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"歴史" 系 note まとめ

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2022年1月の記事一覧

つながる沖縄近現代史 書評

※これは、2022年1月15日の沖縄タイムス 読書17面に掲載された書評に、加筆したものです。 ーーーーーーーーーー  私は日本史がさっぱり分からなかった人間である。幕府と朝廷の違いもわからず、ひたすら年号を暗記するだけで逃げてきた。キーワードは覚えていたけれど、それが実際どういうことで、何が起こっていたのか、1ミリも理解なんてしていなかった。それが、2017年には大河ドラマにハマりまくり、ゆかりの地をめぐり一週間の旅に出るまでになった。  私にとってのコペルニクス的展

2022年ウクライナ情勢をより深く理解するための歴史文化背景雑学

当方はウクライナやスラブ研究者では無く、米国大学にてホスピタリテイ・観光経営分野で研究系博士教員をしている日本人米国永住者です。ウクライナには縁があって旧ソ連崩壊後数年であった1995年から往訪しており、渡航回数は30回程度です。過去5年は年に数回のペースで渡航していました。 普段ウクライナの名前が出るのはチェルノブイリ原発事故に関連した話程度で、ここ数か月のロシア軍国境集結と侵攻のニュースで突然によく名前を聞くようになった人が多いのではと思います。 ウクライナとロシアの関

【音楽史の目次】クラシック史+ポピュラー史の記事一覧

僕のnoteでは、クラシック音楽史とポピュラー音楽史を並行して書いてみる試みをやってきました。こちらのマガジンにもまとめていますが、ここにも記事一覧・目次としてまとめてみましたので、お好きな時代の記事に飛んでみてください。 (序章) (音楽史) また、流れとアーティスト名をギュっとまとめた図解年表も作成し、最新版をPDFとして以下の記事に公開してますので併せて是非ダウンロードしてみてください。

2022年共通テスト「世界史B」 の全問解説

この全問解説の文章は、 1 共通テストの問題を素材に重要事項を整理したい受験生 2 世界史が苦手で、勉強方法に悩んでいる高校生 3 世界史を学びたいと思っている社会人 に読んでほしいと思いながら書きました。 今年の共通テスト「世界史B」の問題点については、すでにnoteに書いて多くの人に読んで頂きました。また、共通テストの形式にも問題があることは、世間に認識されつつあります。 世界史に関して言えば、たしかに設問の多くが良問ぞろいであることは否定しようのない事実です。そして

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2022年共通テスト「世界史B」の問題で想うこと

今回の共通テストで、特に違和感を持ったのが第4問の問3だ。 共通テストの世界史の問題に、多くの人は関心がないかもしれない。しかし、共通テストやこれからの歴史教育が大きな問題を抱えていることを、少しでも多くの人に知ってほしいと思い、第4問のAの問題解説を公開する。 第4問 「歴史評価の多様性」 問1 問題番号23 答えは② まずは問題文を読んでほしい。とても作り込まれた問題だ。 まるで現代文のようだが、資料の下線部aの直前にある1文をもう一度読んでほしい。「この10年

【漫画化企画始動!?】邪馬台国、三国志の四国目「燕」、その末裔の妄想・簡易と年表(仮)まとめ

(サムネは #コーエー 様の『三國志14 with Powerup kit』の #公孫淵(公孫文懿) です。『with PK』で追加された#武将 固有の必殺技で、意味は造語で、「燕の二枚舌」です。歴史書の #三国志 では #遼東 (現在の遼寧省)で「燕」という国を名乗り、 魏と呉の双方に二枚舌外交をして、蜀漢の天才軍師・諸葛亮( #孔明) のライバル、 司馬仲達( #司馬懿 ) に滅ぼされました。) まさかの珍説、漫画化の企画、始動!? 自己紹介#東京大学 で、#カイコ

歴史の扉④ 石けんの世界史

 コロナ禍により、以前にも増して奨励されるようになった手洗い。  今回は、それに欠かせない「石けん」の世界史をふりかえってみることにしましょう。 石鹸の製法の発展  石鹸にあたるものは、天然の素材によって、古来世界各地でつくられていました。地中海沿岸では、中世の頃、海藻の灰とオリーブ油を原料とした石鹸が製造されていましたが、17世紀にフランスの科学者ルブランが、化学的に炭酸ソーダ(アルカリ剤)を合成する方法を開発すると、石鹸の大量生産への道が開けます。  1861年にはベル

