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(先生はまだ来てないみたい…)

冬の昼下がり、私は一人で席に着きました。しばらくして、先生がお店に入ってきました。深い色のジャケットと私があげたアクセサリーをつけて。

「こっちの席にしない?」

私は移動して先生と隣同士で座ります。レッスンのない日に先生と会うのは初めてで、私のテンションは初めから最高潮です。先生は知り合いのライブに誘ってくれたのです。

「もう少し上手になったら、あなたの方がいい演奏するわよ」

先生はそんなことを言って、私は少しも信じなかったけれど、先生の気持ちはひしひしと伝わってくるのでした。その後お店を移動し、夕飯を食べた後、私と先生は約束の場所へと向かいました。

こじんまりと控えめなイルミネーションが見えて、私はがっかりしそうになりながらも、先生が隣にいることでテンションが下がることはありません。

「先生!写真撮ろー!」

「撮ってあげるよ」

私達はイルミネーションとお互いの写真を撮り合いました。一通り写真を撮り終え、帰る雰囲気になると、先生は何故か人気のないところでうろうろしながら話し続けます。寒いのに、手袋もせずに。

「ここで演奏したこともあるんだよ…」

私が不思議に思いながら話を聞いていると、先生はまた歩き出し、駅の方へ向かいます。すると、話し続ける先生の口調が、少しだけ怒ったようなきつい感じになったことに私は気が付きました。

「先生酔っぱらってますか?」

私はこんなことを言って、今思うとなんて鈍感なんだろうと思います。前々から、この日にチャンスがあれば告白しようと思っていたにも拘らず、あの時の私は幸せすぎて、この幸せが壊れるくらいなら告白しなくてもいいやと思ってしまいました。けれど結局、次の日に思いが溢れて、メールで告白してしまうのでした。

「先生大好きです。ごめんなさい」


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