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肉じゃがは姑に食わすな

大皿に料理が並んでいる。
稔の母:待ちくたびれたわ。さてと。
稔:……
稔の母:ママ……新潟からずっと稔のこと心配してたのよ。毎日毎日
稔:……ああ
稔の母:あ、これ肉じゃが? うわぁ濃いわね
稔:あずさんちの味なんだよ
稔の母:……
稔の母、考え込むようにたいらげて、唐揚げにも手を伸ばす。
稔の母:なるほどね。肉の下ごしらえはしている、と。
稔:……おい
あずさ、困った顔。
あずさ:すみません……。
稔の母:何? アタシが厄介な姑みたいな言いぐさね
稔:やめろって
稔の母:炊き込みご飯は?
あずさ:昨日作りました
稔の母:はぁ……これだから
稔:やめろって
稔の母:じゃあ明日はグラタンね
あずさ:あの――! お母さん。もう何日いるんです?
    てゆーか毎回毎回完食してるし。
稔の母:だって、アナタのご飯、美味しいんだも~ん!
あずさ:(呆れて)

アタシの姑は、アタシの料理にハマって、同棲している家に何日も居座っている。胃袋を掴む人を間違えたと思いながら、いびられるよりマシかとも思うし、複雑な心境だ。

稔の母こと、姑こと、アタシのご飯をこよなく愛する女性とアタシの不思議な日々が幕を開けた。





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