで、自分の「夢」を取るか、「彼女」を取るかの二択でしか考えることができませんでした。でもこの映画を見て、「自分の夢も彼女も両方がんばればいいじゃん」と思えるようになりました。

そのような思いを強くし、中国で仕事に就くことを自分で決めました。そこからは速かったです。

単身香港に行き、安宿に泊まりながら仕事探しし、無事香港で仕事を見つけ、彼女とも再会することができました。

その後は紆余曲折ありましたが、彼女と結婚でき、自分が望む職業にも就けています。

自分の人生の重要なときに彼女がいてくれたことは私にとってとてもラッキーだったですし、彼女にはとても感謝しています。


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