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スパイク・リーの"Do The Right Thing"をついに見たぞ。

 僕がスパイクリーの監督作品にはじめて触れたのは、2018年の『ブラック・クランズマン』だった。この作品では黒人の警察官が、自身を白人だと偽り、代役を立てて、白人至上主義者団体であるKKKに侵入するというものである。

 2018年といえば、ジョージ・フロイドが白人の警官に不当に、そして非常に残虐な方法で殺害された事件の前夜だ。

 その事件以降、BLM=ブラック・ライブズ・マターと呼ばれる運動が世界中で激化し、いろいろな事件が起きたことを今でもはっきりと覚えている。

 このような事件は決して今に始まったことではなく、アフリカ系アメリカ人に対する差別や不当な扱い、暴力などはアメリカの歴史と共に作られてきてしまったものだ。

 だから、長年の不当な扱いを告発するため、彼らは立ち上がった。


 僕が今日見た映画、『ドゥ・ザ・ライト・シング』は、スパイクリーが1989年に発表した作品だ。当時は黒人のスター、例えばエディ・マーフィーとかはいたものの、社会派映画を作るのはどうしても白人の仕事だったという。その常識を打ち破ったのがスパイクリーというわけだ。

 スパイクリーの作品は、基本的にすごく明るいものが多い。雰囲気やセリフは軽快で見ていてすごく明るい気持ちになるものだ。ブラック・カルチャーによくあるような、流れるような英語で嫌味も交えつつ笑いあうみたいなイメージ。

 しかし彼の作品はそれだけでは終わらない。あくまで社会派である彼の映画は終盤、突然牙を剥き出す

 例えば、『ドゥ・ザ・ライト・シング』では、ジョージ・フロイド事件さながらに、黒人が逮捕時に不当に殺害されてしまい、それと同時に大暴動が起こる。そして『ブラック・クランズマン』では、映画終了と同時に2017年に実際に起きた、極右集会での事件の映像が流れ、米国の分断が描かれる。

 そうやってスパイクリーが僕らに示すのは、普通の日常に潜む、迫害や差別だ。黒人も白人もアジア人もアラブ人もヒスパニックもみんながみんな、生命を謳歌しているが、特に危険に晒され、恐ろしい思いをするのは、非白人の人々である。

 しかし、スパイクリーはその暴力と迫害の後は、また平穏な日常が続くことも描く。『ドゥ・ザ・ライト・シング』でも暴動があった翌日、主人公のムーキーとティナの痴話喧嘩から物語は続いていく

 こうやって、日常に潜む暴力や迫害を描くことは僕らに気づかさせてくれるのだ。目を覚ませ、と。


 この映画は、サミュエル・L・ジャクソン演じる、ラジオDJのセリフから始まる。それは"Wake Up"という言葉、つまり、「目を覚ませ」ということだ。

 これにはいろいろな意味合いがあるのだろう。さっき言ったように日常に潜む差別や暴力に盲目的でいる人々に向けたものか、自分が受けている扱いが不当なことに気づいていない人々か。

 ともかく、僕らは目を覚まさなければならない。だって、スパイクリーが言っているんだもん!!いや、というより、僕らアジア人だってアメリカでは非白人で、被差別者だ

 

 「ドゥ・ザ・ライト・シング」という言葉、劇中でもメイヤーという人物が言っていた。日本語では「正しいことをしろ」というニュアンス。「正しいこと」とは何だろう。アメリカでは「理屈や損得ではなく、まっとうなことをする、まともじゃないことはしない」という意味合いで使うらしい。(Wiki情報)

 「正しいこと」、「まっとうなこと」と言われても、「そんなの人によって違うじゃないか」えなりかずきのような口調で言われてしまうかもしれない。そこで用いられるべき指標は、劇中でも登場した「LOVEとHATE」だと思う。愛を以て事を判断するべきだ。自分にとっての愛を守るように行動すべきだ。

 その行動というのも、人によって大きく異なる。映画のエンドロールで引用された二人の指導者の言葉、キング牧師は、暴力は人を破滅させると主張、一方でマルコムXは、自己防衛のためであれば暴力は否定されるべきではない、それは知性だと主張した。

 どちらが正しいとかじゃない、どちらを信じるかだと思う。

 どっちにせよ、僕らは愛を守るために動くべきだ、考えるべきだ、生きるべきだ。


 そしてこの映画では"FIGHT THE POWER"という言葉が繰り返し使われていた。つまり「大きな力と戦え」ということ。それはつまり、この映画ではミクロのレベルでいうと、兄弟間の確執であったり、マクロのレベルでいうと、警察や政府による抑圧への反逆であったり。

 力と戦いつつ、正しいことをする、難しいが無理な話ではない。

 力はいつだって弱いものを押さえつけ、辱める。

 スパイクリーの映画を見ると、強い力がみなぎってくる。だからこそ、こうやって広く支持されているのだろう。スパイクリーは最高だ。

 また明日!


 DO THE RIGHT THING

小金持ちの皆さん!恵んで恵んで!