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『スマップが聴けない』

スマートスピーカーに年に数回尋ねることがある。
「スマップを聴かせて」
その返答は、すげなく受けながされて、スマップの楽曲がながれてくることなはい。サブスクでは聴けないようだ。CDを買えばいいのだろう。けれど、もう、プレイヤーは処分して所有していない。
スマップと同世代の私はスマップのファンではない。けれど、同世代だけあって、おそらくだが、ともだちのともだちのともだちのともだちのと繰り返してゆけば、スマップの1人くらいにには辿り着けそうな気もする。
そのくらい(どのくらいだ)の親近感がある。

町にはいつもスマップの曲がながれていた。だから、ときどきスマートスピーカーに尋ねている。「スマップを聴かせて」と。
私の細胞には好むと好まざるとにかかわらず、スマップの曲が刷り込まれている。私だけではないだろう。町の風景に、ビルに、歩道タイルに、外灯に、スマップの曲が刷り込まれている。
街路樹だって、ビッグモーターの店舗前を除けば、スマップの曲を聴きながら育って来たはずだ。

これは、ファンであるとかないとかの問題ではない。プロのアイドルという文化の話かも知れない、日本の町にいつもながれていたスマップの曲が恋しいという、中年男の告白であるかも知れない。「プツン」と、途切れた。スマップのプロアイドルとしての矜持が滲む歌を聴きたい。出来れば、手軽に。私は都合のいい話をしているのかも知れない。
『夜空ノムコウ』『Fly』そして、私の大好きな『joy!!』。あれ、ひょとして私はスマップのファンなのではないかと、錯覚するほど口ずさめることに面食らっているが。

日本には照れ屋がたくさんいる。
だから、プロのアイドルしか歌えない曲があるのだ。プロのアイドルが踊って歌はないとサマにならない曲と詩があるのだ。
町にしぜんに溶け込むように、町ゆく者の靴音に合わせるように、銀杏並木に寄り添うような。

そんなスマップが聴けない。


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