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財金委:2019年度税制改正・所得税 質疑(野田佳彦2019/2/26)

2019年度税制改正に関する質疑(衆議院財務金融委員会) ※要旨
 所得税法等の一部を改正する法律案

【軽減税率の財源】
○野田佳彦委員 きょうは消費税を中心とした質問をさせていただきたい。
 消費税に逆進性があることは事実であり、その対策は講じなければいけないという認識は共有するが、3党合意にもあるとおり、基本的には低所得者に絞った対策を講じるならばマイナンバー制度の定着を待って給付付き税額控除を導入するのが一番効果がある。今回は軽減税率で対応しようということだが、問題は財源をどうするか。歳出の部分と歳入の部分で1.1兆円を充てていくというザクッとしたお話があったが、その内訳を正確にご説明いただきたい。
○星野次彦財務省主税局長 軽減税率の減収見込み額1兆890億円程度に対応する財源は、個人所得課税の見直し900億円程度、たばこ税の見直し2360億円程度、インボイス制度の導入2480億円程度、これまでの社会保障の見直しの効果の一部の活用1070億円程度、総合合算制度の見送り4000億円程度、これらを合計すると1兆810億円程度になる。
○野田佳彦委員 総合合算制度が見送りになったことはまことに残念だ。どなたでも事故に遭ったり病気になったり、突然そうなったときに、医療もかかる、介護もかかる。一定の自己負担がそれぞれあるが、そこで全部合わせると低所得者にとっては大変な額になるからキャップをつけていこうというのは、まさにあるべき社会保障制度だと私は思う。それを見送ってしまったのは残念だ。
 インボイスで2480億円が加わるということだが、インボイス導入によって、どれだけ免税事業者から課税事業者になるのか。
○麻生太郎財務大臣 置かれている状況はいろいろだと思うので一概に申し上げることは困難だが、インボイス制度の導入により増収を見込むに当たり、平成27年度の国勢調査で免税事業者数が約488万者、そこから農協等に出荷している農林水産業者や非課税売り上げが主たる事業の事業者等々を除いた免税事業者372万者程度に対し、BtoBの取引の割合である大体4割程度を乗じて、161万者程度が課税事業者に転換していくのではないかという計算になっている。
○野田佳彦委員 その計算の妥当性も、インボイスの導入は平成35年10月、その間どれぐらいが課税事業者になるかなども含めて、よく調べた上で数字を弾いたほういい。軽減税率の財源がないから慌てて今回は入れ込んでいるような気がしてならない。
 これは大臣に通告していないが、せっかく主税局長がいるからお聞きしたい。先ほど軽減税率の財源1.1兆円の内訳をお話しいただいたが、個人の所得課税の見直しは国税ベースだと平成32年度から。地方税も先だ。インボイスは平成35年からだ。財源なくして政策なしだと私は思うが、10月1日スタートの軽減税率の財源になっていない。1兆円のうち、少なくともインボイスの2480億円と個人所得税の見直し数百億円の3千数百億円はタイムラグがある。その間、社会保障に穴が出るのか、財政の健全化が遅れるのか。この財源の手当は責任ある態度ではないと思うが。
○星野次彦財務省主税局長 今回、軽減税率の導入に当たり、その財源を確保するということで、消費税法の附則で要求されているのは社会保障制度の安定化、財政の健全化、こういったことを考えた上で、法制上の措置を講ずることによって安定的な恒久財源を確保することが要請されている。この法律の条文の趣旨にのっとり、今年度・30年度末までの対応として、制度的な措置をとることにより恒久的な財源を確保した。
 ご指摘のとおり、この中に含まれている各項目、例えば個人所得課税の見直しは平成32年1月から、最後に実施されるインボイス制度は平成35年10月、確かに制度的な対応等の効果が全て実現するまでには一定の期間を要するが、制度的な恒久的な対応をするという法律の趣旨自体には適っていると考えている。
 この間の財源については、歳出等々、毎年の予算の中で努力をしていくということだが、制度的に軽減税率制度を導入することによって必要となる1.1兆円の財源、これを制度的に対応することが法律の眼目だということで対応している。
○野田佳彦委員 もともと軽減税率は再考すべきであるという立場だが、今の財源の話を聞いていても、ストンと納得のできる話ではない。

【複数税率問題】
