もう一度 《詩》
「もう一度」
不安定で不器用な
感情の塊が骨と肉を纏い
目に見える形を作り出している
その形を持つものから発する
熱と息づかいを
僕は首筋に感じとっていた
抱いてくれ…
そう言い出したのは
僕の方でも彼女からでも無かった
ただ必要だったから
僕等は抱きしめ合って
長い夜を超えた
世の中の
常識や概念が作る心理を消し去り
ゆったりと川の流れに身を任せた
もう一度
そう囁く彼女の震える声
それは絶望を連れ去る
孤独を連れた風の音の様に聞こえた
やがて朝日が僕等を照らし出す
それぞれの道を
それぞれの歩幅で歩み始める
僕の耳には彼女の
もう一度…
その震える声がこだましていた
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