見出し画像

財金委:2019年度税制改正・所得税 質疑2(野田佳彦2019/02/27)

2019年度税制改正に関する質疑(衆議院財務金融委員会)※要旨
 所得税法等の一部を改正する法律案

【税の簡素性/住宅ローン減税拡充】
○野田佳彦委員 きのうは主に軽減税率やポイント還元の懸念を伝え、大臣にはかなり問題意識を共有していただいた。きょうは、消費税も後で少し触れるが、税がさまざまな要請に応えて複雑になっていくことについて、住宅ローン減税も含めてお尋ねしたい。
 本来、税制は限りなく簡素に、税理士さんの仕事がなくなるぐらい、自分で計算できるぐらいが理想だと思うが、さまざまな要請を受けていくと複雑になっていく。ただ、複雑になったものも時に整理することで税制は構築されていくべきものではないか。
 今回、住宅ローン減税の拡充について期間を3年延長し、控除の仕方がより複雑になる。また、住宅については増税の半年前、3月31日までに契約を結べば、10月1日以降に物件が引き渡されても税率は8%という経過措置がある一方で、住宅ローン控除の拡充に加え、「すまい給付金」や、省エネ・耐震の優遇があり、消費税率10%でもそちらのほうが得かもしれないと考えるぐらいの支援策になっている。消費需要の平準化ということなのだと思うが、迷うぐらいの平準化になっている。
 問題は、複雑なことが複雑なまま残っていくと、申告のときにミスが出るとか、そういう副作用も出てくる。非常に税制というのは難しいなと思うが、この点について大臣はどうお考えか。
○麻生太郎財務大臣 税理士という職業が成り立たないぐらいの単純な税制が理想だというのは、今でもそう思っている。
 今回、平準化に的を絞り、控除期間を10年から13年に延ばすことにより低耐久消費財として大きな要素を占める住宅需要の平準化を狙ったところは決して間違っていないと思うが、それによって複雑化したではないかと、しかもそれがずっと残るのではないかという点に関してはご指摘のとおりだと思う。
 いずれにしても、いつやめるか、どうしたらやめられるか、きちんと腹を決めてやらないとずっと延び延びになりかねないというご指摘はまことに正しいと思うので、注意してやっていきたい。
 こういった点に関しては今後、平準化するためとはいえ難しくした部分のほかの部分を優しくするとか、何かいろいろなことを考えなければいけないという感じはする。
○野田佳彦委員 一度何かの優遇策をやると、途中で手を引くのはなかなか難しくなる。
 住宅取得の促進税制は住宅不足の時代につくられ、大変多くの人が恩恵を受けた。私自身も、10年ほど前に父親が脳梗塞で倒れ、急きょバリアフリーの家をつくらなければならなくなり、恩恵を受けている一人だが、これから空き家がどんどんふえ、いずれ3分の1ぐらいは空き家になってしまうのではないかと言われているときに住宅取得を促進するやり方がいいのかどうか。一方で、中古住宅の取引が活発に行われることが重要な時代になってきており、そのバランスをよく考えた政策をとっていかなければいけない。
 今回の一連の措置、住宅ローンの減税拡充、「すまい給付金」、次世代何とかポイント、いろいろな政策をやるが、自分でマイホームをつくる側にどんどんプラスになっていくと、中古の優位性はどんどんなくなっていき、さまざまな影響が出るのではないか。
○麻生太郎財務大臣 日本は木造住宅だから長く住めないと言われてきたが、奈良の東大寺は木造で1500年、私が住んでいる九州の家も100年以上経っているが別に住める。建てた住宅を何十年かに一回つくりかえるたびに金がごそっと何千万円なくなる。だから我が国では資産が残らない。ストックがもう少し豊かになってしかるべきこの国で、何十年か経ったらマンションが無価値になるのが当たり前だと我々思っているが、少し考え直さないといけないと思っているのが一点。
 もう一点はリフォームの話だが、今はエレベーターが簡単につけられる。これをつけると高齢者が養老何とかに入らなくても自宅で十分にできる。その分に補助が出たほうが、その人が養老院に入って国の金がそちらに行くより、トータルで考えたら国の支出としては安く済むのではないか。
 個人間の中古住宅の売買に関しては消費税の対象とされていないが、いずれにしても、引き上げに当たっていろいろなものを考えなければいけないと思っている。
 日本全体として、戦後の焼け野原から立ち上げていく時代と、その前、江戸時代はちょっとさかのぼり過ぎているかもしれないが、ほとんどの人が借家だった。それでみんなハッピーだった。何かがどうかしているのは、それが税制のせいなのか、人口構成のせいなのか、根本のところは私自身きちんと腑に落ちていないが。いずれにしても、住宅のあり方、持ち方、税制というものを考えないと、この国はいつまでたってもフローだけで回ってストックは全然ふえない。今のご指摘は真剣に考えなければならないと思っている。
○野田佳彦委員 住宅も車も、消費需要の平準化ということで、優遇策として新たな措置をとるが、これまでもずっと繰り返してきたが、時限的と区切った優遇策も途中でやめることはものすごく困難になる。暫定税率のように「暫定」がずっと続いてきたり、何十年と続く「当分の間」、限りなく恒久的になってくる。この繰り返しではないか。
 消費税のトラウマにとらわれていると、過剰に対策をつくり過ぎ、それがまた特別な政策をつくり、これを除けることがなかなかできなくなってくる。除けた場合は、それこそ「消費の崖」みたいになる。そこが本当に難しいところで、優秀な人たちがいるから知恵は出すが、出したものをどこかでとめるルールも考えなければいけないし、やめたときに大きな崖にならないようにしなければいけない。ものすごく難しいが、大臣の問題意識はよくわかるので、私の問題意識もご理解いただけるのではないか。
○麻生太郎財務大臣 役所の世界で「など」と「当分の間」はものすごく幅の広い言葉だということは、役所の人とつき合って思い知った。
 おっしゃるとおり、いつやめるかはものすごく難しい。景気がよくなっているときはともかく、そこそこのときは、やめたらまた落ちるのではないか、景気の崖が来るのではないかと。したがって、今回の住宅ローン減税や「すまい給付金」は、スタートする時期、終わる時期を、それぞれずらしている。自動車についても、2019年から2020年までの1年間としているが、時限を切り、そして消費に与える影響を緩和させようということで、一挙に景気の崖が来ることのないようにしている。こういった経済動向を引き続き見ながら、その時点で景気が、中国もそこそこ、アメリカもそこそこということになればいいが、何か起きる可能性も考えて対応していかなければいけない。
 いずれにしても、いつやめるか、どうしたらやめられるか、きちんと腹を決めてやらないとずっと延び延びになりかねないというご指摘はまことに正しいと思うので、注意してやっていきたい。

