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時間術の本かと思いきや実は優れた自己啓発の本だった 『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である』

Amazon の Prime Reading でレコメンドされていたのでダウンロードしました。書店で見かけてちょっと気になっていた本だったので、無料で読めるのはありがたい。

『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である』
(中島聡)

マイクロソフトでOSの開発に関わっていた方による「責任を持って仕事を終らせる」ための時間の使い方を紹介した本。そして、時間術の本に見せかけて、実は人生の舵を切る勇気を与えようとしている本です。

中島聡さんは、その筋(?)では有名なエンジニアで、Windows95の開発に携わり、マウスの右クリックで便利なメニューが表示されるUIを発明された方です。偉大だよね。

そんな偉大なる成果を上げてきた著者は、まず締め切りギリギリで頑張る仕事のスタイルを否定する。

ちなみに、私の仕事のスタイルは典型的なギリギリブーストタイプ。締め切り当日にワーっと仕上げるタイプで、世界のビジネスマンの92%はこのタイプではなかろうか。著者は、まずこのスタイルを全否定する。私、全否定される。

では、どのような時間の使い方が良いか。著者が自身の仕事人生をふりかえりたどりつた答えが「ロケットスタート時間術」だ。名前はかっこわるい、でも、中身は凄い。その通りに出来たら凄い。

ざっと紹介すると、まず、仕事をするうえで最も重要なのは「常に締め切りを守ること」であるという。もう、ここから耳が痛い。多くの人は「最後に頑張ればなんとかなる」とばかりに、締切直前に残業を重ねて仕事を終わらせようとするが、これは根本的に間違いであることを認識し、悔い改める必要がある。

ではどうするか、そこでロケットスタート時間術となる。

仕組みは簡単だ。まず、仕事の依頼を受けたタイミングで、依頼期日の2割ほど(10日のしごとなら2日間ほど)見積もりのための時間としてもらいつつ、そこで一気に依頼された仕事に取り掛かる。

一目散に、それこそ締め切り直前のような勢いで取り掛かり、ほぼ完成まで持っていくよう頑張るのだ。

そして、最初に貰った期間の2割の時間でほぼ完成まで持っていければ依頼期日で受ける。逆に、ほぼ完成まで仕上がらなければ、これを「危機的な状況」と認識し、スケジュールの見直しを交渉する。

という流れなのだが、ポイントは一気に取り掛かる部分。ここをモーレツにやるのが流儀だ。曰く、

崖から飛び降りながら飛行機を組み立てるのです

というモーレツさでやる。健康には気をつけながら全力疾走する。健康を害さなければどんな無茶でもする。期間中、徹夜をするとしたらこの最初の2割の期間に行う。それくらい頑張る。

そうしてほぼ完成のプロタイプが出来たら、残りの8割の時間は、そのやり直しも含めて、コツコツと完成度を上げていく仕事にあてる。流す時間だ。

本書はこの基本的なフレームワークを成り立たせるために、様々なテクニックを紹介している。実際の仕事への応用方法、界王拳の使い方、細々したタスクの扱い方、1日の流れへの応用など。あれこれと面白いテクニック紹介&仕事談義が続くのだけど、テック関係の業界に居る人、居た人、特に40代のかたには面白い話も多いので、実際に読んで頂きたい。

最後の章では、なぜ時間を大事にする必要があるのか、それは一度しか無い人生を思いきり楽しむためにあるのだといい、人生をより良くするための指南も授けてくれるという大盤振る舞い。


本書、典型的な「あなただからできるんでしょ」本ではある。頑張れと言われただけで頑張れる人は、最初からアドバイスなんていらない人だ。だからといって意味がないとは言わない。

本書を読んで心に響く人は多いだろうと思う。特にソフトウエアエンジニアの方々には刺さるものがあるのではないかしら。そういう方には、仕事のテクニック本である以上に、優れた自己啓発の本になるだろう。







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