見出し画像

中年棋士が15年ぶりの大舞台へ

棋聖戦の挑戦者が山崎隆之八段に決まりました。山崎八段は私より1歳若い43歳。将棋界ではベテランと言って差し支えない年齢で、タイトル戦に登場するだけでもものすごい快挙です。

佐藤天彦九段との挑戦者決定戦は182手の死闘でした。佐藤九段も長くタイトル戦から遠ざかっていて、両対局者の絶対に負けたくないという思いが指してから伝わってきました。

私はネットで観戦しながら、団体戦に情熱を燃やした大学将棋部時代を思い出しました。私はどこにでもいるアマチュア有段者に過ぎませんが、絶対に負けたくないという気持ちで対局に臨んだことは何度もあります。2人の長い長いねじり合いは、大学将棋の団体戦を高いレベルでやっているかのようでした。

先述のように、熱戦を制したのは山崎八段でした。結果的に佐藤九段は丁寧に指しすぎたのかもしれませんが、もともとそういう棋風ですから、大一番で持ち時間が切迫しているとなると、思い切った踏み込みを見送るのは当然でしょう。勝った山崎八段の指し回しが素晴らしかったのです。

山崎八段のタイトル挑戦は15年ぶりだそうです。前回は2009年の王座戦で、このとき藤井八冠はまだ小学1年生でした。この間にAIが普及したことで、プロ棋士の戦術もずいぶん変わりました。

しかし、山崎将棋は昔と変わっていないように見受けられます(形にとらわれず薄い玉型を苦にしないあたりは、むしろ令和の将棋を先取りしていたのかもしれません)。藤井棋聖との対局も定跡形になる可能性はゼロでしょう。

独自路線を貫く同年代の中年棋士が絶対王者相手にどんな戦いを見せてくれるのか。五番勝負がとても楽しみです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?