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パートナー・プロデュース(α版)<その1>それは一体何なのか?

◼️シーズン3「パートナー・プロデュース(α版)」

<Whole parents>のシーズン3は、夫婦の話になります。当たり前の話で恐縮ですが、家族の関係図で外せないのが夫婦関係です。むしろ、親子関係より時間的には先行します。避けきれないお題ですな。
 さて、ネーミングがパートナー・プロデュースになっているのは、少々込み入った事情を勘案しております。実は、このパートナー・プロデュースには小生の元ネタがありまして、その時は「髪結いの亭主プロジェクト」って言ってました。

2016年にコラムで書いたものがあります。もう全掲しますね。

「髪結いの亭主プロジェクト」準備段階の様相

ヤスハラ・マーケティング・オフィスの既存主力事業はマーケティング・コンサルティングですが、こちらは家庭を組織単位とした新規事業開発の位置付けになります。どんな企業も事業の新陳代謝が必要です。それは家庭生活も同じ。全社をあげて、家族総出という意味ですが、奥様の事業立ち上げを旦那を中心にサポートします。

相方である奥様は独立したお仕事を目指して、準備期に入ってきております。いまだ何をコンセプトにするかは現在模索中ですが、まずは事前準備として大切だなあと思うところを・・・。

その1:ボディ・ケア

さて、新規事業の準備というと事業計画やら、業務スキルの習得といった感じがしますけど、小生が一押しで妻にお願いしているのが、ボディ開発。あっさり言うと体力。具体的には筋力です! 昨年の秋から彼女もテニスを週一で習い始め(小生は前から通っているので、ことあるごとに推奨してたのでした)、その効果もあってか、今年は冷え性に悩まされる頻度も激減しました。

ボディ鍛錬を新規事業の一部とするわけですから、相方のテニス・レッスンの時間を作るのは「髪結いの亭主プロジェクト」のコア業務、つまり、大切なサポートと考えております。で、父は二歳児とほぼ1日過ごすわけですな。
そんなこんなで続けていると、ななんと!、4月になって、妻はテニスだけでは足りない!と宣いまして、毎朝、小学生である上の子の登校時間と合わせ(半分見送りを兼ねて)、走ってきます。うーん、すごい、同じ人とは思えない。

小生は、ボディから立て直すというのは新しいことを始めるにあたって最も大切なことではないかと思っています。旧体制に過剰適応した自分の体をチューニングすることは、体・心・魂の順に自由度を高める第一歩ではないかと。


新しいことが新しいことである必要条件は今までの自分を捨てること、つまり、そこには自己否定があるのです。多くの人々は、心の部分(主に頭の中ですな)で新しい活動に舵を切れば新しい方向に進むと考えてたりします。しかし、舵は切れても船の本体は今までの流れに逆らえず、自分のいた元の流れに帰ってきてしまうのです。そう、過去の自分像を否定するにはエネルギーが必須なのです。体力はそのための原資だと考えています。


その2:マインド・ケア

では次に、マインド部分で髪結いの亭主のはどんなことを大切にしているかについて。まあ、いろいろあるんですが、「稼ぐ」ことを価値としない、そんな文化風土を家庭内に作っていくことです。

新規事業プロジェクトですから、最終的には収益という家計収入に貢献して欲しいという下心はあります。否定はしません。しかし、目的は稼ぐことではないのです。少々語気を強めに語ると、家族内で「稼ぐ」「稼いでいない」を価値観にするのはまったく無価値な話だと思っています。

小生は、幼少期をどっぷり高度成長期のザ・昭和の中で育っております。父は労働、母は家事、というクラシックな二分法に染まって生きてきました。その後の境遇としては、結婚が遅く、独身時代が長かったために、周囲の方々から結婚生活を破綻させるパターンを拝見せていただくことになったわけです。そして、その原因の一つが「稼ぐ」を価値として高らかに家庭内で謳うことだと確信しました。


この話を解説します。「俺が稼いでいる」「私の稼ぎでみんなは暮らしている」といった稼ぎ基準での家庭内序列発言は家族全体(発言している者も含め)の心を蝕んでしまうのです。極端な場合、稼げる人=偉い=発言権あり、稼いでない人=偉くない=発言権なし、ってな感じの家庭もあります(過去は大量にあった)。

