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月刊イランだより(仮)〜ネット規制と経済制裁の実情〜

 イランに来て一週間が経ち、入居先が決定した。旦那はルームキーパーたちとの別れを惜しんでいた。毎日テレワーク中に部屋の掃除を頼んでいたので仲良くなったらしい。私も毎朝見送ってくれたドアマンとの別れは寂しかった。立て付けが悪くドアが開かなくなりトイレに閉じ込められたり、朝ごはんでお腹を下したりもしたが良いホテルだった。

 イランで暮らすにあたり、生活の立ち上げに必要なものは主にSIMカードの購入、VPNのダウンロード、そして銀行の開設及びデビットカードの発行である。他国の生活立ち上げと異なるのはVPNのダウンロードとデビットカードの必要性(どの国も引き落とし等に必要になるためもちろん作るが、イランでは後述の通り別の意味で必要になる。)である。
イランは政府にインターネットが規制されているため、政府の検閲によってブロックされているサイトは国内で閲覧することができない。いわゆるグローバル企業がアプリ事業を事実上展開できないようになっているため、イランではAppleのサポートも対象外となっている。つまり、App Storeも利用できない。その結果、イラン専用のアプリが数多く存在している。Irancellという会社のSIMカードをゲットしたとて、ほとんどのSNSは利用できないし、非常にネット環境が不安定で急にほぼ圏外状態になることもしばしばある。ここで必要になるのが、他国からアクセスしてるように見せかけることができるVPNである。VPNにもいろいろな種類があり、昨日まで使っていた種類のVPNが急に使えなくなるなんてことも日常茶飯事のため、探り探り「最近は〇〇VPNがいいらしい」なんて情報共有をしながら生活することになる。情報弱者は終わりである。このVPNが使えなければ正直SMSで連絡を取ることくらいしかできない。イランで連絡先を交換するときは、ラインやインスタの交換よりも電話番号の交換のが確実なのである。
 また、イランはアメリカから経済制裁を受けているため、他国からの銀行送金やクレカの利用ができない。入国の際には多額の現金(ユーロかドル)を持ち込み、イランで現地通貨イランリアルに換金しなければ、VISAやMaster cardのクレカを持っていようと一文無しなのだ。しかしクレカが使えないにも関わらず、日本なんかよりもずっとキャッシュレスが進んでいる。デビットカードのおかげである。
むしろ現金を受け付けない店も多く、入国後銀行を開設しデビットカードができるまでの間は生活必需品を買い揃えるのに苦労する。イランはこの数年で凄まじくインフレが進んでおり、ものすごく桁が大きい。900円ほどのパスタを食べるには300万円リアルが必要になる。現金で生活しようとするととんでもない札束を常に持ち歩く必要があるのだ。とてもじゃないが財布には入りきらない。デビットカードが出来るまでの間は輪ゴムに留めて封筒に入れて持ち歩く生活。世界史の教科書で見た戦後ドイツの車のトランクに給料を詰める写真の世界に来たのだ。

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