「対談《熊野》太平記」 神坂次郎 梅原猛

梅原猛さんは、中上健次さんとの対談もあった気がします。熊野を好きな人ですね。歴史学的な文脈の中では批判されることも多い人物ですが、土地に対する感性というのは独特のものがあり、私は好きです。

本書では、「太平記」というくらいですから、中世を中心に、海も森もどこか暗い色をしている熊野の地の伝承について語っています。わかりやすいのは、「ブラタモリ」でも触れられていた補陀落渡海あたりでしょうか。釘で打ち付けられて閉じ込められて出航するんだそうです。

他にも火祭りの起源が中世にあることに触れつつ、火の祭祀というのが縄文から続く非常に大事なものであるという話をされていたりもします。

私がこの本で一番好きなのは、「山川草木悉皆化物」というフレーズです。本来、「山川草木悉皆仏」ですね。それが熊野では「化物」になる。この表現は外部にありながら熊野に縁の深い私にはしっくり来ています。今また、アニミズムというものに取り組みはじめている私にとって、自分の原点にあるものを思い出させたもらった感じがしました。

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