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ゼロからはじめる世界史のまとめ⑨前200年~紀元前後の世界

国のサイズが巨大化する時代②
(⇒詳しくはウェブサイト「世界史のまとめ」へ)

「国が巨大化する」ってどういうことですか?(この時代のまとめ地図
「国」って言葉、イメージしづらいよね。

 こんなふうに考えてみよう。

 ある範囲にある物や土地をコントロールし、言うことを聞かせることができる人のことを「支配者」といって、ここまですでに世界のいろんなところに現れているよね。

 彼らはせっかく手にした支配が「長持ち」するように、いろんなシステムをつくっていったんだ。

その「支配者」が死んでしまったら支配が終わってしまうようじゃ、跡継ぎ候補の人はイヤですもんね。
―だから、たとえ今の支配者がいなくなっても支配のシステムだけは残るようにしていったんだ。

スポーツの監督が代わってしまうと、チームが弱くなってしまうことってありますね
―そうだね、たしかに「誰がトップに立つか」ということも重要だ。
 でも、トップが代わっただけで崩れてしまうような組織って、ほんとうに強い組織といえるんだろうか?


…なかなか難しいですね。
―でしょ。
 国っていうのは「支配者」だけではなくて、いろんな気持ちや事情を持った人間たちによって構成されているよね。
 支配者の家来の、そのまた家来だっているわけだ。
 これら「支配者グループ」が、その他大勢の「支配される人たち」をコントロールしようとしているわけだけど、「支配される人たち」だってバカじゃないからね。
 支配されないようにいろんなことを考え、行動しようとするわけだ。一度きりの人生だから

 そんな中で、いろんな立場の人のことを考えつつ、どうすれば支配者が甘い蜜を吸い続けることができるのか?
 逆にいえば、どうすればそういう支配者が現れないようにすることができるのか? どんな支配が理想的なのか?

 「国」について、今まで多くの人がいろんなことを考え、実験が重ねられてきたのだともいえる。

国が大きくなったからといって、初めからうまくいくとは限らないってことですね。
―そうそう。
 勘違いしがちだけど、「大きい」イコール「良い」ではない
 大きくなればなるほど、「大変」なわけだ。

 この時期にはあちこちに大きな国ができるけど、この時代の支配者は国を豊かにするにはできるだけ広い土地をゲットすることだと考えていた。
 うまみのある土地は周辺の国どうしの取り合いになる。

どんなところが「うまみのある土地」ですか?
―たとえばユーラシア大陸の内陸にある砂漠地帯だね。

砂漠のどこが良いんでしょうか…
―たしかに砂漠で生活するのは大変だ。
 でもその周りの農業ができるエリアには、大きな国がいくつも生まれているよね。

 大きな国は、国を豊かにするために珍しい品物を求めたり、自分の特産物を遠くで売りたかったわけだけど、そのためには砂漠をまたがなければいけなかったんだ。
 そこで砂漠には各国の商人が集まってオアシスという水場に町ができ、その富や交通をコントロールする支配者も現れるようになった。稼ぎの多いところではオアシスの国に発展した町もあるよ。

 オアシスの国々には東から中国のシルクが西へ流れ、西のローマからはガラスや宝石が東へ流れた。この貿易ルートのことをシルクロードというんだ。

貿易は陸のルートだけですか?
―この時代には海のルートも開拓されるよ。
 ユーラシア大陸の南の方では季節によって風向きが変わるんだけれど、これを航海に応用すれば、船を漕ぐ必要がないことが発見されたんだ。
 この季節風を利用した交易の通り道になったのが、南アジアや東南アジアだ。
 このへんには中国やインドからビジネスマンがひっきりなしに訪れるようになって、その輸出入品をコントロールした支配者が、主要な港町に現れた。港町をいくつも支配して国に発展するケースも出てくるよ(注:港市国家という)。


国っていうのは、ビジネスによっても誕生するものなんですね。
―そう、農業のためだけに建国されるわけじゃないんだ。
 ただ、この時代の多くの国はどちらかというと農業をするために「できる限り広い領土を手にしよう」とする国が多いから、オアシスの国と港町の国は少数派だね。

