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政次の手紙#06

文次殿

久しく便りがないので心配しておった。ちょうど手紙を書いて出しおえたら君からの書面と写真が到着したので、取り戻してきた次第です。先日、萱田さんの通信の中に戦闘に参加せられるのではないかとありましたけれど、下士官の候補教育を三、四カ月うけるから慰問品も無用とあったので、いかにも腑に落ちぬと思っていた。
待望の初陣戦闘に参加されたるは大いに満足致し、また想像以上の困苦に打ち勝ち、無事帰還されたことは無上の喜びであります。また、在隊中は極力軍務に奮闘、教養に専念せられていることは一同大いに慶賀に堪えません。
ますます元気に充分健康を保持せられて決して人後に落ちないように懸命に奮闘せられん事を。

七月十九日に慰問袋一個、発送した。中には薬四個。

「足の痛みを早く直してください」。

青梅の焼酎漬け、するめの味付、ふんどし二、ドロップス一缶等入れてあります。三回目の慰問袋はまだ着きませんか。

昭人も昭子も昨日から暑中休暇で遊んでいる。このたびの試験の成績は両人とも相当できておりました。
豊子も達者で通勤している。六月の賞与も人並み以上に三十六円給与された。
それから先便にてちょっと申し上げた千代子も直方の方がどーも将来性がないから引き取りました。何か職業につかせる事に考慮した結果、福岡のミシン会社に通勤させております。いずれ見込みがついたら自宅で自営させるつもりです。何とぞあしからずご了解の上、ご安心ください。このたびは万事考慮してやります。また、本人千代子も充分訓戒して自覚をもって精神誠意働くと申しております。体も丈夫になっておりますから。

では体も大切に(渡支以来、一日も無休とは感心致しました)。早川軍曹殿へも書簡を出します。


 昭和15年7月22日

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