○野田佳彦委員 次に、軽減税率で酒類と外食を除く飲食料品と定期購読の新聞代は8%。チェーン店でカードを使って買う場合2ポイント、いわゆる個人経営のような中小の小売店でカードを使って買う場合5ポイントの還元が出てくる。結果的に、実質の消費税率は10%・8%・6%・5%・3%と併存する。こんなにわけのわからない複数税率が突然登場すると事業者も消費者も大変だ。この混乱をどう回避するのか。総理はポスターを張ったりとか何とか言っていたが、ポスターぐらいでこの5段階の複数税率の混乱を避けることはできないと思う。
○麻生太郎財務大臣 ご指摘のとおり、軽減税率とポイント還元制度は、いわゆる消費税の逆進性の緩和と需要の平準化という異なった政策目的を持つものであることははっきりしているが、消費税率引き上げに伴う対応という点で両者ともにわかりやすく国民に理解を得ながら実施していくことが重要で、これは野田先生と私は同じ意見だ。
 そのため、税率を10%・8%と2段階に設定し、酒・外食等々を除く通常の食料品を全て軽減税率に、これは食料品の中でもキャビアなどと一緒にするのかとかいろいろご意見はあったが、可能な限り簡素に取り組んだ。
 また、具体的な事例を紹介したQアンドAをつくり、これまで全国で5万回ぐらい事業者向け説明会を実施するなど取り組みを行っている。それで事業者が全て理解できていると言うほど自信があるわけではないが、引き続き事業者に説明を実施していく必要があろうと思う。
 ポイント還元については、誰でも利用できるプリペイドカードなど、クレジットカード以外にも多様な選択肢を用意すると同時に、経済産業省において還元方法や還元率をわかりやすく店頭で掲示してもらうなどの取り組みを実施していくと思うが、「これで全てわかるか」「小さな店でそんなことできるか」という点は私も疑問が決してないわけではないので、そういったものを引き続き丁寧に実施していくということだと思っている。
 こうした取り組みを実施することで消費税引上げ関連の各施策の周知徹底を図り、引き上げ前後で事業者の間に混乱が生じないように、きめ細かく関係省庁と連携をとって引き続きやっていかなければいけないと思っている。
 いずれにしても、いろいろなところで細かいことが起きることは決して想像にかたくないが、それが大混乱になるような形は断固避けなければいけない。ヨーロッパ各地で何年間かにわたって実施した結果それなりに定着した制度でもあるので、私どもとしてもこの制度が実施できればと思っているところだ。
○野田佳彦委員 冒頭、大臣は異なる目的が云々という話から入ったが、そこに全て尽きると思う。軽減税率は低所得者対策、逆進性対策だ。それに加えて、キャッシュレスの推進、需要の平準化、中小企業対策、いろいろな政策目的がポイント還元という一つの政策の中に盛り込まれ過ぎているから、こんなに複雑で混乱を呼びかねない状況を生み出している。キャッシュレス推進だったらキャッシュレス推進、中小企業対策だったら中小企業対策で別立てで予算を組んで政策をつくるべきであるのに、この消費税に絡めてやってしまうから、こんな混乱を招きかねない5段階の複数税率が併存する状況を惹起してしまう。だから、私はこれは愚策だと思う。そういうことはたぶん本音の部分では共有できるのではないか。
 このポイント還元は逆進性を助長するだろうと私は本会議でも申し上げた。普通カードを持っていない人たち、子どもたちが学用品を買いに行くと、年金暮らしのお年寄りが介護用品とか日用品を買いに行くと、現金だから税率は10%。一方でカードを普段使い慣れているお金持ちが個人営業の店でキャビアを買う、高級和牛を買う、高級マグロを買うと、軽減税率8%とポイント還元5ポイントで3%だ。逆進性を助長する、ひどい不公平ではないか。
 5段階という複数税率で税制の「簡素」という理念が壊れ、加えて「中立」「公正」という税制のあるべき姿も壊していると思うが、大臣のご見解をお伺いしたい。
○麻生太郎財務大臣 与信審査がなく誰でも簡単に購入できるプリペイドカードなど多様な選択肢を用意した。クレジットカードを持たない方々も含めて幅広い消費者がメリットを受けられるようにするものだ。
 ポイント還元によって、中小・小規模事業者がこういったシステムやら何やらをそれなりに受け入れられるような形になっていくのであれば、慣れるのに時間がかかると思うが、そういったもので売り上げが伸びるとか、また従業員の人々のいわゆる時間等々が削減されるので、そういった意味ではいわゆる所得が拡大するような波及効果がそこそこあるのではないかと思っている。