そもそも新規事業は稼ぐ能力は低いのです。稼ぐだけなら今、稼いでる人がもっと稼ぐ算段をした方が効率的だとも言えます。ですから、「髪結いの亭主プロジェクト」では稼げないかどうかを問題にするならハナからキックオフするなよ、ということになります。

亭主も仕事を減らしてまでも相方の新規事業をサポートしようとしているには狙いがあります。もちろん、お金は新規事業が継続的に続くという意味で重要な指標です。しかし、所与の目的ではないのです。

お互い縁あって家庭を営んだ仲間(ここでは妻)が人生に意義を見つける過程、その一つが髪結いの亭主プロジェクトなのです。パートナー(ここでは夫)としてその過程に参画し、間接的に人生の意義に気づく(せめて、近づく)ことこそが目的です。まあ、簡単に言うと、「限られた人生時間の中で、夫・父、妻・母以外に何か意義深そうなことがあるか二人で探ってみよーぜ」 ってな話なんですけどね。ここが重要、お互いいつか死ぬわけです。

おまけに、当の夫・父側だって、いつかは「稼げない人」になるのです。誰もが老いていけば、稼いでない人になるのは自然の流れであり、稼げない自分を自分が作った稼ぎ基準で断罪してしまう時が必ずやってくるのです。死に際に天井を眺めながら、あーあ、言わなきゃよかった、ってなるかもしれないね。

近況報告2016、6を加筆修正

ヤスハラ・マーケティング・オフィス「リファレンス」より

 当時から、そして今も続いてますが、相方の新規の仕事をサポートすることに腐心しております。一方で、小生も次のプロジェクトとしてこの<Whole parents>を試考実験してます。仕事でも趣味でもない、それこそカテゴリー越境した活動を日常生活に組み込もうとしてます。夫婦お互いが新規事業(?)の立ち上げをしながら、それなりに相互援助をしています。
 
 この「それなりの相互援助」って何かな?、というのがこのパートナー・プロデュースの試考テーマになります。こんなところにも対称性や相補性がきっと寝てるはずなのだ。ただし、ネーミングに関しては時代的にデリケートにならねばなりません。「髪結いの亭主」という言葉は相方からはNGだったので、ジェンダーレスにしておこうと、そして、夫婦という限定感も余計なメッセージを発してしまいそうなのでパートナーなんかはどうかな、などと暫定名称にしてみました。それもあってのα版でございます。


◼️手持ちの原稿を活かす場

もう一つ、シーズン3「パートナー・プロデュース」を推し進めようという動機があります。noteの固定記事にあるように、2023年2月に改訂新版「新版 ブランディングの基本」を上梓させていただきました。改訂新版なのに前作の80%原稿を入れ替えるという荒技系の編集になっております。我ながら「よーやるよ」なのですが、それはさておき、原稿アップの段階ではもう一章部分余計にありました。残念ながらページ超過を理由にまるまる削除するに至った訳ですな。「個人ブランディング」という章題で約70ページほどありまして、バッサリするには未練もあるくらいの量です。

ここに入る予定だった「新版 ブランディングの基本」

 「これって相方サポートの一つの視点になりそうだなあ」と薄々思っておりましたので、ここで合体させて再縫合したなら、「それなり」の貢献ができるやもしれぬ。そんな淡い期待もあります。

図表62

「個人ブランディング」にあった代表的なチャートが図表61です。差別化と差積化(させきか)をセットにする見取り図です。個人のユニークさを結晶化させる過程です。
 内容はフリーランスや独立など、個人の職業が対象になってますから、ここは咀嚼して使う必要があります。パートナー・プロデュースはビジネスのような収益前提の話ではなさそうだからです。どうも、もっと大きな利益、人生に有益な活動とでもいいましょうか。いずれにせよ、使える部分は使っていきたいと思っております。


◼️パートナー生活が長くなる意味を深掘りする

 シーズン3「パートナー・プロデュース」を生活思創の俎上に上げる必然性について書きます。

 大きくは3つです。

1)新しいパートナー関係の時代へ
夫婦という単語が、家庭の分業のイメージと繋がっているのは悪いことではないでしょうけど、分業では埒が開かなくなっている感じがします。生活思創的な言い回しなら「見通しがない」のです。性差のない情報爆発社会では、すでに質問が「人としてどうなの?」的な視点まで戻らないと埒が開かなそうなのです。まずは夫婦を人に一旦、解体して試考します。

