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"歴史" 系 note まとめ

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#読書

【ニッポンの世界史】#32 少女漫画がひろげた世界史の担い手:『ベルサイユのばら』を中心に

 はじめに結論から。  少女漫画『ベルサイユのばら』が、世界史をコンテンツとして楽しむことのできる広汎な読み手を育て、歴史の関わり手を男性だけでなく女性にひろげる役割を果たした。  今回ここで述べるのは、たったそれだけです。 *** 歴史を物語として楽しむカルチャー  歴史を物語として楽しむ行為自体には、口伝えの伝承や軍記物語など、それこそ長い長い歴史があるわけですが、日本ではとりわけ近世以降、商業的な出版や演劇、講談を主要なメディアとして、たとえば『三国志演義』の二

『サピエンス全史(下)』(ユヴァル・ノア・ハラリ著)

【内容】 ホモ・サピエンスの過去、現在、未来を俯瞰する世界的なベストセラーの下巻。 ※ネタバレ(?)します。 【感想】 人類と何か? 神とは何なのか? 死は克服されるのか? チラリと頭をよぎることはあっても、普段は大きな話過ぎて、基本的にスルーしがちな話題を、凄く頭の良い学者が今わかっている最新の研究を絡めて語ったらどうなるのか? そしたら、やたらに面白く、今まで見えていなかった世界のありようが見えてきた… そんな本になっていました。 下巻は、上巻ほどのインパクトは

『フェミニスト経済学』から政治・経済・歴史を捉え直す①

2023年10月に弊社から発売された長田華子・金井郁・古沢希代子編『フェミニスト経済学――経済社会をジェンダーでとらえる』の刊行を記念して、2023年10月13日に座談会を開催しました。その模様をお伝えします。②以降は弊社PR誌『書斎の窓』でもお読みになれます。 〈座談会参加者〉 長田華子(茨城大学准教授)・金井郁(埼玉大学教授)・古沢希代子(東京女子大学教授)×岡野八代(同志社大学教授)・満薗勇(北海道大学准教授) 異分野の研究領域とフェミニスト経済学金井 はじめに、こ

【ニッポンの世界史】#24 世界史にとって、1970年代の「大衆歴史ブーム」とは何か?

1970年代の大衆歴史ブームの担い手は誰か?  まずは前回のふりかえりから。  1970年に高校の学習指導要領が改訂され、世界史A・Bが世界史に一本化されるとともに、「文化圏」学習がはじまったのでした。  改訂された新学習指導要領が実施されたのは1973年からのこと。  これに基づくカリキュラムと教科書により教育を受けることになったのは、1957年より後に生まれた高校生たちです。  1957年生まれは「ポスト団塊世代」ともいわれ、ギリギリ東京五輪の記憶があって、多感な時代

【ニッポンの世界史】#20 戦後の「世界史全集」ブームのゆくえ

出版ジャーナリズムが世界史をダメにした?  これまでたびたび紹介してきた歴史学者上原専禄は、1950年〜60年代までの世界史に関連する出版物の変遷について、次のように評しています。  この1969年に書かれた論考で上原がここで批評の対象としているのは、古代から現代までをカバーする「世界史全集」のことです。  全集といえば、「世界文学全集」や「百科事典」が刊行されるようになるのは、戦前の大正時代からのこと。新潮社の『世界文学全集』(全57巻、1927〜32年)は1冊1円の

【歴史的視点】歴史を日常にどう活かすか?

こんにちは、けいごです。 仕事やプライベートを充実させる中で、「視点のストック」をためることは非常に有効です。「視点のストック」というのは、「その経験独自の視点を身につけること」としています。 例えば、警察官を数年続けていれば、警察官的な物事の見方が出来るようになります。その他の仕事や趣味で得た「視点」もストックとしてためていくことで、様々な日常の出来事に応用し、人生をより面白いものにしていきます。 「視点のストック」とは「視点のストック」の考え方については、以下の記事

柳田国男『明治大正史 世相篇』についてのメモ②―資料の匿名性について

 以下の記事で角川ソフィア文庫版の柳田国男『明治大正史 世相篇』を紹介したが、この本を読み進めている中で柳田国男の資料の匿名性についての考え方について考察したことがある。 柳田の匿名性に関しては、資料を提供した人物の名前を出さずに自分が蒐集した資料であるかのように引用することが批判されることがある。そして、柳田とセットで南方熊楠は資料を採集した人物や引用元を明記したことを評価する場合もある。この柳田の「資料の引用元の匿名性」とも言える考え方は何か理由があると以前から考えてい

