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財金委:大臣所信に対する質疑(野田佳彦2019/02/19)

所信に対する質疑(衆議院財務金融委員会) ※要旨

【統計不正問題】
○野田佳彦委員 2010年1月、欧州委員会がギリシャの統計の不備を指摘し、たちまち欧州債務危機になっていった。統計に問題がある、信用できないということは、亡国の道につながりかねない。
 基幹統計の4割が統計法違反の疑いや不適切だという状況であり、相当危機感を持って信頼回復に向けて努力をしなければいけない。大臣の危機感と決意を伺いたい。
○麻生太郎財務大臣 信頼できる統計をきちんと出している国、出していない国というのは、いろいろ我々から見ていると「その数字、本当か」という感じはあるのは事実だが、日本はそういう中においては間違いなく「大丈夫」と言われているほうに属していたことははっきりしている。
 今回のことは、多額のものを隠していたとか、そういう感じのものとは少々違うような気がするが、かなり長期間にわたって知っていながら継続したことが極めて問題で、「前のやつがやっていた」という安易な気持ちもあったかもしれないが、それが十何年間発見できていないことが問題だ。
 こういったものが積み重なると信頼性を欠き「なんだ、日本もか」となりかねない。今回の話は極めて深刻に受けとめている。
○野田佳彦委員 毎月勤労統計も15年続いてきたわけで、私の政権のときもそうだ。「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱られそうな気がする。心してやっていかなければいけない。
 今回、財務省でも法人企業統計調査で不適切調査が行われた。なぜこんなことが起こったのか、どうやって改善していくのか。財務省は、特に数字では、不正でなくともミスも許されない役所だ。
○麻生太郎財務大臣 法人企業統計調査については、点検作業を行った結果、調査方法や既に公表しているデータ自体には問題がないことは確認されたが、年次調査のデータの一部について掲載漏れがあると報告を受けている。
 具体的には、損害保険業に関するデータのうち、平成20年から29年度までの配当率・配当性向・内部留保率が掲載漏れとなっていた。同じ保険業に分類される生命保険業と損害保険業との間で公表ルールが異なっていたことが掲載漏れの一因となったと考えられる。配当金・資本金・当期純利益などもきちんと出ているが、それを割って載せる作業が抜けていたということだと思っている。
 現在、統計委員会で点検・検証部会が設置され再発防止等を目指して検証を行う。
 この点については掲載漏れで、隠したわけではない。ミスという指摘は正しいと思うので、きちんと対応したい。

【日本経済の現状】
○野田佳彦委員 大臣所信に対して質問したい。
 まず、違和感を覚えたのが、「日本経済につきましては、企業部門の改善が家計部門に広がり、好循環が進展する」。進展しているのか。そうではないのではないか。
 「今回の景気回復期間は、本年1月時点で戦後最長」。確かにそのとおりだが、最近の世論調査では、日経新聞、実感せず78%、実感している16%。NHK、実感していない66%、どちらともいえない20%、実感している8%。朝日、実感はない78%、実感がある16%、その他6%。圧倒的多くの国民が実感していないと答えているにもかかわらず「企業部門の改善が家計部門に広がり、好循環が進展する」と言い切ってしまっているのは、問題を認識してないのではないか。
 企業部門の改善はいろいろな数字で出てきており、内部留保は随分たまっているが、家計部門にまで浸透していないという現実を踏まえてこれからどうするかというのが大臣の役割だ。この点についてお尋ねしたい。
○麻生太郎財務大臣 さまざまな世論調査がある。平成30年の内閣府調査では、「現在の生活に満足」の割合が過去最高の74.7%。多くの方々に景気の回復を感じていただいているのではないか。
 企業収益は改善しており、国民生活にとって大変身近な雇用環境が大きく改善した。2012年から2018年までの6年間で就業者数が380万ふえ、就職が一番問題になったときは0.82だが今は1.6。有効求人倍率が非常に大きくふえた。また、連合の調査では5年連続で今世紀に入って最高水準の賃金アップが実現となっている。中小企業の賃金アップも過去20年で最高という数字だ。総雇用者所得では名目・実績ともに増加が続いている。そういった意味で、経済の好循環が少なくとも国民に実感されつつある。
 その上で、先ほど他委員から名目賃金・実質賃金の話が出ていたが、給料が上がったことより物価の上昇率が高く、いわゆる実質賃金等々の話についてはさらに進めていく必要があろうかと思うが、総じて、6年前もしくはバブルがはじけた後の時代に比べて今の方々のほうがそういったものを実感していただいているのではないか。
○野田佳彦委員 景気実感の数字は先ほどの世論調査の結果に如実に表れている。家計部門に好循環が云々というのは、そうありたいと思っているが、残念ながらトリクルダウンが起こっていないのが現実で、それをどうするかというところからこれからの本当の正しい政策が生まれてくるはずだ。問題認識がちゃんとできてないと問題解決できないので、先ほどの世論調査はやはり厳しく受けとめてほしい。好循環というのは、ファクトではなく政府の願望だ。
 先ほど日銀の総裁が来られていたが、最近、日銀の展望レポートは誰も信用しなくなっているので「願望レポート」と言われている。同じようなことを政府がやってはいけないので、その辺は厳しい認識をしてほしい。

