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「もう1曲何かある?」

今まで通りレッスンに通い続けていたある日、先生は終了間際にこう言ったのです。

「もう曲、ないです…それに、時間…」

私は壁に掛けてある時計を見ながら言いました。

けれど先生はその後も適当に喋り続け、時間は過ぎていきました。

私が先生に好意があるということを知っているのに、先生はどうしてこういうことをするのだろうと不思議に思いました。

それから私は先生に、あえて優しいメールを送りました。

「これ以上私に優しくするとどうなるか分かりませんよ」という警告のメールを送ったつもりでした。

これが、不器用な先生の最初のアプローチだということを、鈍感な私は気づくことができませんでした。

格好良くて憧れの先生の心の内は、とても可愛らしくて愛おしいものでした。

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