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ついに先生とお食事の日、まずはいつも通りレッスンです。口で言えば分かるのに、先生がふいに、私の手の甲に指先で触れました。指先から先生の体温が伝わり、私はその後レッスンどころではなくなってしまったのを今でも覚えています。

「ご飯行きましょうか。お腹すいちゃった」そわそわとぎこちない様子の先生に、私はついていきます。

先生はすごくおしゃべりで、色々なことを私に聞いてきました。それも、とてもプライベートな話題。聞こうと思えばレッスンで聞けなくはないのに、先生はこれを聞きたくて私を食事に誘ったのだろうか。そして、私が聞いてもいないのに自らのプライベートな話もされました。先生は喋り続け、私は聞き役に徹します。あの時は「先生、どうしてこんな話を…?」と思っていたけれど、先生の中で何かが始まっていたようです。

「私ばっかり喋ってごめんね、またランチ行きましょう!」

レストランを出て私たちは反対の方向に別れました。先生が私の方を振り返ったような気がしました。

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