2)結婚の長期化
人生100年時代と言われて、早何年?w  柚木沙弥郎という染色芸術家がいます。最近ですが、100歳超えて自分の展覧会(回顧展じゃなく個展)に在廊(存命じゃなく在廊)するというニュースが流れてきました。その離れ業?に「マジか」と脊髄反射してしまいました。
 寿命の延伸は、結婚生活も引きずられるように長くなることを意味しています。一方で、結婚し続ける理由はあまり開発されてません。

3)職業転換が前提
 時代の変化、スキルの陳腐化は劇的に速い。思い立ってからのリスキリングぐらいでは間に合わなくなっています。「次は・・・」の煽られサイクルに巻き込まれると日々の生活が荒れてきます。明日の恐怖に今日を犠牲にする生き方になってしまいそうです。むしろ、先手をとって、次の専門性を深める習慣を常態として持つ生活に切り替えた方が、家庭全体の見通しが良くなりそう、そんな方向に向かいつつあるとは言えないでしょうか。新しい仕事の可能性を仕込むタイミングは、常に今なのです。

◼️シーズン3「パートナー・プロデュース」の見取り図


図表63


シーズン3の初回。目次としての見取り図が図表63です。

<見取り図の見方>

・表側:
個人X,Yってありますけど、夫・妻と呼んでもいいし、LGBTまで拡張して私とあなた、といった見方でもOKです。

・水平線:
時間軸です。パーソナル生活とは1人の生活の意味です。まあ、そこで別のペア生活もありますが、ここでは割愛。中央のペアX,Yの家庭生活から見ると、それぞれ個人だねっていう意味合い

ペア生活にもスタートとエンドがあります。ここでは家庭生活にしてますが、結婚開始から結婚の終わりまでがあります。エンドは離別・死別の2種類(やや表現が寂しいけど、どう組み合わせても2種)

・パートナー・プロデュース生活(黄色ゾーン)
ここが本題となるパートナー・プロデュースの場所です。個人XをYがペアとしてサポートする、個人YをXがペアとしてサポートする、旧称・髪結いの亭主の場所です。

・4隅:
パーソナル生活は大きくは2つに分けられます。ペア前の個人が「回想されるパーソナル生活」、ペア解散後(離別・死別)が「仮想されるパーソナル生活」です。

実は、この4隅がプロデュースのヒントをくれると睨んでおります。

図表64

図表64に、パーソナル生活がパートナー・プロデュースへのヒントになるように矢印を重ねています。「こういう仕事・趣味・興味だった」の回想と、「もしかしたら、こういう仕事・趣味・興味になるかも」の仮想がプロデュースの方向性を与えてくれます。

さて、ここから想定されるサポートについて項目立てしてみます。

・感情面でのサポート:新規の企画は課題だらけなので、精神的な動揺は当然のことながら大きい。パートナーならではの態度が期待できる部分

・日常での継続的サポート:プロジェクトの初期段階は普段生活での優先順位が低い。生活の中で継続的に意識を向けることができるのはパートナーならではなので、かなり重要。

・長期的な視点でのサポート:プロジェクトのその先にある、最終的に個人が人生を全うする上での満足と繋がっているのかは、直近の付き合いがあるパートナーだから探求のサポートができる

・実生活での折り合いサポート:何と言っても物理的なリソースが限られている家庭生活の中での活動になる。よって、サポート側の負担が増えることに創意工夫が必要になる

 現時点では4項目は必須だと思っています。多分、解像度が上がれば項目も増えたり、変容したりするでしょう。

多岐にわたる夫婦関係(パートナー関係)は全てがオリジナル・ケースです。なので、How系よりはWhy系に重心を置いて生活思創していければと願っております。

 夫婦関係はいろいろあるけど、「この人と一緒に過ごすことを決め、一緒に過ごし続けることにした事実がある。ならば、ここに特別な意味があると試考したら、それは何か? そこにはパートナー生活の長短は関係なく、語れそうなものがあるのではないだろうか?」ってな問いの設定です。最小単位の集団(2以上の2)が持つコラボ性っていうか、個人にできない・見えない・気づけない領域に近づく方法はすでにあるはずなので、可視化したいのです。

シーズン3が、どのくらい続くかどうかは不明。強調させていただきますけど、あくまでもα版ですw

Go with the flow.



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