 いずれにしても、消費税引き上げに際して、軽減税率制度の実施、年金生活者支援給付金の支給、介護保険の軽減などいろいろな拡充のほか、特別臨時の措置の一つとしてプレミアム商品券など、少なくとも低所得者などの引き上げの影響を受けやすい方々に対応するためにいろいろ考えた結果が今回のことになっている。結果としてえらく複雑なことになっているという一面は確かだろうと思うが、低所得者等々に対応するためにいろいろ考えた結果だという面もご理解いただきたい。
○野田佳彦委員 ものすごく苦しい答弁をされているが、私が聞いたのは、逆進性を助長するということだ。

【キャッシュレス決済/プリペイドカード】
○野田佳彦委員 それに対して、プリペイドカードとかを用意して、希望すればそういうカードを持てるという政策を推進するということだが、これは誰でもそのプリペイドカードを持てるのか。子どもだろうが、いろいろな要件関係なく。
 だとすると、これは経産省に聞きたいが、どれぐらいのキャッシュレス化を目標にしているのか。先ほど私の前の質疑者の答弁で、2027年でキャッシュレス化40%を目指していると言っていたが、今回のポイント還元はオリンピックの前までだ。オリンピック前、2020年までにキャッシュレス化はどれぐらいを目指しているのか。
 プリペイドカードをどんどん発行して、みんながプリペイドカードでどんどん買い物すると、これ増税ではなくてみんな減税になる。プリペイドカードの制度設計の話をよく聞かせていただきたい。
○藤木俊光経産省大臣官房審議官(商務・サービス担当) 一般に後払いのクレジットカードに関しては所得や職業といったいわゆる信用をチェックした上で発行する手続が行われているが、プリペイドカードは、これは種類にもよるが、基本的には消費者の方が先にチャージをして使うということで、いわゆる信用調査がないという意味においては、低所得者、高齢者、あるいは今ご指摘の若年者の方であっても、発行がより幅広く可能なものであると理解している。
 キャッシュレスに関しての目標は、「未来投資戦略2017」の中で2020年代半ばまでに現在20%程度のキャッシュレス決済比率を40%程度に引き上げることを目指して施策を行っている。その途中段階の数字に関しては、私ども定量的な目標を持っているわけではない。
○野田佳彦委員 子どもだろうが若者だろうがお年寄りだろうが、プリペイドカード欲しいと言ったら、それは用意するわけで、それがどんどん使えるようになったらキャッシュレス化は進むのではないか。そうすると、これは後で聞こうと思ったが、予算が足りなくなるのではないか。その辺はよく考えているのか。何か困ったことを突きつけられると安易に答弁するが、全体としての整合性が全くない。キャッシュレスと消費税は絡めるべきではないと思う。
○藤木俊光経産省大臣官房審議官(商務・サービス担当) プリペイドカードに関しては発行時点のバリアが低いということで、活用される方がふえることはあり得ると思っている。ただ、一方で足元、残念ながらプリペイド、クレジット、全てを含めて約20%程度のキャッシュレス決済比率なので、これがそう簡単に100%になることはなかなか想定しがたいのではないか。
 その上で、予算だが、もちろん予算の計上に当たってはこういった現状のキャッシュレス決済の動向も踏まえながら、またいろいろ事業者の方からのヒアリングもしながら、事業をするに当たって十分と考えられる予算を措置したと考えている。
 ただ、おっしゃるように、これは今後消費者の方がどれくらい使われるか、あるいは中小の方がどれくらいこのポイント還元の事業に参加されるかといった不確定要素もあり、当然のことながら実際の実施に当たって上振れの場合もあれば下振れの場合もある。我々としては、せっかくやる以上は広報・周知に努め、しっかりとご利用いただきたい。
 仮に予算が上振れした場合、予算の執行状況等をよく分析した上で適切な対応を検討していきたい。
○野田佳彦委員 とても矛盾することになる。私は、逆進性を助長するのではないかと。逆修正を助長しないと言うのだったら、キャッシュレスを思い切って進めるしかない。カードを持っているお金持ちと同じように、子どももお年寄りもカードを持って買い物できるようにする。それが逆進性の解消だが、そこまで行かない話だった。100%はないだろうけれども、そこまでは行かないと言っているということは、逆に言うと逆進性は残るということではないか。中途半端な政策を織り込んでいるから、本当にわけのわからないことになってくると思う。

