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なぜ妥協しないの? ―東京オリンピックの怪

生きるとは妥協すること

僕はスポーツ愛好家ではない。
『エースをねらえ!』と『黒子のバスケ』は好きだけど。

もともと僕は東京でオリンピックを開催することに反対だった。
静かな暮らしが妨げられると思ったから。

でも仕方がない。
東京オリンピックの開催が決まった。
しょうがないから、いつものように妥協する。
自分が思う通りに世の中は進まない。

若かったとき、失恋を経験し、理解した。
世の中、自分ひとりで生きているわけではない。なにごとも諦めが肝心だ。


コロナとの戦いも、重要なのは、どの程度、妥協するかだ。
外出を全くしないことは不可能だが、回数を減らすことなら可能だ。
馴染みのバーに行くのを我慢し、アマゾンでパスティスを注文し、南仏のラベンダー畑を夢見ながら自宅で飲む。

いつもどこかで妥協する。
そもそも生きることが妥協だとも言える。
こちらで負けても、あちらで勝てば、「ま、いいか」と思う。

他人との妥協は生産的な営みでもある。
赤と白からピンクを生みだすのだから。


政府は妥協した

日本政府は二つの意見(東京オリンピックを盛大におこないたいという意見と、コロナ対策のためにオリンピックを中止したいという意見)のあいだをとって、無観客開催を決めた。
政府は妥協したのだ。
金儲けのためには、無観客開催はかなりなマイナスであったろうに。

また金儲けということで言えば、
電通にとっても、今回のオリンピックはそれなりに痛かったはずだ。
闇でうごめき甘い利潤を吸うその所業が、明るみに引き出されたのだから。

そういうわけで、僕を含めて、多くのひとが、多かれ少なかれ、痛みを感じ、我慢し、妥協している。


リベラルさんの頑なさ

だからこそ、オリンピック中止派の、特にリベラルさんの、頑なさが異常に見える。
無観客開催を落としどころとみなして、妥協すればいいのに。
なぜそれができないのかしら?

コロナという、ひとの命にかかわる問題だから?
けれどリスク・ゼロなんてありえない。
犬も歩けば棒に当たる。ひとも常に交通事故にあう可能性はある。
みんな、未来は不安だよ。試合に挑む前の選手のようにね。
感染症と、適宜に工夫して試行錯誤してうまく付き合っていく、そういう現実的なスタンスが求められているのでは?

7月23日、都内では、中止派の方々が開会式にあわせて「オリンピックよりも感染症対策を優先せよ」とデモをおこなった。
しかしまさにそのデモが、その密が、コロナを蔓延させるのでは?
オリンピックも、感染症対策も、どちらもほどほどに成功させたいという方向性で、自分に何ができるのか、考えようよ。

「日本国民の税金を使っているのだから、日本国民のためにオリンピックを中止せよ」という主張も、かなり自己本位だ。
世界に、戦争や貧困で悩む国々は多い。
そういう過酷な状況にいるひとたちに、オリンピックをすることで、僅かでも、一抹の夢を見せてあげることができれば、「ま、いいか」と僕は思う。

「子供のピアノの発表会は禁止されているのに、ずるい」とおっしゃるならば、発表会を無観客で開催してネットで流せばよいのでは?
工夫すれば、なにごとも、たとえ理想的ではなくとも、ある程度の現実的な解決は可能なはず。

「オリンピックを開催すれば、オリンピックに便乗して、国民はソーシャル・ディスタンスを遵守しなくなって、お祭り騒ぎが頻発するに違いない」というリベラルさんの主張も、如何なものか?
そりゃあ、僕だって、国民のみなさまの良識を全面的に信頼しきっているわけではないけれど、
しかしリベラルさんがそれほどまでに国民のみなさまに不信感を抱き、お祭り騒ぎを危惧なさるのならば、
リベラルさんみずからが、国民の民度向上のための啓発と教育につとめればよろしいのでは?
リベラル陣営には多くの教育者がいらっしゃるのだから。
(ちなみにオリンピック開催後、少なくとも僕の町ではお祭り騒ぎは勃発していません。)

たしかにコロナのせいでひどい目にあっている方々は沢山いる。
日本だって死者は既に一万人を超えた。
だから開会式では、彼らを忘れてはいないというメッセージがちゃんと流された。
道徳的に間違えてはいない。


こわいよお

リベラルさんの頑なさがわからない。
なぜそこまで?

もしもリベラルさんが、オリンピックを契機に高揚するナショナリズムの喧騒が嫌だというのなら、テレビのスイッチを切ればよいのに。
そして夏の夕べを楽しもう。
打ち水でもしてさ。涼やかな風が髪をくすぐるよ。
暗くなったら、線香花火に興じたりして(できれば浴衣美人と一緒に)。


それにしても、リベラルさんの、自分の意見をなにがなんでも100%押し通し、自分に反対する意見を徹底的に攻撃して排除しつくさなければ気がすまないという暴力的性格は、いったいどこから来ているのかしら?

リベラルさんの怪しい心の闇に、おっかなびっくり興味を持ってしまいます。

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