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日本初公開となる『Billie』、サルサ映画の最高傑作『Our Latin Thing』も上映決定!/「Peter Barakan's Music Film Festival 」7月開催@東京・有楽町

2021 年 7月 2日(金)~7 月 15 日(木)、東京・角川シネマ有楽町で音楽映画祭「Peter Barakan’s Music Film Festival」開催されます。音楽をこよなく愛するピーター・バラカンさんが何年も前からあたため、ついに実現させた映画祭です。音楽を題材にドキュメンタリー、コンサート映画、音楽シーンを描いた劇映画などさまざまなジャンル、時代を網羅した厳選のライン・アップは全14作品。注目の作品から、ビリー・ホリデイのドキュメンタリー『Billie』(ビリー:日本初公開)と藤田正さんが音楽ドキュメンタリーの最高峰と推す『Our Latin Thing』(アワ・ラテン・シング)を紹介します!

映画祭

――藤田さん、あの、待望のドキュメンタリー『Billie』が公開されるんですって!? 

藤田 そうみたいだね! 『Billie』は映画祭のキモとなる作品みたいで、期間中ほとんど毎日、上映される予定です(7月4日と10日を除く)。何といっても、日本初公開。それだけ、監修&作品選定のピーターさんも思い入れのある作品なんだろうね。

――私たちとしても、書籍『歌と映像で読み解くブラック・ライヴズ・マター』の表紙にビリー・ホリデイの写真をもってきたくらいですから、なんとしても『Billie』を日本で上映してほしかった。本当に感激です~!!

藤田 ビリー・ホリデイは1915年に生まれ、「レイディ・デイ(Lady Day)」という愛称で知られる希代のシンガー。映画『Billie』については、過去のnoteで少し触れたけど、これはある女性ジャーナリストが1960年代からおよそ10年間かけて録音した未発表のテープをベースにしています。彼女は、44年というビリーの短く、波乱に飛んだ人生を多くの関係者に取材し、200時間以上に及ぶインタビューを行っていたんだけど、亡くなってしまったんだ。インタビューを受けた人物にはトニー・ベネットやカウント・ベイシー、チャールズ・ミンガスといったアーティスト、ビリーのいとこや友⼈、ポン引き、彼⼥を逮捕した⿇薬捜査官、刑務所の職員がいるそうだよ。

さらに、現代の技術を駆使してモノクロ映像と写真を着色し、カラーで復元。「レイディ・デイ」を蘇らせた。最近、長く眠っていた素材があらためて世に出ることが多いんだけど、これも、そのひとつですね。

――代表作「奇妙な果実(Strange Fruit)」をうたうシーンも含め、これまで見たことがない必見のライヴ映像が収められているとか。

藤田 アメリカ南部における、白人の黒人に対するリンチを告発した「奇妙な果実」は、ユダヤ人の教師、ルイス・アレンが作詞しました。歌は、黒人女性のビリー・ホリデイがうたったことで、命が吹き込まれたといって過言じゃない。『歌と映像で読み解く……』のなかでも指摘してるけど、ビリーはこの歌をいわゆるジャズらしくはうたってはいません。こうした点に意識して観てもらえるとより、興味深いんじゃないかな。

――さて、もう1本の映画は、『Our Latin Thing』です。先日、藤田さんがゲスト出演したピーターさんのラジオ番組「ウィークエンド・サンシャイン」(NHK-FM)でも話題にされてました。ジョニー・パチェーコを特集した番組の反響もすごかったようですね。

藤田 いやあ、土曜日の朝、全国放送で100分もサルサを流してもらえたなんて。リスナーのみなさんにも楽しんでいただけたようで、うれしかったですね~。

『Our Latin Thing』は、1971年8月26日、ニューヨークのクラブ、チーター(The Cheetah)で行われたファニア・オールスターズの伝説的ステージをおさめた、音楽ドキュメンタリーです。ジョニー・パチェーコはそのバンド・マスターであり、ファニア・レコードの共同経営者としても大活躍し、「サルサ」という音楽ジャンルを世界的にしてくれた人だった。

――私も知ってるピアニスト、ラリー・ハーロウさんも登場してる(若い!)。 藤田さんは、映像の中でアメリカ国旗のTシャツを着て舞台に立っているトランぺッター、ラリー・スペンサーさんの家に居候をしていたんですってね。

藤田 1977年、合衆国建国200年の翌年のことです。ぼくは現場に行って、本物に触れないと気が済まない性格だからさ。お金がなくて泊まるところもなく困っていたところをラリーの一家が助けてくれたんですよ。迷惑かけたと思うよ。だってニューヨーク市が壊滅的な経済破綻をしていた時期で、ラリーたちプエルトリコ島から移民してきたカリブ海系の人たちは、大変に苦しい生活を強いられていたんだから。

それで、ラリー・スペンサーの家はサウス・ブロンクスだけど、ドキュメンタリーの中心となっているのは南へ下がったマンハッタン。マンハッタンのロウワー・イーストサイドで開かれた路上ライヴなんかも映像に入っています。大人も子どもも通りに集まって、ラテンのリズムに合わせて踊り出して。人々のファッションも必見じゃないかな。屋台で売られてるカリブ系の料理とか、これは非合法じゃないかと思うんだけどバクチ場(闘鶏)の現場とかも。まんま現地! 大衆音楽が生まれるところ、というのがリアルに記録されている。

ただし完全なドキュメントでもなくて、けっこうドラマチックな演出もなされている。つまりマンハッタンにコダマするコンガ・プレイヤーたち、といった設定とかね。ファニアの代表的スター、レイ・バレットが路上のかき氷売りだったり、とか。そいうのを発見するだけでも楽しい。

Abran Paso オルケスタ・ハーロウ(vo. イスマエル・ミランダ)

――映像を見るだけで、ウズウズしますよね!

藤田 映画を観て、踊り出さない人はいないんじゃないかな? ここにはニューヨーク・ラテンの最高の瞬間が記録されている。早口の「スパングリッシュ」が入り乱れるけど、それも含めて体感してもらえるといいですね。

『Our Latin Thing』は、7月10日(土)17:50上映開始。上映後には、藤田正さん、ピーター・バラカンさんのトークイベントがあります。ラジオ「ウィークエンド・サンシャイン」の再現なるやも!?

「Peter Barakanʼs Music Film Festival」
7⽉2⽇(金)~7⽉15⽇(木) 角川シネマ有楽町にて開催
上映作品はほかに、「水俣」に関する世界的な写真で知られるフォトグラファーで、ジャズにも造詣が深かったユージン・スミスによる『ジャズ・ロフト』(日本初公開)、27歳の若さでなくなったエイミー・ワインハウスの物語『AMY』などがある。上映スケジュールやチケット購入方法は公式サイト、ツイッターをチェックしてください。
公式サイト:https://pbmff.jp
公式 ツイッター:@pb_mff

ビリー・ホリデイについての過去記事はこちら ↓


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