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私はその後も日々の練習やレッスンに励み、たくさん考えたり悩んだりしながら、ゆっくりだけれど確実に先生との仲を深めつつありました。けれど、私は先生の心の扉の隙間を強引に開けようとしていました。私の心はまるで、穴が空いているかのにように満たされることなく、求め続け苦しくなっていきました。

先生はレッスンや演奏活動で多忙の為、プライベートでの二人の時間はほとんどなく、私は前々から寂しさと不満が募っていました。先生が行きたいと言っていた場所に私の方から誘うと忙しいと断られ、ライブに行ってもほとんど話せず、それなのに私が他の人と話していると会話に入ってきたり、そんな先生にいつしかイライラするようになっていました。

年末が近づいたある夜、私の伴奏で先生が歌を歌ってくれました。嬉しかった私は帰り際、先生に話しかけました。すると先生は、私が何を話したいのかも聞かずに勝手に話し始め、その言葉は私にとどめを刺しました。私は先生に信頼されていないと思い、先生の気持ちを考える余裕もなく、溢れる悲しみと怒りをぶつけてしまいました。

私は帰りの電車に揺られながら、先生にお別れのメールを書きました。あふれる涙がマスクに吸い込まれ濡れていきます。先生がその日歌った曲の歌詞を、私は信じたかった…  

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