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【特別編】あなたの身近なSDGs〜アソビシステムの皆さんへ〜

昨年の8月18日(火)、ORIGINAL Inc. のシニアコンサルタント 高橋政司がアソビシステム株式会社の社員向けにSDGsセミナーを行った。

最近、「SDGs」や「サステナブル」という言葉をよく耳にする。しかし、その定義や意義について語れるかというと難しいと感じる人も多いのではないだろうか。本セミナーはSDGsの基本についての理解を促し、自分ごととして捉えることを目的としている。

受講者の方々からは以下のような前向きなコメント・感想をいただいた。

多くの項目がある中、自分にとても身近なファッションやメイク、食品を例に上げてもらえると想像しやすく知識も吸収しやすかったです。
説明の速度も資料もわかりやすく、とてもお勉強になりました!


決して押し付けるわけではなく、みんなが聞きやすいわかりやすい話し方で、無理せずやっていこうという姿勢がとても共感できました。

洋服の破棄など、自分の身近な分野での問題点を詳しく説明してもらえた事で自分が具体的になにが出来るのか考えられるようになった。

とても興味を持てたのと、このような機会を他にどこで聞けるのか、講師の方のお話が他でも聞くことができるか気になりました。

本記事はここで高橋が話した内容をまとめたものとなる。

SDGsとは何か

Sは「Sustainable」(持続可能な)、 Dは「Development」(開発)、Gは「Goal」(目的・目標)と、これらの頭文字が由来となっている。SDGsには1から17までの目標があり、1つではないため、最後に複数形の「s」がついているのだ。

本セミナーではこれら全ての目標を取り上げることはできなかったため、一部は割愛となってしまったが、ネットを検索すれば多くの関連情報が見つかるので、全項目について一通り理解しておくことをお勧めする。

今、SDGsが世界的に注目されているその理由は20年近く前にまで遡る。その頃、SDGsの前身となるMDGs(Millennium Development Goals)というコンセプトがあったのだ。ここで大本となるのが「世界中で起こっているさまざまな問題の原因が先進国にあり、それが発展途上国に悪影響を及ぼしている。なので、先進国が中心となってそれらの問題解決に取り組まねばならい」という考え方だった。

この考え方が国際社会にうまく受け入れなかった理由の1つとして、先進国が開発途上国を支援するという、いわゆる、ODA(政府開発援助)の一環として受け止められていたこととが挙げられる。誰かが誰かに施すということでは、地球規模の問題の真の解決にはならないのだ。

2015年になると、これがSDGsとしてアップデートされる。「2030年までに17の目標を達成しよう」という仕立て直しが行われたのだ。そしてこれらの目標の中で最も大切なのが、「世界中の誰も置き去りにしない」ということだ。

そして2017年、スイスで行われたダボス会議(世界経済フォーラム)で、SDGsに関連した事業を行うことで12兆ドルの経済効果と、3億人を超える人々に利益がもたらされることが発表されたのだ。このような具体的な経済効果が示されたことで、多くの民間企業がSDGsへの取り組みを強化したことで世界的な動きとなり、今に至る。

「食」とSDGs

世界の9人に1人、人口でいうと8億2,160万人。これは世界における飢餓で苦しんでいる人の数だ。その反面、日本での年間の食品廃棄は約1,561万トン(平成28年度推計)。これはピンとこないほどの大きな数字だが、トラック(10トン)が160万台近くあると考えればいかに大量であるか、イメージがつくのではないだろうか。

その内訳は以下の通りだ。

食品関連事業者による廃棄=約772万トン
(その内、可食部分と考えられる量=約352万トン

一般家庭による廃棄=約798万トン
(その内、可食部分と考えられる量=約291万トン

「食品ロス」とは、売れ残りや食べ残し、期限切れ食品など、本来は食べることが可能な食品が廃棄されることをいう。つまり、世界の9人に1人が飢餓に苦しんでいるのにも関わらず、日本のような先進国1国だけでも年間、約643万トンもの食品ロスがあることになる。

そんな中で、興味深い事例が挙がった。日本には食品ロスを軽減するスーパーフードがあるのだという。それはずばり、ラーメン。ラーメンは食べ残し、ゴミが出ない料理として評価されているのだ。通常は可食部分とみなされていない肉や魚の骨の部分も、ラーメンではスープの具材として使用できる。

世界では今、ラーメンが大ブームで日本のラーメンの味に匹敵するほどクオリティが高くなっている。そして、これはラーメンのスーパーフードぶりが評価される要因でもある。

しかし毎日ラーメンを食べるわけにもいかない。私たち一人一人が生活レベルで実践できることは他にもある。まずは買い物をする時、自分が何をどのくらいの量で食べたいのか思い描くのが大切なのだという。そして、自分にとって必要最低限を買うのだ。

日本人は本来この能力に長けているという。日本とアメリカのスーパーマーケットを比較すると、日本人は食べたいものをその日のうちに買い、食べるので、ほぼ毎日スーパーにいく。スーパーマーケットも毎日、新鮮でネタの違うものを店先に並べないと売れないという現状がある。