【消費税増税対策】
○野田佳彦委員 「低所得者への配慮として軽減税率制度を実施し」と。低所得者も軽減税率の恩恵は受けるが、より所得の多い人のほうが恩恵を受け、実効性ある対策ではないと何度も指摘し再考を求めてきたが、説得力のある反論を聞いた記憶がない。きょうはぜひお示しいただきたい。
○麻生太郎財務大臣 前内閣の時代から給付付き税額控除等々いろいろお話があったのはよく存じているが、少なくともこの軽減税率等々は、全ての方々が毎日購入する飲食料品などの税率を8%に据え置くことで痛税感の緩和が実感できるのではないか。片一方は10、片一方は8で、明らかにそこのところは違う。また、低所得者の方々ほど税負担の中で消費税の負担の割合が高いという、いわゆる逆進性が緩和できるという利点もある。いわゆる消費支出の割合が高い低所得者の方々のほうが高所得者の方々より大きく引き下げることができるので、消費支出の逆進性の緩和につながるものと考えている。いろいろ試行錯誤の結果、この結論に至っている。
 一方、給付付き税額控除は所得が低い方に焦点を絞っているので、その意味で支援ができるという利点があることは間違いないが、消費税そのものの負担が直接軽減されるわけではなく、消費者にとって痛税感の緩和を実感できることにはつながらない。
 それから、マイナンバーとか今いろいろ話題の話があるが、マイナンバー、マイカードが仮にすんなりできたとして、所得とか資産の把握といった問題を確実に把握できるかという点についてはいろいろ問題がある。
 消費税引き上げに伴う低所得者への配慮に関して、比較をさせていただくといろいろな意見が出てくるのは十分承知しているが、その中の一つとして最終的に軽減税率を選ばせていただいた。
○野田佳彦委員 そのすぐ後に、「需要変動を平準化するための十分な支援策」と。要はポイント還元とか住宅ローン減税とか国土強靭化とか、いろいろあるが、総理は「十分」ではなく「十二分」と言っている。正しい表現としては今回は「十二分」だ。入ってくる税収は消費税を上げても2兆円弱だが、消費税増税対策と称するものを全部合わせると2兆円を超える。
 「十分」というのは、まさに条件を満たして不足がないこと、水がめにちょうど水がいっぱいたまったところ。今回は、たっぷんたっぷんであふれる。これは「十二分」という総理の表現のほうが正しいが、「十二分」というのはやはりばらまきだ。そこをちゃんと精査するのが財務大臣の仕事ではないか。
 去年の臨時国会で、やはり大臣所信に「十分」という言葉が書いてあり、十分な支援ではなくて必要な支援にしたほうがいい、よく精査をしたほうがいいという趣旨の質問をした。そのとき大臣は、「いろいろな人がいろいろなこと言ってる」「経産省関係の方が特に多い」とした上で、「しっかりと対応していく」というお答えをされた。まさに十分ではなくて必要な支援策を本当に有効な施策に絞ってやるのだろうと思ったら、全部認めてしまい、結局「十二分」になってしまったのではないか。ばらまきになってしまっているように思うが、大臣のお考えをお尋ねしたい。
○麻生太郎財務大臣 前回5から8に3%引き上げたときの起きた反動減、またその前の駆け込み需要等々、大きなゆがみが起きたことを最大の反省点として、今回これを踏まえた上でやらねばならない。
 影響を乗り越えるのに十分以上に、十二分にやらねばならならない。前回のあの影響は余りにも大き過ぎたのではないかという気持ちが非常に強いのは確かだが、反動減や駆け込み需要は景気の回復を削ぐことになりかねないので、消費税引き上げによる経済への影響、景気への影響というものをきっちり抑えるということで、総動員して対応せねばならない。
 行き過ぎている、十分過ぎ、水がめのあふれるほどになっているという指摘も理解できないわけではないが、しかし今回、景気を腰折れさせることだけはできんという思いが非常にあり、こういった形にさせていただいた。
○野田佳彦委員 少なくともポイント還元は、本当に愚策中の愚策なので撤回すべきだ。しかも追加予算が必要になるかもしれないとの話も出ている。歯どめがきかなくなることを懸念していることだけは申し上げたい。

