介護施設『家族の家ひまわり』などを首都圏近郊で運営する株式会社三英堂商事（本社：東京都渋谷区、代表：上村岩男氏）で勤務するケアマネージャーのＹさん（50代男性）が総合サポートユニオンに入って約4か月。

　ユニオンからの申し入れを無視し続けていた会社との団体交渉がやっとスタートしました。

　今回の記事は、11月27日に開催された団体交渉の様子です。

　私たちが求めているのは、三英堂が運営する事業所で行われ続けてきた、利用者の権利を侵害する「不適切な介護」の是正と、「違法な労働環境」の改善です。

・申し入れに至る経緯はこちらをお読みください。
　不適切な介護はやめてほしい　㈱三英堂商事にケアマネが申し入れ
　https://note.com/sguion/n/na835e91c3146

○交渉冒頭から異常な態度を見せる三英堂商事・・・
　三英堂商事との初の団体交渉では、労働組合法が使用者に課している誠実に団体交渉に応じる義務を会社が破る場面が繰り返されました。
　交渉の冒頭で、会社はYさんが施設に不法侵入したことを警察に相談したと、脅しのようなことを言い始めました。不適切な運営の事実確認の為にYさんが以前配属されていた他事業所を訪れた事に関しては不法侵入だとの認識で、三英堂は警察署へわざわざ相談したのだそうです。
　会社が不法侵入と言っていた日にYさんが施設を訪れたことはありましたが、しっかり管理者の許可を得てからでした。
　しかも会社は、警察にばかり相談して、Yさんに事実確認をすることは交渉当日まで一度もありませんでした。　

　ユニオン側が、「警察へ行く前に、先ずはYさん本人から事情を聞いたりしないのですか？いきなり警察へ行くのは、企業の対応としておかしくないですか？」というと、三英堂の担当者は話を頭から戻し「不適切な運営の事実の証明がなければ回答しない」との回答をしているとまともに答えません。

　この様な不毛なやり取りの繰り返しを1時間近くされ、ユニオン側は何度も「会社側には労働組合の要求に対して、誠実に回答する法定義務があり、回答しないのは不誠実団交で、違法だ」という事を三英堂側に伝えましたが、全く理解する気が無い様子でした。ユニオンは三英堂のこの不誠実な対応に強く抗議しました。

　総合サポートユニオンからは、ケアマネジャーや社会福祉士など、様々な企業の介護施設で働くメンバーによる「介護チーム」が団体交渉に参加し、会社側に違法な介護施設運営の改善を求めるよていでしたが、三英堂商事側はユニオンとまともに交渉する態度をみせず、介護系の法律等の細部までには時間が足りず、多くの諸問題は次回へ持ち越しとなってしまいました。

〇三英堂商事が4か月にわたり違法に回答拒否をしてきた驚きの理由・・・
　ユニオンは9月14日の段階で会社に対する要求事項をまとめ、2週間後までに書面回答することを求めました。要求事項は、違法なケアプランの作成や虐待の扱いなど、すぐに対応すべき内容も多く含まれていました。
　ところが会社は団体交渉当日に至るまで書面回答を拒否し続けていたのです。

　労働組合法は、団体交渉に誠実に応じる義務を会社に課しており、要求書に書面回答することもその一環で、回答すら拒否することは明白な労働組合法違反となってしまうため、回答すら拒否する会社はごく稀です。

　ユニオンは三英堂商事に対し、９月23日、10月３日・12日・30日、11月7日・14日・24日の7回にわたり、会社に抗議し、書面回答をすること、書面回答しない場合にはその理由を説明することを求めていましたが、すべて無視です。

　団交の席上で書面回答しなかった理由をユニオンが尋ねると、「不適切な運営の事実の証明がなければ回答しない」といいます。
　そういう理由があるのならなぜ8回も回答拒否の理由を説明するよう求めてもしなかったのかわかりませんし、組合の要求には、就業規則の写しの提出や賃金を挙げるようにという内容もありましたので、ますます会社の主張は不可解です。

○それ以外のことについてもほぼ無回答でした。
　時間がなくなってしまった為、取り急ぎ、以前にユニオンからの要求書に記した「不正請求」「虐待や拘束」「研修や各種委員会の不開催」などについてを議題に挙げ、回答を求めましたが、三英堂側は殆ど無回答でした。