歴史の扉③ タピオカミルクティーの世界史

 コロナ禍の影響から、一時に比べ下火となったタピオカミルクティーの流行(ちなみに私は1點點が好き)。早くも懐かしむつもりで、世界史とのつながりについて、話題の『中国料理の世界史—美食のナショナリズムをこえて』(岩間一弘著、慶應義塾大学出版会、2021年)をもとに簡単に紹介します。 ルーツは台湾の屋台   1980年代頃、台湾の屋台では、ポリ袋入りの紅茶が売られていました。東南アジアでよく売っているやつですね。  これにかき氷のトッピング用に大粒のタピオカが入れられるように

歴史の扉② 吹奏楽の世界史

 ほとんどの学校に設けられている吹奏楽部。その系譜を、世界史にクロスオーバーさせてみよう。 *** オスマン帝国の軍楽隊  吹奏楽の起源は、一般にオスマン帝国の軍楽隊(メフテル)にもとめられる。兵隊とともに移動し、攻撃のタイミングを知らせて味方を鼓舞したり、相手を威嚇したりするために用いられた。  演奏に用いられた楽器は、古来北アフリカから西南アジアにかけて普及していた管楽器や打楽器だ。オスマン帝国の軍楽隊も、それ以前からあった軍楽隊の様式を完成させたものとみたほうがよ

歴史の扉① ストリートダンスの世界史

 現在の高校生は、ダンスが体育の授業のなかに当たり前に組み込まれている世代である。  しかし、ストリート系のダンス(「ヒップホップ」)や「B系」と呼ばれるような文化のルーツが、アメリカ合衆国のアフリカ系アメリカ人たちにあるという事実について知らない高校生のほうが、当然のことながら多いだろう。  次のような話題を用意し、紹介してもよいかもしれない。 ***  1950〜1960年代には、アフリカ系アメリカ人(黒人)が、白人に対して公民権(市民権)を求める運動が盛り上がった。

バズって感じたこと。音楽好きの人々は「音楽史」に何を求める?

昨年末、「クラシック音楽史とポピュラー音楽史を繋げてみた」というツイートを図解年表付きで投稿したところ、ありがたいことに1万RT/4万いいねを超えるバズをいただきました。 その後、図表は何度か改訂いたしまして、現在、下記の記事で最新版PDFを更新・配布しています。 このツイートが広まったおかげで様々なコメントや引用RTも頂き、興味深く拝見いたしました。今回は、そのような様々な反応から感じたことや気づきを綴りつつ、改めて僕がこのような図を作った意図・問題意識と、それが達成で

藩主の末裔が営む屋敷のお正月【準備編】

柳川は青空が広がり、冬の柔らかな日差しが差し込む天気の良いお正月を迎えることができました。 御花では12月初めごろからコツコツとお正月の準備が始まります。 お正月は「年神様(としがみさま)」と言われる豊作や健康をもたらす神様をお迎えする大切な節目。そのため行事や様々な習わしが生まれました。 旧大名家である立花家が営む御花では、どのような準備を行うのか紹介したいと思います! しめ縄づくり しめ縄は、神様が降りた神聖な場所を示すもの。不浄な者や悪霊は入れないとされていて、

#30 音楽史㉕【2010年代後半】トラップの大流行とポストEDM

クラシック音楽史から並列で繋いでポピュラー音楽史を綴る試みです。このシリーズはこちらにまとめてありますのでよければフォローしていただいたうえ、ぜひ古代やクラシック音楽史の段階から続けてお読みください。 本当は「多様化」とか「細分化」みたいなタイトルをつけたかったんですが、何個か前の記事でその態度を自分でむちゃくちゃ批判してしまっていてブーメランになってしまうので、避けました。笑 そこで、この時代の各ジャンルのサウンドの傾向をひとまず自分なりに「トラップ」と「ポストEDM」

ベトナム歴史秘話:なぜ虎と象は死闘したのか?動物同士のコロシアム「虎圈」

ベトナム中部にある古都フエには、かつて虎と象の動物同士での死闘が行われていた遺跡、まるでローマにあるような円形闘技場が今も残っています。なぜこのような場所が約200年前に作られたのか?そして、そこではどんなことが行われていたのか? 2022年は寅年。そこで新年最初の記事は、トラに関係するベトナムの史跡「虎圈」について調べて書いてみました。 1. 世界遺産「フエ建造物群」にある虎圈虎圈(こけん)、ベトナムではHổ Quyền、英語ではTiger Arenaと呼ばれる場所です