【ポイント還元 実施期間】
○野田佳彦委員 これも本会議で安倍総理に聞いたが、ポイント還元の実施期間はオリンピックの前までだ。オリンピックの後には、残念ながら必ず不景気になる。昭和39年の後も山陽特殊製鋼や山一証券の経営破綻が起こったり、全体としては高度経済成長だっただが、我が国も不況に陥った。「オリンピックの崖」は残念ながら避けて通れない。景気を先食いして先行投資をいっぱいする分、やはり崖が生じる。
 今回は、5ポイント還元もその前に廃止するということは、今までの消費税は最大で3%の引き上げだったが、今回は5ポイント還元の恩恵を受けている人がいっぱいいるとするならば、ポイント還元策をやめると事実上5%増税になる。ということは、「オリンピックの崖」の上に、さらにポイント還元を外すことによって相当傾斜の激しい崖ができるのではないのか。
○麻生太郎財務大臣 2020年の東京オリンピック・パラリンピックの後どうなるかという点は、おっしゃるとおり我々としてはもう一回考えないといかんということになるのかもしれないし、それなりにどうにか行くのか、今は申し上げる段階にはない。
 いずれにしても今回、キャッシュレスの需要の拡大等々を見込んではいるが、今回のポイント還元事業はオリンピック前までの9カ月間、その他のものは1年6カ月としている。崖みたいな形にならないように、終わる時期を少しずらしてやるという我々なりの対応をしているが、そういった点を十分に考えていきたい。終了の時期を一律にしないという、それだけでできるというわけではないかもしれないが、我々としては、いろいろその状況を考えた上で、しかるべき対応をとらねばならない事態もある程度考えておかねばならないとは思っている。
○野田佳彦委員 結局のところ、臨時特別枠としてこのポイント還元についても2798億円を予算計上した。しかし、その臨時特別枠はどんどん延ばしていくことになるのではないか。きょうは取り上げる時間がないかもしれないが、住宅についても車についてもいろいろな優遇措置があり、これも「オリンピックの崖」と同じように消費の崖ができる。一度そういう優遇策をやると、やめるときが大変になる。結局はそれがどんどんどんどん延びていって財政が厳しくなっていくことが起こり得る。特に今回のポイント還元の、オリンピックの前までというやり方は、先延ばししていく流れになりかねないという強い懸念を持っていることは申し上げたい。

【ポイント還元 対象事業者/不正対策】
○野田佳彦委員 経産省に答弁をお願いしたいが、ポイント還元の対象となる中小・小規模事業者の要件。現段階で言えることは明確にご説明いただきたい。
○藤木俊光経産省大臣官房審議官(商務・サービス担当) 今回のポイント還元事業の対象としては基本的には中小企業基本法で定める中小企業の定義を用いようと考えている。例えば小売業に関しては資本金が5000万円以下または従業員が50人以下の企業を中小企業ということで中小企業基本法に規定している。基本的にはこの定義を用いて今回適用したい。
 一方で、資本金が小さいまま売り上げが非常に大きな企業があることもまた事実だ。いわゆる過少資本金という問題に関しては、これまでもさまざまな議論がなされているところで、こういった議論も踏まえて適切な基準を設けていきたい。
○野田佳彦委員 中小企業基本法の考え方をベースに置くという話だった。資本金や従業員数。大手の子会社みたいなところで過少資本のところをどうするかは引き続き検討すると。
 売上なども当然入ってくるか。というか、その要件というのはいつぐらいまでにはっきりするか。
○藤木俊光経産省大臣官房審議官(商務・サービス担当) 基準に関しては、この予算が成立して来年度の10月からポイント還元制度を施行することになり、そのためにはこの中小・小規模事業者の方に対象になるのかならないのかあらかじめ早い段階でお伝えしなければならないので、できるだけ早い段階で決めていきたいと思っており、できれば年度明け早々くらいには対外的に申し上げられるようにできないか今検討している。
○野田佳彦委員 年度明けぐらいにと。もしかすると複数税率の混乱を避けるためにポスター張ったりいろいろやるわけだから、これは早めに特定していかなければいけない。
 先ほど質問であったが、有効期限などが切れてしまってポイントが使えなかったとき、これは決済事業者のふところに入るのではないかという懸念がある。それに対しての基本的な考え方は先ほども答弁で述べられていたと思うが、要は「みなし」でやるという話だった。その「みなし」は相当厳格にやらないといけない。業種によって違うかもしれないが、どれくらい余ってしまうのかとか、よくよく見た判断をしなければいけないと思うが、その「みなし」をいつ頃決めるのか。