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◆前200年~紀元前後のアメリカ

―北アメリカでは、トウモロコシの農業を基盤とした王様が、神殿の「ふしぎな力」を利用しながら勢力を強めている。今のメキシコのあたりが中心都市だ。

 南アメリカでは海岸近くに強力な力を持った王様がいたようだ。農業や漁業によって成り立っていたことがわかっている。

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◆前200年~紀元前後のオセアニア

―オセアニアでは人々の移住の波はいったん落ち着いている。
 オーストラリアは相変わらず外の世界との接触がない。

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◆前200年~紀元前後の中央ユーラシア

―草原地帯では依然として遊牧民のパワーが強いままだ。
 中国の北方では「匈奴」という複数の遊牧民たちの大連合の活動がさかんで、中国の定住民の国と、砂漠地帯のオアシスの国々の支配をめぐって争っていた。
 「匈奴」の支配をきらった遊牧民グループの中には、インドの北方に移動した者たちもいるよ。

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◆前200年~紀元前後のアジア

◇日本
この時代の日本は弥生時代ですよね。
―そうだね。稲作が広まると、お米は保存がきくから貧富の差ができる。各地に支配者が現れ戦争も起きているよ。

 最先端の技術はユーラシア大陸からやってきた。
 だから当時の流行発信地は九州だ。青銅器や鉄器の作り方を知っているに朝鮮の人々を通して、中国の情報を知った支配者たちは、「中国の皇帝」を味方に付けることで自分の支配に箔(はく)をつけようとしたんだ。

中国という「ブランド」に頼ろうとしたんですね。
「青銅器もらっちゃった!」って自慢して、一枚上手(うわて)に立とうとしたわけだ。そんなわけで当時の日本はたくさんの支配者がひしめく状態だったから、統一したひとつの国があったわけではないよ。


◇中国 
中国では秦という国が短期間で滅んでしまっていましたね。
―厳しい支配に対する反乱が起きてしまったんだよね。
 その反省を生かした次の国は、「皇帝」が改善策を考えた。
 なにがなんでもすべての領土を直接支配するのは厳しすぎる。直接支配するところと、一族や家来に土地を与えて治めさせるところを併用したほうが現実的だろう、と。
 つまり大昔の周と、滅んだばかりの秦の支配システムのハイブリッドだ。

うまくいったんですか?
―いや…結局反乱は起きたよ。でもこれを鎮圧した皇帝は、すべての領土を直接支配する方針に転換した。
 ただ、無理やり支配しても長続きしないことはわかっていた。
 そこで忠実な家来を採用するにはどうすればいいか考えていたところ、上下関係を重んじる儒教という考えが好都合だ、学者からのアドバイスもあって、それをこの国の「正義」ということにしようということになったんだ。

 当時の皇帝にとって一番のライバルは地方の実力者たちだった山や川を何個も持っている者さえいる。皇帝は、役人になってみたい者を採用する仕組みをつくったのだけど、地方の実力者の意見が強くて、皇帝には誰を採用するかという決定権はほとんどなかった。


皇帝も大変なんですね。もっとパワーがあるのかと思ってました。
―彼らのご機嫌をとることも大切だからね。この時代の皇帝の力はこんなもんだ。

 ただ、領土はこの時代にかなり広がるよ。西の方にある砂漠地帯のオアシスの国々も支配下に組み込んだ。
 世界各地からビジネスマンが集まる重要ポイントだ。

 いかに皇帝が素晴らしいかということをアピールするために、歴史書もつくられているよ。ただ、領土が広がればそれなりにお金も必要になる。
 経済改革がおこなわれたんだけど、皇帝の周りに「自分のこと」ばかり考える人たちが群がるようになっていき、しだいに国のパワーは衰えていくことになる。

◇朝鮮
―この時代、中国の支配は朝鮮半島にも及んだ。支配のための役所が四か所に置かれている。

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◇前200年~紀元前後のアジア  東南アジア

この時代は海の貿易が盛んになるんですよね。
―そうだよ。その通り道になったのは東南アジアだ。
 中国の皇帝も富を求めてベトナム(地図)に進出し、役所を置いている。