【趣味活】30代になり初めてわかった「歴史」の楽しみ方をまとめる

こんにちは、けいごです。 お恥ずかしながら、30代に突入して初めて歴史の面白さを知りました。それまでは、「戦国時代? 歴史っていつも戦ってませんか?」みたいな感じでした。しかし今では、徳川がどうのとか、信長がどうのとか、割と話せるくらいになってきました。 歴史の楽しみ方には人によって様々あると思いますが、私なりの「面白いと思ってること」と「楽しみ方」をまとめていきたいと思います。 本記事では「歴史がつまらなすぎて勉強が進まない」と感じている学生さん、「歴史を知りたいんだ

『記憶を語る,歴史を書く』刊行記念:「オーラルヒストリーの入口で」③

(①はこちら、②はこちら) 生活史の読み方について四竈 この話、私の個人的な引っかかりかもしれないんですが、ちょっとお伺いしたいことがあって。『家(チベ)の歴史を書く』について、さっき、何度も感動したし、笑えるし、っていうふうに申し上げたんですけどね。たとえば文庫版の98ページで延奎(よんぎゅ)伯父さんに、「最後にもう一度人生をやり直せるなら何になりたいか」と聞く。すると伯父さんのほうが「やっぱりね、教育者になりたい。今度は、もう、そんな偉くなくていいから」って、なんとなく

『名画の中で働く人々―「仕事」で学ぶ西洋史』by 中野京子

中野京子さんの本を読むのは、もう25冊目だけど、ほとんど外れなし。 いい加減ネタ切れなんじゃないのか、「仕事」を切り口に名画についてなんか書けるんだろうか?なんて思ったけど、さすが引き出しが豊富だ。 「仕事」といってもバラエティに富んでいる。 闘牛士、侍女、香具師(やし)、宮廷音楽家、羊飼い、女性科学者、道化、警官、思想家、ファッション・デザイナー、大工、看護婦、政治家、修道女、船頭、異端審問官、傭兵、女優、子供も働く、天使も働く。 名画とともに、いろいろと面白い、ために

つながる沖縄近現代史 書評

※これは、2022年1月15日の沖縄タイムス 読書17面に掲載された書評に、加筆したものです。 ーーーーーーーーーー  私は日本史がさっぱり分からなかった人間である。幕府と朝廷の違いもわからず、ひたすら年号を暗記するだけで逃げてきた。キーワードは覚えていたけれど、それが実際どういうことで、何が起こっていたのか、1ミリも理解なんてしていなかった。それが、2017年には大河ドラマにハマりまくり、ゆかりの地をめぐり一週間の旅に出るまでになった。  私にとってのコペルニクス的展

新刊の紹介‼︎ 宇山卓栄さん監修『世界の王室 興亡史』

TJMOOKより宇山卓栄さん監修『世界の王室 興亡史』が2023年1月11日(水)に発売されました。 杜出版代表の青木康が編集をして、圓道祥之さんと青木康が執筆協力をしました。 本書では、現存する世界の27のロイヤルファミリーを紹介するとともに歴史上で存在した世界各地の王室も紹介しています。 それぞれの国の王室の歴史から各国の国民性も解説しています。 『なぜ日本の皇位は簒奪されなかったのか?』とトピックに興味を持ちました。 歴史上、世界では王室が変わっているのになぜ

【書評】立石博高『スペイン史10講』(岩波新書)

 大航海時代の主役となり、「太陽の沈まぬ帝国」を築いたスペイン。きわめて興味深い歴史を持っていますが、イギリスやフランスなどと比べると通史に詳しい人は少ないかもしれません。  本書は250ページほどのコンパクトな新書ですが、原始時代~21世紀までのスペインの通史を扱っています。駆け足のため人名・事件名の羅列になりがちな箇所もありますが、スペイン史の入門としては最適だと思います。 文明の十字路だったイベリア半島 スペイン史の展開には、地形的・地政学的特徴が深く関わっています

新書の紹介‼︎青木康、古川順弘さん共著『地形と地理でわかる京都の謎』

宝島社新書より弟の青木康が古川順弘さんと共著で『地形と地理でわかる京都の謎』を出版しました。 京都の歴史を地形や地理などから50のトピックスで紹介しています。 平安京に遷都されてから今までの歴史について解説しています。 カラーの図解もあり読みやすいです。 「なぜ、織田信長は防御が弱い本能寺に泊まったのか」というトピックがおもしろかったです。 本能寺の変で織田信長は明智光秀に討たれましたが、なぜ京都でも本能寺を宿泊先に選んだのかという謎です。 本能寺は法華宗の大本山