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散りぬべき 時しりてこそ

散華

花びらは散る、花は散らない
地獄へは俺が行く
より
花と散るのは、武士の、
それは男子のみならず
女性にも己の美しさのために
散華した者も多い。

「散りぬべき 時しりてこそ
 世の中の
 花も花なれ 人も人なれ」

細川ガラシャこと明智玉
織田信長の命で
細川忠興の妻となった
明智光秀の娘
の辞世の句。

天下分け目の「関ヶ原」の合戦の前
西軍の石田光成が
大阪の細川屋敷にいた細川ガラシャを
人質にとろうとした時、
ガラシャはそれを拒否。
屋敷を三成の兵が取り囲む中
「名誉のために、自分だけが死にたい」
と、屋敷内の全ての女性を外に出す。
クリスチャンである故に、
自殺ができないガラシャは
遺体が残らぬように屋敷に
爆薬を仕掛け、点火したのちに
家老小笠原小斎秀清に介錯された
とされる。

細川ガラシャの壮絶な死に驚いた三成は
その後、人質作戦の手を緩めたが
それを「西軍敗北の一因」と
する説もあるようだ。

細川ガラシャは壮絶な散華で
自身の名を未来に運ばせることとなった。

まさに、
花びらは散る、花は散らない

桜散る 梅はこぼれる 椿落つ
牡丹くずれる 人は往く

「人は死ぬ」
と続ける場合もあるようだ。
しかし、ここは
「人は往く」
としたい。
「この世」
を去って、
「あの世」
に往く。

死は終わりではない。
いや、
自分だけの命と思えば
死は終わり。

けれども
命は「自分だけのもの」ではない。
自分が「つなぐ」命がある。
それは、子ども、子孫に限らない。
大切なものの命。
かつて、
この国の多くの人が
「草木国土悉皆成仏」
と信じていた。
キリシタンになった
明智玉とて
そう信じて育っただろう。
「草木国土の悉皆が成仏する」
のは
「草木国土の悉皆(すべて)に命がある」
から。
「森羅万象に霊(精霊)が宿る」
と信じていたのは、
過去の日本人だけではない。
現代人でさえ
「付喪神(つくもがみ)」
の存在を受け入れる。
でなければ
「刀剣男子」
はヒットしない
はず。

「滅びの美学」とまとまられてしまう
「散華」ではあるが
「この世を生ききった結果」
ともいえる。
だからこそ、
日本人は、
散華を美しい
と感じる
のではないか。

見るべきほどのことは見つ
今は 自害せん

そう笑って
颯爽と壇ノ浦に散った
平知盛のように。

「燃えたよ。真っ白に燃えつきた。真っ白な灰に」

さようならの理









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