○藤木俊光経産省大臣官房審議官(商務・サービス担当) 使われないポイント分も含めて補助することにならないように、補助額の算定方法についてはしっかり決めていきたい。具体的には各決済事業者のポイントの価値の算出方法、それから執行率の実績を参考に算定方式を決定していきたい。執行率の実績については各社に情報提供を求めているところで、ことし10月からの実施ということを考えるとなるべく早く決めることが必要だと思っており、具体的な情報提供を受けてなるべく可及的速やかに決めていきたい。
○野田佳彦委員 10月1日から実施するわけだが、まさに中小の要件であるとか、今言ったような決済事業者の利益になりかねないことの対策だとか、要はそれまでに間に合うように検討するということだが、本当は、そういう不安をなくすためにこの国会で物を言わなければいけないはずだ。残念ながら、このポイント還元はいろいろな意味で詰め切れていない。
 業者間でもポイント還元が認められるので、転売を繰り返してポイントを稼ぐ不正も起こり得ることも問題として指摘されていたが、先ほどの共産党さんに対する答弁では明確に答えていなかった。「万全を期す」という抽象的な気合いは言っていたが、具体的に何をするかということは、手のうちを知られたくないという意味合いで言えないという答弁だったように思うが、本当に手のうちはあるのか。逆に、何も言えないことのほうに便乗する人たちが出てくるような気がする。もうちょっと明快に言わないと、気合だけではなくて、「万全を期す」だけではなくて、具体的にどういうことをやるかということも一定程度お話しされないと甘く見られるのではないか。
○藤木俊光経産省大臣官房審議官(商務・サービス担当) これまでも決済事業者においては、例えば利用者保護に欠ける行為を行ったり、あるいは不正な利用を行っている問題のある加盟店の情報を共有しこれを排除したり、あるいはこういった不正利用の情報についてモニタリングをして適切に対応するといったことをそれぞれ各決済事業者のほうで行われていると承知している。
 今回の制度も、これを悪用して例えば事業者間で複数回循環的な取引を行うといったような不正も、こうしたモニタリングの仕組みを参考にして防止することができると考えている。今、その監視のあり方や、そういった連携のあり方について、具体的な仕組みを検討しているところだ。具体的な内容については不正防止の観点でお答えを差し控えさせていただきたいが、既にあるモニタリングのシステムをつなぎ合わせることで万全な防止体制を構築していきたい。
 加えて、今回、このポイント事業に参加するに当たっては、当然のことながら各決済事業者に対してしっかりしたモニタリング措置をとっていただくことを条件にするとともに、あわせて、万が一こういった不正があった場合には、補助金の返還、あるいはその上での決済手段の停止、決済事業者の参加自体の見直し、さらには捜査当局と連携した刑事法令の適用といったことも含めた厳しい対応によって不正防止に万全を期してまいりたい。
○野田佳彦委員 5ポイント還元というのは、不心得者にとっては大きなビジネスチャンスになると思うので、本当にしっかりと不正を検知する工夫を凝らし、もしあった場合にはペナルティを科していくという、その全体としての告知を強く打ち出していかなければいけないだろうと思う。

【ポイント還元 予算膨張の懸念】
○野田佳彦委員 先ほど既に触れたが、ポイント還元の利用者が急増して予算が足りなくなる可能性について、2月5日の衆議院予算委員会で世耕経産大臣が少し示唆をしている。「予定より早く予算が尽きる見込みになったときは、財政当局と相談して対応を検討する」と。見通し甘い中でやっているから、このポイント還元がどんどん予算膨張してくる可能性を示唆している。この点はどうなのか。
○藤木俊光経産省大臣官房審議官(商務・サービス担当) 予算額に関しては、現状のキャッシュレス決済の動向などを踏まえ、事業実施に当たって十分と考えられる額を措置していると考えている。
 ただ、積算の一般論として申し上げれば、上振れのケースもあれば下振れのケースもあるということで、仮に上振れが起こって不足するような事態になった場合には執行状況などをよく分析して適切な対応を検討していきたい。
