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個性爆発のチームBLUE、彼らの人生が私たちの心に激しく突き刺さる…★劇評★【ミュージカル=ジャージー・ボーイズ チームBLUE(2018)】

 特定のアーティストの全キャリアにわたってのヒット曲を散りばめたミュージカルとして知られる「ジュークボックス・ミュージカル」というジャンルにおいて、「マンマ・ミーア!」と並ぶ双璧のジャンル代表作とされながら、「ジヤージー・ボーイズ」が他のどの作品とも違うのは、アーティストの光だけでない影の部分が容赦なく描き込まれ、作品全体が豊かな陰影を持っていることだ。そして、それぞれのナンバーがその時々の彼らの心情を痛いほど表していること。また決して単一の視点ではなく、複数の視点で彼らの置かれた状況に迫ろうとしていることで、唯一無二の力をこの作品に与えているのだ。しかも2016年に日本人キャストで初演され数々の演劇賞を席巻、2年後の今年2018年に早くも再演されているミュージカル「ジャージー・ボーイズ」日本版は、それぞれの人物像がさらに深く物語に刻み付けられ、人生の悲哀がより色濃く、ブロードウェイ版をもしのぐ仕上がり。若手クリエイターのトップを走る俊鋭、藤田俊太郎の演出が冴えわたる作品となっている。特に「チームRED」だった前回から2人が入れ替わり、新たな色合いを見せる「チームBLUE(伊礼彼方・矢崎広・spi)」ではそれぞれの俳優の個性が爆発。困難と向き合うやるせなさと、絶頂に包まれる恍惚感を尋常ではないレベルにまとめてきている。メインボーカル、フランキー・ヴァリを両チームを通じて熱演する中川晃教の超絶技巧の歌声と共に、彼らの人生が私たちの心に激しく突き刺さる。
 ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」は9月7日~10月3日に東京・日比谷のシアタークリエで、10月8日に秋田県大館市の大館市民会館大ホールで、10月11~12日に岩手県盛岡市の岩手県民会館大ホールで、10月17~18日に名古屋市の日本特殊陶業市民会館ビレッジホールで、10月24~28日に大阪市の新歌舞伎座で、11月3~4日に福岡県久留米市の久留米シティプラザ ザ・グランドホールで、11月10~11日に横浜市の神奈川県民ホールで上演される。大館公演ではチームWHITEのみの公演、他会場ではチームBLUE、チームWHITEの公演が少なくとも1回は上演される。

★ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」公式サイト
https://www.tohostage.com/jersey/

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