【過去最大規模予算案】
○野田佳彦委員 財政審が去年11月に「平成31年度予算の編成等に関する建議」を財務大臣に提出し、その中では平成を「受益の拡大と負担の軽減・先送りを求めるフリーライダーの圧力に税財政運営が抗いきれなかった時代」と厳しい総括をした上で、「平成という時代における過ちを二度と繰り返してはならない」「新時代の幕開けにふさわしいものになることを期待したい」と。
 ところが101兆5000億という、100兆円を超える大台の予算に膨らんでしまっている。これは到底、あの財政審の建議の期待に応える内容ではないと思うが、大臣のお立場としてはどうなのか。胸を張って財政審の建議に応えていると言えるのか。
○麻生太郎財務大臣 日本にとって中長期的には最大の問題である少子高齢化という社会的現実を見回したときに、何としてもこれを全世代型の社会保障制度への転換に向けて消費税の増収分を活用した社会保障を確実に実行するという上で、前回の消費税引き上げの経験を踏まえていわゆる経済の影響を平準化させるということで臨時特別の措置を時限的に講じることなど、現下の重要課題に的確に対応するための経費を積み上げた結果、約1兆5000億となった。
 財政審の建議においても「引上げ前後の消費を平準化する等、経済への影響を緩和するために万全を期す必要がある」と言及されており、今回の臨時特別の措置は経済の影響をしっかり平準化するために必要なものだと考えている。
 同時に、31年度予算では歳出改革の取り組みの継続と同時に、景気の回復を背景に税収が過去最高の62兆5000億円を見込んでいるので、新規国債発行額も前年当初予算と比較してトータルで12兆円少なくする財政健全化も着実に進めている。
 確かに予算額101兆というのは3桁の大台に乗っているが、内容面においては財政健全化を進めていくことで引き続き経済再生を図りながら歳出・歳入の改革を行い、財政審の建議の趣旨に沿うような形のものにしていかねばならないと思っている。
○野田佳彦委員 「臨時特別の措置」が臨時特別措置で終わらないのではないかという懸念を持っている。また、「新経済・財政再生計画に沿った歳出改革の取り組みを継続」について、何か新たな取り組みをしっかりやっているのか、歳出の上限は6年連続で決めなかったことについて話を聞こうと思ったが、時間の関係上飛ばして、「新規国債発行額は安倍内閣発足以来7年連続で縮減」のところだけ質問したい。
 まず、「安倍内閣発足以来7年連続」という言い方には作為を感じる。新規国債発行額の縮減は9年連続ではないか。2011年・2012年、私は財務大臣・総理大臣だったが、新規国債発行の減額はやっている。なぜ安倍政権だけ努力しているように見せるのか。「悪夢の政権」だと言われるかもしれないが、継続して頑張っていることもあるので、そこはうまくちゃんと書いてほしい。
 これは安倍内閣発足以来でいえば7年連続は間違いないが、例えば昨年度・平成30年度は補正予算で追加で新規国債発行しており、平成29年度より新規国債発行額はふえている。この書き方からは見えないが、そこは事実関係として押さえておかなければいけないのではないか。
○麻生太郎財務大臣 ご指摘のとおり、当初予算における新規国債発行額は政権交代前の平成23年度から9年連続縮減しているのは事実だ。そのことを否定したことは一回もない。
 その上で、ご指摘のあった平成30年度の2次補正後の発行予算は35兆4000億であり、平成29年度の国債発行額の決算額33兆6000億を1兆8000億上回っているのは事実だ。したがって、この7年の間で、当初予算だと6年連続ということになるが、決算・補正後を見ると2回上回っている。4勝2敗ということになろうかと思うが、事実として隠しているつもりもなく、おっしゃることを否定するつもりはない。
 当初予算ベースで財政指標の推移を論じることが大事だ。他方で、財政健全化の進捗度合いについては決算を反映した国民経済計算ベースで検証していくことが極めて重要だと思っている。
 こういった形で、金利もあるので全体を即マイナスというわけではないが、新規の国債発行に関しては少なくともきちんとした形でやらねばならならない、いわゆるベースを2025年度までにきちんとさせねばならないという思いでやっている。そういった目標を持って今後とも、こういったものは緩めると途端に話が込み入るので、そういった意味ではきちんとしたものでやらないといけない。財務省としてはちょっと緩めたような話をするとすぐいろいろなところからいろいろな話が舞い込んでくるので、必要以上に厳しいことを言うつもりもないが、はっきり申し上げて財政が緩いわけではなく、極めて厳しい情勢にあることを大前提にして財政運営をやらなければならないと思っている。

(以上)

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