- 運営しているクリエイター
記事一覧
20230928 小説練習
「そうです、私は、軍事技術というものは、大抵その時代の最新の科学を反映しているものだから、軍事趣味は歴史と科学に明るくなれるから好きになりなさい、と言ったのです。何せその子は、1950年になったって日本ではちょんまげの侍が刀差して歩っていたって思っていたんですからね。そうしたらその子の母親ときたら、そういうのはやめてくださいっていうんですよ。「そういうの」というのは、その奥さんは「そういうの」とし
もっとみる20230924 小説練習
彼がうつ伏せの体を揺すってストレッチすると、安物のベッドがギシギシいった。メガネを取り、両手を使って額から顎までじっくり時間をかけて拭う。顔面の皮膚が引っ張られて頭部の筋肉が伸び、澱んでいた血がじんわりと巡っていくが、疲れは取れない。スマホでニュース記事やそれについたコメントを見ていると、時間がどんどん溶けていく。それによるリターンは、同僚とのシニカルな世間話のネタだけ。彼には、液晶の向こうの死
もっとみる20230914 描写練習
スカーレットのカラーリングのネイルが目立つ白い手が、吊り革を握りしめている。髪は茶色に染めたナチュラルなミディアムのボブ。胸の膨らみが目立つノースリーブのベージュのニットに、ダークカラーで折り目のはっきりしたプリーツスカート……都市部ならどこでも見かけるトレンディなファッション。休日昼間の、乗り降りで人を避けるのに気を遣うくらいの混み具合の地下鉄の中で、彼女はスマホを見るでもなくぼうっと揺れてい
もっとみる20230908 習作的文章
エアコンに当たり続けるのはよくない。なにぶん私の安アパートは壁が薄いから、熱気と日光でホットプレートのようになった外壁の熱が内装まで伝わって、赤外線になって畳の万年床の上の私を焼く。そのくせ室内の空気はエアコンで冷たく保たれているから、体表面ばかり温まって、体の内部は冷えてしまう。これで自律神経がいかれないはずはなかった。
「もう仕事回せませんよ」
暑い夏だった。外へ出るのが命取りになるような
「人に興味を持て」20230905
「人に興味を持て」
彼は常にそう言われてきた。父親から、教師から、会社の上司から、果ては友人からも……。それを言われるたび、彼は頭が停止して、困惑してしまう。
(人になんか興味ない)
「人に興味を持てないのは悪いことだ」
そう言われた方がなんぼかマシだったかもしれない。どうしてそう言わないのか。興味を持て、興味を持て、と、要求するばかりで誰一人、どうすればそれが可能なのか、教えてくれる人はいな
彼氏と爆弾、わずかに悪魔
百社からお祈りメール受けて無職の彼氏。
夜職の私は彼と平日ぼーっとニュース見るのが好きだった。
首相に爆弾投げつけたバカのニュース見てる時に、彼氏がポテチ食いながら言った。
「聖書に載ってるんだけどさ」
「あんた、前もそう言ったけど載ってなかったよ」
「聖書に載ってるんだけどさ」
私は彼氏の方を振り返りもせず、ニュース映像を見ていた。
数人がかりで取り押さえられるバカを見な