　また、ユニオンからの要求書（虐待や不正請求についての内容）への返答に「貴組合からの指摘事項に係る具体的な証拠等があるのであれば、弊社の業務に係る監督官庁等に通報をお願い申し上げます。弊社は、監督官庁からの調査・行政指導・行政処分には、従う義務がありますので、監督官庁に、説明・弁明等の義務を遂行します。」とあった事にも触れ、その企業体質の改善を求めました。

　三英堂の主張を要約すると「虐待や不正請求があるのなら、証拠を持って役所に通報すればいい。三英堂は役所からの指示には従う」という事です。これをシルバー事業部（介護施設部門）の部長が我々に言ったのです。

　ですからユニオンは、「虐待や不正請求の疑いがあれば、先ず、社内で聞き取り調査や事実確認をするのが普通ですよ。三英堂は調査も何もしないつもりなのですか？介護施設なのですから、そういった姿勢は改めて下さい。」との旨を伝達し、企業体質の改善を促しました。

○11月27日に行われた団体交渉の主な内容

①　夏季賞与を支払って頂く事になりました。
　三英堂はこれまで、休職中のYさんの夏季賞与の支払いを断固として拒否してきましたが、就業規則にある賞与支給の規定に従って支払う必要がある事をユニオン側が伝えると、それに納得し、夏季賞与の支払いが確定しました。（三英堂からの度重なる違法行為の強要による心的疲労から、Yさんは今年の5月から休職を余儀なくされている状況です。）

② Yさんの復職に向け、話し合いました。
　今後はコンプライアンスが守られている事業所へ移動するといった案や、Yさんが以前に受けた退職勧奨についてを話し合いました。退職勧奨に関しては、会社からの詳しい説明を求めました。

③ ユニオンが9月14日に送付した書面対して、12月8日迄に回答を頂けるよう、要望しました。

◯Yさんからのメッセージ
〜ユニオンの皆さんへ・そして三英堂商事家族の家ひまわりで働くケアワーカーの皆さんへ。

せっかくの機会だし、以前から訊きたかったある質問を団交の最後に三英堂商事役員の面々にぶつけてみました。

上村岩男（かみむら・いわお）社長は介護の資格、例えば初任者研修などはお持ちですか？ それと、介護現場の実務経験はおありなんですかね？

答えは「ない」と言うことでした。

私は、腑に落ちたような気がしました。

社長、あなたは家に帰りたくて夜中に泣いてる認知症の人に適切な対応ができますか？
眼球以外が一切動かない重度ALS（筋萎縮性側索硬化症）の人と文字盤で話しながら、全身更衣をして喜んでいただくことができますか？

介護の現場を運営しているのはケアワーカーであり、初期から必死に支援する相談員やケアマネジャーです。あなたや役員じゃありません。

福祉について体系的に少しでも学んでいたら、介護現場の末端で1ヶ月でも働いていたら、こんな異常な運営は恥ずかしくてできません。

今回の団交ではいくつか収穫もありました。
特に夏季賞与支払いの確約を勝ち取れたのは、まず大きな一歩です。
4ヶ月もの間、私が個人で会社に重ねて訴えてきても変わらなかった決定が、団交という手段でなら数分で解決できました。
これは総合サポートユニオンという極めて強い組合で闘えてこその結果です。
ユニオンでご支援いただいている皆さんに深く感謝いたします。

次回団体交渉は12月20日（水）13:00です。引き続き様々な形でのサポートを心からお願いいたします。

最後に、現在も三英堂商事の運営する“家族の家ひまわり”などの介護事業所で働く職員の皆様へ。

　お仕事毎日お疲れ様です。
　事務所で作業している私のところに毎日やってきては愚痴を言ったり泣いたり激昂したりしていた皆さん、お元気ですか？
　「気持ちはわかるけどさ、こんなとこで言ってもなーんも変わんないよ？ちゃんと俺と一緒に管理者や会社に言おうよ。俺も言ってるからさ」
　私がずっと皆さんにそう言ってきたの覚えてますよね？

　こうしてユニオンに参加したら、これだけ改善要求ができるんですよ。
　あのシルバー事業部長が俯いて30秒黙り込むくらいに、労使が対等に渡り合えるんです。

　総合サポートユニオンで我々と一緒に闘いましょう。今まで納得できなかったことを、全部一緒に三英堂商事へ突きつけましょう。

　入居者への虐待や不当な身体拘束、運営基準や職業倫理に反する実態を変えていきましょう。
　福祉従事者としてのあなたにまだ残っている筈のプライドに、それ以前に人間としての倫理に、私はまだ期待しています。

　総合サポートユニオンへの連絡先を下に掲載しています。待ってます。

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