○野田佳彦委員 上振れの可能性が十分あると思うのは、どなたでも利用しようと思えば利用できるように新たにカードをつくるような話もあったり、企業がコスト削減のために一挙に中小の小売店に取引をするような動きをしたりとか、いろいろなことが起こり得る。上振れの可能性は十分ある。そのときに、麻生大臣、追加予算みたいのを認めるのか。
○麻生太郎財務大臣 経産省は当然本事業を実施するに当たって十分なものをやっておられるのだと、期待と思いと両方あるが、何となく話を聞いていていい加減そうな話になってくると「大丈夫かよ」という感じは正直しないわけではない。私も今の話を聞いていて、「大丈夫かいな」という感じの答弁だったので、ちょっといろいろ考えないわけではないが、仮に執行額が上振れして予算が不足ということになれば、これは執行状況などをよく分析して、善意の第三者が被害に遭うようなことがないように対応せねばならないだろうと思っている。
○野田佳彦委員 聞いていて大臣が心配になってくるということは、やはりこれは愚策だと思う。再考したほうがいい。一回踏み出してしまったら本当にえらいことになるのではないかと強く思う。ましてや、だらだら追加予算が必要になっていくのは許されることではない。
 そもそも消費税を引き上げることでの税収増よりも平準化と称する対策のほうがお金がかかっていくという「十二分の対策」をやってきている中で、その「十二分の対策」の中にさらに追加予算が必要になるかもしれない項目が盛り込まれているのは許されることではないと、強く強く申し上げたい。

【ポイント還元 「5ポイント」決定の経緯】
○野田佳彦委員 大臣も、このポイント還元については「変なの認めちゃったな」と本当は思っているのだと思う。もともと2ポイント還元の話は長らく出ていたが、5ポイントというのは突然出てきた。どういう政策決定プロセスの中で、この5ポイント還元というのが出てきたのか。2から5と上げたのは一体どういう政策決定プロセスだったのか。
○麻生太郎財務大臣 これは駆け込み需要や反動減の対策、平準化が重要というところからもともとスタートし、いわゆる大企業はみずから価格の引き下げを含む消費喚起を行える一方、中小企業はみずから対応することに限界があることから、ポイント還元事業の実施が、昨年6月の「骨太2018」において消費税率引き上げに伴う施策として、8月には経済産業省から事業要求の形で概算要求がなされたと記憶している。
 その後、経済産業省において検討が行われ、昨年11月の未来投資会議、財政諮問会議等々の経済政策の方向性に関する中間整理において、「期間を集中し十分な還元率を確保する等、ポイント発行のための補助金が中小・小規模事業者に十分に還元される仕組みとする」「対象店舗や対象品目については、可能な限り幅広く対象とする」といった事業の方向性が示された。
 私ども財務省に対しては昨年12月7日に経済産業省から具体的な予算要求がなされ、その後、事業の対象範囲、不正対策、所要額などについて議論を行った結果、経済産業省の提言を十分踏まえた形で予算を策定したというのがこれまでの経緯だ。
 2ポイント、5ポイントというのは、この段階で2から5に変わった。私の記憶では、この12月7日のときに、たしか予算要求が出されたときに出てきた話と記憶している。ちょっと正確な記憶ではないので、1日、2日ずれがあるかもしれないが。
○野田佳彦委員 12月7日という、本当にもう年も押し迫った大詰めのときに突然出てきたと。
 2ポイントというのは、それまでの間に話としては流布していた。2ポイント還元だったら、オリンピックが始まるまでの間、消費税をいわば2ポイント分据え置くということだ。5ポイントというのは、実質、大きく減税することになる。これは全く意味合いが違う。減税から増税だったら、崖も大きくなって影響が大きくなる。いろいろな意味で、2から5へ上げる意味というのが本当にわかりにくい。わけわからないことの一番の混乱要因だ。
 そんなものが、なぜ政府内でも与党内でも簡単にスルーされてしまったのか。まあ想像はつくが、それはやっちゃいけないだろうと思う。やはり国民の負担にかかわることであり、多くの皆さんがきちっと理解するものでなければいけないので、これだけ複雑な悪影響を及ぼすようなものがストンと決まってしまうことに対してものすごく違和感を覚える。大臣もいろいろ思いがあるのだろうし、そこは武士の情けで聞かないが、ここが一番問題だと思う。

【消費税の呪縛との戦い】
