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"歴史" 系 note まとめ

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2023年3月の記事一覧

『日本デジタルゲーム産業史』著者からみた『ゲームの歴史』

芝浦工業大学の小山友介と申します。 noteに投稿するのは初ですので、何か変だったら教えてください。 無駄に長い前置きこのたび、『ゲームの歴史』に関するアレヤコレヤの中で、「すでに存在するマトモなゲームの歴史書はある」として何人もの方に拙著『日本デジタルゲーム産業史』を挙げていただき、本当に感謝しております。研究者として身が引き締まる思いです。 ぶっちゃけると、『ゲームの歴史』、出た当初は興味なかったんですよ。発売から数日して色々とネット内で騒がれだして、FB内で「どうで

大衆社会から、新・階級社会へ――「マイナーノートで」#24〔百貨店の終焉〕上野千鶴子

各方面で活躍する社会学者の上野千鶴子さんが、「考えたこと」だけでなく、「感じたこと」も綴る連載随筆。精緻な言葉選びと襞のある心象が織りなす文章は、あなたの内面を静かに波立たせます。 ※#01から読む方はこちらです。 百貨店の終焉 今年の1月31日にふたつの百貨店が閉店した。ひとつは東京渋谷のシンボルだった東急百貨店渋谷・本店、もうひとつは北海道は帯広にある道内資本最後の百貨店、藤丸が創業122年の歴史を閉じた。百貨店の研究をしてきたわたしには感慨がある。  百貨店の凋落は

撰銭令について(2023年度共通テスト本試験・日本史B)

 2023年度の共通テスト・本試験:日本史Bの大問3の問3(小問番号14),撰銭令について,いまだに正解が2つあるのではないかと言う人がいる。きわめて正答率が低い問題だったことは事実だが,高校日本史の標準的な知識だけをベースに史料を読んで解いたとしても解釈がわかれるタイプの問題ではない。  撰銭令については,高校教科書では次のような説明がなされている。  次に,掲載されている史料を見てみよう。  前提として,自分勝手に撰銭を行うな,と宣言したうえで,使用禁止の銭貨として

歴史総合入門(8)2つ目のしくみ : アメリカとソ連と日本の台頭

■アメリカとソ連、そして日本  「イギリスとフランスよ。委任統治領とかいって、やってることは植民地と大差ないじゃないか」「これじゃあ、あいかわらずだよ」とクレームをつけたのが、当時としては新興国であったアメリカ合衆国とソ連です。  2か国は、言ってみれば20世紀の2大役者。  しかし、なんでもかんでも西ヨーロッパに中心の置かれていた当時の世界においては、アメリカもソ連も伝統に挑む ”異端児” 的存在です。  今後の両国は新しい国際秩序の主導権をにぎろうと、20世紀を通して

歴史総合入門(7)2つ目のしくみ : 戦争が変わり、社会や国際秩序が変わる

■国際秩序の転換と大衆化 20世紀の初めからは、2つ目の「しくみ」がうごきだします。 18世紀後半にイギリスではじまり、次第に世界中にひろがっていった「近代化」のしくみも、同時進行で存続しますが、ある3つの変化をきっかけに、2つ目のしくみ(国際秩序の転換と大衆化)が作動する、というイメージです。 ■変化① 総力戦 1つ目の変化は、総力戦という、第一次世界大戦(1914〜1918年)にはじまるまったく新しい戦争の形です。 どのような点が新しかったのでしょうか? そも

新科目「歴史総合」入門(4)グローバル化

■3つ目のしくみ「グローバル化」 いよいよ最後、3つ目のしくみは「グローバル化」があらわれる20世紀半ばの時代をみていきましょう。 前回みたように、戦争が終わると、今度はアメリカとソ連の2つの世界に引き裂かれましたが、2度の世界大戦を通して縮小していた貿易や交流は、以前と比べれば回復に向かいます。 ソ連とアメリカは、それぞれの掲げるイデオロギーのもとで、世界をひとつにまとめようとします。 人々は、生活水準を高める憧れを抱き、どちらかの陣営に参加し、よりよい人生をおくる

新科目「歴史総合」入門(3)新しい国際秩序と大衆化

20世紀初め、1つ目のしくみである「近代化」に、さらに2つ目のしくみ「新しい国際秩序」と「大衆化」が加わります(注)。 この転換のきっかけとなった第一次世界大戦は、先ほどの帝国主義がエスカレートしたことにより起きた総力戦でした。 総力戦とは、国が国内のすべてのヒト、モノ、カネを動員しなければ勝つことのできなくなった、まったく新しい形の戦争のこと。 1つ目のしくみが持っていた「ひとつにまとめようとする力」がアップデートされ、人々が”自発的”に参加しようとする仕掛けが、いろ