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◇前200年~紀元前後のアジア  南アジア

―この時代のインド(地図)は分裂しているね。

 北西のほうに山だらけの地域(注:アフガニスタン(地図))があるんだけど、ここではギリシャ人の王国が栄えているよ。

なんでこんなところにギリシャ人が?…あっ(察する)
―そうそう。昔、ギリシャの王様がここまで遠征しに来たよね。その子孫がここにこうやって住んでいるわけだ。
 ギリシャって狭いから、こうやってあちこちに移住して町をつくってビジネスしていたんだよ。

 彼らの王国は北からやってきた遊牧民に滅ぼされ、またさらに別の遊牧民へと支配者がめまぐるしく移り変わった。で、この場所に住んでいた民族の一派が、山を越えてインドに支配エリアを広げ、インド北部にまたがる大きな国をつくったんだ(注:クシャーナ朝)。


「インドの国」っていうか、ちょっとはみ出てますね。
―今の国境線で考えるとはみ出ているけど、まあ彼らからすれば豊かなインドを支配したかったわけだろうね。

 一方、インドの南のほうでは、山を拠点に港町も支配する大きな国ができる。この国は貿易ビジネスでとっても栄えるよ。
 インドはユーラシア大陸のちょうどど真ん中にあるからね。
 インドの商人は東南アジア方面にも盛んに進出しているよ。

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◇前200年~紀元前後の西アジア

 この時代はローマが地中海の覇者へと出世する時代だ。
 最大のライバルであった老舗(しにせ)のカルタゴ(フェニキア人)を破り、その後地中海を取り囲む広大な領土を手にしていくこととなる。
 でも今度は新たに手に入った土地をめぐって内輪もめが勃発。
 1世紀にわたる混乱の中では、奴隷が反乱したり独裁者が現れたり、本当に危機的な状況だった。これを軍事力でおさめた貴族出身の政治家は、みずからを神の子孫と名乗り、全ての領土で軍隊を思いのままに動かすパワーを掌握した。


でも、力ずくにで支配すると反感を買いますよね?
―だよね。
 だからこの政治家は、伝統的にローマの政治を握っていた貴族たちとのバランスをうまくとろうと必死になるんだ。
 「僕はあなたたち貴族のことを尊敬しています。僕なんて大したことないっす」ってね。


敵に回すと怖い人は誰か、よくわかっていたんですね。
―そう。じつに用意周到だ。

 対外的には、この時代に領土はぐっと広がって、軍隊が置かれた町はそのまま大都市に発展して今に至るよ。
 たとえば、パリ、ロンドン、ウィーン…どれもこの時代につくられた軍事都市だ

 ただ、支配が強まると反抗も起きるよね。
 地中海の東岸のパレスチナ(地図)というところでは、ユダヤ人がローマの支配を受けていた。苦しむ人たちの中から次の時代に「キリスト教」という宗教が生まれることになるよ。

キリスト教って、アメリカとかヨーロッパで生まれたんじゃないんですね。
―そうそう、そういうイメージがあるけどね。発祥の地はアジアなんだよ。

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◆前200年~紀元前後のアフリカ

アフリカには王国はありますか?
―東部(北を上にして右の方)のエチオピア(地図)というところに、貿易で栄えた国があるよ。インドや地中海との貿易ビジネスに成功し、いろんな民族が集まるインターナショナルな国だった。


エジプトはどうですか?
―ギリシャ人の支配者の国が空前の繁栄を遂げていたんだけど、この時期に「出世」したローマの領土に飲み込まれてしまったよ。
 最後の女王はローマの政治家にSOSを求めたけど、結局そのライバルの政治家によって倒されてしまったんだ。悲劇の最期(さいご)はのちに映画のテーマにもなっている。

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◆前200年~紀元前後のヨーロッパ

―この時期にローマはヨーロッパの内陸方面に進出。
 ケルト人を倒して支配を広げた。
 でも当時のヨーロッパは依然として森だらけ。を挟んでケルト人との戦争が続いたけど、征服することはできなかった。


ヨーロッパの国ってABC…のアルファベット(ローマ字)を使ってますよね。これってローマと何か関係ありますか?
―よく気づいたね。
 この時代にローマがヨーロッパに支配を広げた影響のひとつだね。
 ロンドンやパリ、ウィーンといった今につながる大都市も、この時期に建設されたんだ。

このたびはお読みくださり、どうもありがとうございます😊