○野田佳彦委員 社会保障と税の一体改革は今も重要であり必要であると私は思っている。そのことについて理解をされる方も一定程度ふえてきたと信じているが、そうやって「社会保障の充実・安定や財政健全化のための増税なら、やむを得ないな」と思っていた人たちを裏切ることにならないかと心配をしている。過剰なばらまきにお金が使われる、税収よりもばらまき対策にお金が使われる。それに対して、心あるこれまでの理解者が不信を持ち、根源的な政策不信に陥るのではないか。ここが私が一番懸念しているポイントだ。
 仮に、これからも社会保障の充実のために、財政健全化のために、次の段階で消費税を引き上げますよと言っても、またこれだけ過剰なばらまきを言わなければいけない癖もついてしまう。ここは苦しくても何のために国民の皆さんに負担をしていただかなければいけないかということをきちっと丁寧に説明する政府でなくてはいけないはずなのに、残念ながらそこから逃げるあまりこういう政策に陥ってしまって、良識的な、本来は理解をしている人たちを裏切ることになりかねない。これが一番大きなマイナスだと思う。大臣のご見解を伺いたい。
○麻生太郎財務大臣 まことにごもっともな指摘だと、基本的にそう思う。
 その上で野田先生、今回消費税というのを考えた場合に、ご自分のお気持ちはともかくとして、これまで消費税を上げた人は全て内閣が倒れている。竹下、橋本、いずれも倒れている。今回、2回上げようというのだから。
 今回やはりデフレからの脱却を考えたときに、少なくともさきの戦争が終わってこの方、デフレーションによる不況をやった国は世界じゅうに日本以外ない。そういった意味では、私ども最初の対応を間違え、デフレ対策をすべきところをインフレ不況対策みたいなことをやって、結果として今回の不況が長引く結果を招いたのは否めない事実だ。
 そういったところから断固脱却を目指してこの7年間いろいろやっているが、少なくともその中で消費税というものは、これはもう我々としては避けて通れない、少子高齢化という日本の中にあってこれは避けて通れない一つの選択だと思っている。
 ただ、これを上げたときには必ず不況とか、必ず景気が悪くなるということになってきた過去の歴史がある。今回断固上げて、もし腰折れでもしたら、いよいよ終わりという恐怖感があったことは事実だ。これは間違いなく、そういった意識はすごくあった。「何としても、これを上げた以上は」というのがあった。
 私どもは、財務大臣としても前回2年前に上げるべきだと、その前もそう思っていたが、いずれも残念ながらできなかった。今回はということで、2回延ばして今回消費税をやらせていただこうとしているが、これがもし不況ということに仮になったとして、もう一回腰折れみたいなことになることは、前回5から8に上げたときのあの感じをもう一回ということだけは断固避けなければいかんという気持ちが強いのが正直なところだ。
 したがって、「2だったはずが5になったじゃないか」とか、いろいろ言われているのはよくわかるし、心ある方々に「お前、ここは耐えて頑張るべきところじゃないか」「俺たちの気持ちを踏みにじりやがって」というご気持ちがあろうというご心配をいただいているのはまことに的を得ているご意見で、私どもとしても心して対応せねばならんと思っているが、今申し上げたように私どもとしては景気が中折れする、腰折れすることだけは断固避けたいというためにいろいろなことを考えに考えて今回やっているとご理解いただきたい。
○野田佳彦委員 去年の財政審の建議で、平成の税財政運営を振り返って厳しい総括をしていた。「受益の拡大と負担の軽減・先送りを求めるフリーライダーの圧力に税財政運営が抗いきれなかった時代」「過ちを二度と繰り返してはならない」という厳しい総括だった。
 私はあれを見て、一方で思い浮かんだのは、やはり消費税との戦いだった。その厳しい総括をせざるを得なかったのは、消費税の呪縛との戦い。これがまだ断ち切れなかった。
 平成元年の1月8日、竹下内閣で3%の消費税が導入された。そこから平成がスタートしている。3から5も大変だった。その前に国民福祉税は頓挫する。そして、やっと3党の合意でこの呪縛を断ち切るための枠組みをつくったが、残念ながらまたこの呪縛に陥っている。新しい時代もこの消費税の呪縛との戦いなんだなと、極めて残念に思った。
 これは質問ではなく私の個人的な思いだが、この新しい時代もしっかり財政と向き合って、消費税からも逃げないで真正面から向き合った、そういう議論をこれからもやっていきたいと思う。

(以上)


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