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「吉本報道」で欠如していた反社会的勢力の実態と救うべき弱者の存在

僕のNoteは基本的にスポーツの話題を扱うことが多いが、自分の考えを明確にしたり、考えを整理できる上質なテーマがあれば、スポーツに関わらず、書いていく。さっそく、今回は、吉本興業の一連の報道で感じたことをまとめてみたい。

一連の吉本報道の欠陥

僕は、これまで吉本興業の一連の報道について、誰に対しても一切の意見を言わずにきた。なぜなら、一連の報道と周囲の反応が感情論に流され、時が経つに連れて、その論点がめまぐるしく変わっていることに違和感を感じていたからだ。さらに、僕は、「今回の報道の弱者は誰なのだろうか」という大きな疑問を持っていた。「反社会的勢力の実態」と「社会的弱者の存在」を報じる姿勢が決定的に欠けているのではないかと感じていたのだ。

そのことを強烈に意識させてくれる番組が放送された。2019年7月27日に放送されたNHKスペシャル「半グレ 反社会勢力の実像」 だ。

吉本興業の件で世間が賑わっている、この絶妙のタイミングで、こういった反社会的勢力の実態を放送できること、NHK取材班の深い視点やその取材力に、僕は心の底から感服させられた。

NHKが描いた反社会勢力の実態

この番組では、暴力団対策法の施行によるヤクザの衰退と半グレと言われる反社会勢力の台頭、そして半グレと言われる勢力の実像が描かれている。

厄介なことに、半グレのメンバーの中には、自分が反社会的勢力であるという意識すらなく、関わってしまっている人もいるという。半グレの中枢組織は、お金を吸い上げる仕組みは作るが、自らが実行班になることはない。末端にはわずかな金を与えてリスクを負わせる。そのお金に群がる人の多くはお金に困った若者だ。結果、警察に捕まるのは末端の人間だけ。トカゲの尻尾切りのような組織の構造は、さらに精巧さを増しているようだ。

お金に吸い寄せられ、社会のモラルや個人の理性を簡単に捨て去る若者たち。その背景にあるのは、歪んだ教育か、貧困か、はたまた、彼らを利用しようとする社会があるからか。

彼らは、老人相手に振り込め詐欺を繰り返したり、飲み屋で高額請求してボッタクリをしたり、田舎から出てきた女性を風俗に売り飛ばして、お金を得ているという。

「俺たちは悪いことをしていない。判断するのは周り。もし悪いと判断されて捕まったら反省してまた・・・」

彼らは、悪びれることもなく、このようなことを平然と言う。法の網はくぐり抜けるが、社会のセーフティネットは利用するのだ。

救うべき社会的弱者はだれなのか?

報道の役割の一つに、「社会的弱者を救う」ということがある。

最近、報道番組やSNSを賑わせている吉本興業の一連の報道では、この報道で救うべき社会的弱者は描かれていなかったように思う。

「吉本興業に搾取されて生活に苦しむ若手芸人は社会的弱者ではないか」という意見もあるかもしれないが、僕は、今回の報道で救うべき対象だったとは思っていない。なぜなら、彼らも報酬を受け取っていたからだ。そして、もっと違和感を感じたのは、会見したベテラン芸人と、吉本興業の経営陣の対立というメディアやSNSが作り出したアジェンダ・セッティングだった。

今回の報道で、本当に救うべき社会的弱者は、反社会的勢力によって、どん底に叩き落とされた善良な一般人ではないのか。反社会勢力のお金がどのように作り出されたのか、その裏でそのような人が苦しんでいるのかが報じられなければ、生活に困窮しお金に吸い寄せられる若手芸人は、これからも続くだろう。

このNHKスペシャル「半グレ 反社会勢力の実像」 では、反社会勢力がどのようにお金を得ているのかが描かれ、その被害に苦しむ女性の悲痛なコメントが収録されている。

SNSが大きな力を持つようになった今の時代。誰かの発信に対して感情論に流されて同調するのではなく、我々自らが本質を見抜く力を身につけたいものだ。

ちなみに、NHKスペシャル「半グレ 反社会勢力の実像」は、2019年8月1日に再放送されるようです。


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瀬川 泰祐

ライター。東洋経済オンラインやITメディアビジネスオンライン、OCEANS、キングギアなどで執筆中。スポーツ・アスリート交流会も主催する。最近の取材テーマは「Beyond Sports」。スポーツと社会の接点からスポーツの価値を探っている。

取材者の心絵(ココロエ)

東洋経済オンラインやOCEANS、AlpenGroupMagazine、キングギア などの媒体に寄稿しているスポーツライター、瀬川泰祐が取材・執筆活動の中で、日々感じている取材からの学びを書き留める。
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