対してアメリカでは、1、2週間分の食料を買い置きするので、常に同じ商品が同じ場所にあるのがいいスーパーマーケット、とみなされている。

次に意識すべきなのが、期限表示だ。スーパーは売れ残りが無いように、商品を陳列しているので、前の方が古く、後ろの方が新しくなる。これは日常的にスーパーで買い物をしている人にとっては常識であり、牛乳などを買う時は、大抵奥の方に手を伸ばしがちではないだろうか。

しかしフードロスを無くすのであれば、その日に食べる場合、賞味期限の近いものを買った方がいい。他にも、食品をできる限り長く保存したり、食べ切れる量で調理するなど、日々の小さな心掛けが大切なのだという。

そして、議題は食料自給率にも及ぶ。ここではショッキングな結果が提示された。食料自給率ランキング上位にいるカナダ(自給率255%)やオーストラリア(自給率233%)は、自国で生産された食料で事足りており、余った分を自国の生産量では追いつかない国に売っているのだ。その一方で、日本の自給率は38%。つまり60%近くの食料を海外から調達しているのだ。

そして依存度が高いほど、何かの拍子に海外からの食べ物の供給がストップした場合、困ったことになってしまう

さらに海外からの輸入が多いということは、フードマイレージも必然的に多くなる。フードマイレージは食べ物の量に、食べ物を運んだ距離をかけることで導き出され、その数値が高ければ高いほど排出されるCO2も高くなる。そして、日本のフードマイレージはアメリカの約3倍という、先進国の中でも圧倒的に高い数値を出してしまっているのだ。

「ファッション」 と SDGs 〜衣料と化粧品編〜

冒頭から再びショッキングな数字が提示される。世界で生産された衣服の約60%が廃棄されているのだ。これはつまり廃棄量が消費量を上回っていることになる。そして廃棄された衣服はその大部分が埋め立て(57%)か焼却(25%)によって処分されており、リサイクルとリユースは18%でしかない。

日本での1年間で捨てられる衣料は100万トン。そのうちリユースは11%。80%以上が焼却処分となり、23万9千トンものCO2を排出しているのだ。

これらの危機的な状況を受け、今世界中のアパレル関係者がなんとかしてゴミを捨てないで済み、再利用できるようなファッションを生み出せないものかと苦心している。

例えばアディダスは100%リサイクル可能なランニングシューズを発表し、今年の春夏に発売が予定されている。

化粧品も同様にSDGsへの配慮が求められている。例えば、マルティナ・ゲブハルトという商品は、100%自然な素材を使い、ドイツのバイエルンの修道院で作られている。石油系界面活性剤やパラベン、アルコール、香料、着色料、鉱物油は全て不使用。それによって、人体のみならず、洗ったあと流れた水も環境に優しいのだ。

また新たな潮流としてヴィーガンコスメについても取り上げた。これは徹底的にナチュラルで、動物実験をしないエコフレンドリーな素材を使ったコスメだ。

例えば、ZAO(ザオ)というフランスのブランドは100%ヴィーガンだ。それはつまり動物由来の素材や、動物への虐待が行われていないということ。そのケースは竹でできている。竹に含まれる有機成分が腐敗を防ぎ、ケース自体も再利用が可能なのだ。

コスメを選ぶ時も、これらの製造過程や原料といった背景についてよく知り、SDGsを順守しているのかどうかが大きな判断基準となる

最後に

環境問題を解決する上で一番やってはいけないのが「我慢」なのだという。例えば、夏場で酷暑にも関わらず、省エネを意識しすぎて冷房をつけなかったりすると、体にも大きな悪影響を及ぼす。「環境改善に貢献している」という精神的な満足感は得られるかもしれないが、「我慢」するということは、現状を維持しているに過ぎない。

大切なのは我慢をすることなく環境改善に取り組めるような、新たな方法をみんなで考えていくことだ。ヴィーガンコスメを使用したり、フードマイレージが低い食べ物を選ぶなど、新しい技術を使用し、人々の中で「日常レベルで環境にいいことをしていこう」という意識が芽生えれば、不可能なことではない

最後に高橋はSDGsを考える上で、ジョン・レノンの楽曲『イマジン』から大きなインスピレーションを得たことを明かした。「自分一人で見る夢は夢でしかないが、世界の人々が一緒にその夢を見て、実現しようとしていけば、世界はきっと一つになることができる」というのが高橋の解釈であり、それこそがSDGsを実現していくために必要なことなのだ。

高橋政司
ORIGINAL Inc. 執行役員 シニアコンサルタント1989年 外務省入省。日本大使館、総領事館において、主に日本を海外に紹介する文化・広報、日系企業支援などを担当。2009年以降、UNESCO業務を担当。「世界文化遺産」「世界自然遺産」「世界無形文化遺産」など様々な遺産の登録に携わる。2018年10月より現職。2019年、観光庁最先端観光コンテンツ インキュベーター事業専属有識者。2020年、宗像環境国際会議 実行委員会アドバイザー、伊勢TOKOWAKA協議会委員。


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