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旅する土鍋2017アーカイブ

※今年も「旅する土鍋」をスタートするにあたり、昨年こちらに投稿していなかった「旅する土鍋2017」アーカイブ記事をまとめています。

2017.07.29 ジュリアーナの住むローマへ

イタリアでは日々驚異的な酷暑。毎日「最高気温更新!」のニュースが流れっぱなし。「水不足のローマは噴水の水も止めます」など危機迫る夏の暑さを警告している。

朝食を食べて、師匠のリグーリアの夏の家から列車でローマに向かう。ジェノバやミラノからローマは新幹線で4時間ほど滑るような快適コースで行けるが(20年前はもっと遅かった)、今回はジェノバやポルトフィーノからほど近い海の町「ゾアリ」というローカル駅から各停列車で5時間半くらいのリグーリア湾をずっと走るコトコトコース。鏡のように輝く海、青い空と海、泳ぐ人、入り江、岩場、砂浜ごとにシーンが変わり、無声映画を見ているみたいだ。手にした内田洋子の「皿の中に、イタリア」に時折目を落とすが、頭は妄想に走るので、半分は本を閉じて車窓を眺めていた。

ミラノ弟子時代、工房にはイタリア人の弟子仲間がふたりいた。エディタは師匠の右腕で、師匠の成形を唯一手伝える弟子。もう一人は大学で建築を学ぶジュリア―ナ。彼女は妹のような年齢なのにわたしを大そう面倒見てくれて、家に呼んでくれたり彼女の彼と3人でピクニックに行ったりイタリア語を直してくれたり。休みなどは彼女の故郷カラブリアに長く滞在させてもらった。

ジュリア―ナとは去年20年以上ぶりに再会。絶対に涙なんか流さないし、ウダウダ言うと「心配するな」と男まさりな女性も、再会の時はさすがにふにゃりとなっていた。そんなのも束の間「なぜ私の住むローマに来ない?」とイタリア語的に聞かれると(理由はない)「行きますとも!」と言ってしまうわけで、今年はジュリア―ナの住むローマへ。

彼女はローマの役所の歴史的建築に携わる仕事をしているので、最高のローマ案内をしてくれた。朝の通勤もスクーターの後ろに乗って、夜の遊びも後ろに乗って。石畳の街を、車もバイクも荒い運転のなかを、お尻がぴょんと飛ぶような怖さこらえて。大声で「たまーみ全てオッケー?」と聞くので「ヘーキ!」と強がって答える。

何回か来たローマだが年を重ねたぶん何倍も深く感じる。倒れそうに暑いローマ散策中「心配するな」がクチグセな彼女から、何度も「大丈夫か?」とメールがくる。返事をしなければ「問題ないか?」と電話がくる。彼女は本当に男性っぽい。仕事終わりに待ち合わせをして夕刻から遊ぶ。キュキューッとカッコよく止まるスクーターが見えてピンクのヘルメットをかざしたら迎えにきてくれたジュリア―ナだ。初日はずいぶんと怖くてこわばっていた2人乗りも3日目には「だいぶ慣れた」。いや、その言葉は、彼女が「乗り心地はどう?」と聞いたので答えた精いっぱいの強がり。

「旅する土鍋」プロジェクトは、通常は米が8合か10合炊けるくらいの大きな土鍋を持ち歩く。旅仕様で普段づかいより頑丈につくってあるので、それはそれは重い。それが持ち歩けない事情もときにある。本当は毎回「持ち歩けない事情」があるのだけれど、事情が3つくらいであれば、なんとか乗り越える策を考えるが、5つの場合は、ミニチュア土鍋を持ち歩く。今回のローマもそういうわけで冒頭写真のミニチュアなのだ。中身は彼女の故郷カラブリアの名物「ンドゥイヤ」。作り方については知人の「ンドゥイヤ」記事を貼っておく。







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