新科目「歴史総合」入門(2)近代化と私たち

■近代化における「2つの力」 1つ目のしくみは「近代化」です。 18世紀後半の欧米諸国ではじまり、世界にひろがり、現代の私たちにも影響を与え続けています。 「近代化」のしくみにおいては、2種類の力が作動します。 ひとつは国が、さまざまなヒトやモノを「ひとつにまとめようとする力」、 そしてもうひとつは、自由主義、民主主義、国際主義のように、束縛から逃れ「自由になろうとする力」です。 日本では19世紀後半に明治維新がおき、”富国強兵” をスローガンとする改革がすすんで

新科目「歴史総合」入門(1)

■歴史総合ってどんな科目? 2021年、高校に新しい科目が加わりました。 「歴史総合」です。 日本史と世界史をあわせた科目。 日本史と世界史を同時に学ぶ科目。 世界史的な視野で日本史を学ぶ科目。 よくそんなふうに説明されますよね。 また、そもそも『学習指導要領』では、科目の目標がつぎのように説明されています。 ほかにも、資料を読み解き、比較やつながりなどに注目しながら「概念」を用いて考察、議論をしたり、課題を見つけ解決したりする、といったことが挙げられていますね。

[世界史探究] 新教科書⑵ -枠組が変わったこと-

 高校新科目「世界史探究」の新教科書に関する記事の第2回です。  今回から,新教科書の具体的な内容や「世界史B」との相違点などについて,学習指導要領の記述を参照しながら見ていきます。  なお,一連の記事内容は,第1回の記事で挙げた5冊の教科書を通覧しての情報です。新教科書は全部で7冊あり,残り2冊は未確認です。あらかじめご了承ください。 ▼第1回の記事はこちらから 「人類の進化」は外されたのか? 本をパラパラとめくりながらザックリ中身を確認するとき,たいてい巻頭の特集

担当編集が明かすエマニュエル・トッドの素顔と、「トッド本」の歩き方

2022年、『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』が日本でも刊行されました。国や地域ごとの家族構造や人口動態に着目した「トッド人類史」の決定版であり、自身も「これはある意味、私の自伝だよ」というほどの代表作です。 トッドさんも来日して、さまざまなインタビューを受けてもらいましたが、月刊誌『文藝春秋』で希代の読書家である佐藤優さんと片山杜秀さんとの鼎談を行ったときのこと。佐藤さんから「この本は素晴らしいけれど、独力で読みこなせる人はあまりいないと思う」とご指摘をいただきま

小池陽慈著『現代評論キーワード講義』&『評論文読書案内』の使い方 【歴史総合編】

結論。小池先生の著作は、高校の地歴公民科の授業で使いやすい! ということで、わたしなりの紹介として、発売されたばかりの『現代評論キーワード講義』(三省堂、2023)に加え、『世界のいまを知り未来をつくる評論文読書案内』(晶文社、2022)を合わせて、使い所を整理してみました。ジグソー学習などのワークシート等で引用したりする際にも、便利であるとおもいます。 読むキーワード辞典というジャンルでいえば、今村仁司の『現代思想を読む辞典』がパッと浮かびます。受験生向けという点では、

ディオゴ・ド・コウト~大航海時代の忘れられた歴史家~

私の専門は歴史学です。研究はおもにポルトガル語圏の歴史を対象としたものになっています。なかでも、いま(2023年2月現在)もっとも関心を寄せているのが、ディオゴ・ド・コウト(1542年~1616年)という歴史家です。 ディオゴ・ド・コウトは、ポルトガル文学やポルトガル史で重要な人物ですが、日本語の文献で紹介されることはかなり少なかったと思います。 日本語の一般書でコウトについてそれなりに解説しているのは、ボイス・ペンローズ著『大航海時代―旅と発見の二世紀』(ちくま学芸文庫

ヴァイキング関連書籍で最初に読みたい3冊

北欧神話関連本、サガの翻訳本の紹介は以前記事にしたので、今回はヴァイキング関連書籍(社会史、文化史など)のうち最初に読みたい3冊を紹介します。 熊野 聰 著 小澤 実 (解説・文献解題)『ヴァイキングの歴史 実力と友情の社会』創元社 2017年 日本におけるヴァイキングの社会史研究での第一人者、熊野聰氏の著書は数多く出版されているが、すべてはこの本から始まっていると言っていいだろう。 私は10代半ばの頃、旧版の『北の農民ヴァイキング』を愛読していた。 ヴァイキングといえ