【ポイント還元 地域間格差の拡大】
○野田佳彦委員 きのうに続いて経産省の藤木さんにお越しいただいた。
 私はキャッシュレスの推進自体は反対ではない。それは進めていくべきで、日本は遅れていると思うが、税にかぶせたやり方については疑問がある。
 消費需要の平準化対策でポイント還元を導入するが、今もキャッシュレス化は地域によってばらつきがあるのではないか。おそらく東京が一番進んでいて、大坂や名古屋は進んでいるが、その他の地方の都市は、きのう現時点で平均20%とおっしゃったが、田舎に行くとその半分くらいではないかというイメージだ。
 今回のポイント還元策を導入すると、地方間の格差が広がるのではないか。小売店の競争が激しいところほど今回キャッシュレス化を進めるが、カードを必要としない、あるいは慣れていない地域は遅れていく。今回のポイント還元策によって背中を押されるように小売店が競争していく状況では、キャッシュレス化で地域間格差が広がる気がするが、経産省としてはどのようにお考えか。
○藤木俊光経産省大臣官房審議官(商務・サービス担当) ご指摘のとおり、一般に都市部に比べ地方圏でキャッシュレス化が進んでいない現状があることは事実だ。
 一方で、地方圏においては、人手不足が深刻化する中、生産性の向上が喫緊の課題になっており、商業・サービス業における生産性の向上、その中には当然キャッシュレスも重要な要素になってきている。
 また、インバウンドの観点からも、いわゆるゴールデンルートを外れた個人旅行が地方圏にどんどん入ってきている現状もあり、まさにキャッシュレス化の必要性がこういった地方圏においてもますます高まっていると考えている。
 こういった現状を踏まえ、各地域の自治体、地域金融機関、商工団体・商店街が中心となり、独自の形あるいは特定の決済事業者と連携する形でキャッシュレス化、例えばQR決済導入の取り組みが各地で盛んに進んできている。今回ポイント事業を推進するに当たり、まさに都市部に比べ遅れている地方圏での動きを加速する一助にしたいということで、こうした動きともよく連携し、地方圏でのキャッシュレス化を進める大きなきっかけにできないかということで、しっかり取り組んでまいりたい。
○野田佳彦委員 私はポイント還元は賛成ではない。これこそ撤回すべきだと、きのう申し上げたような懸念がたくさんあるということは重ねて申し上げたい。

【「そろばん勘定」と「国民感情」】
○野田佳彦委員 国民に負担を求めるときに大事なカンジョウが二つある。一つは「そろばん勘定」、もう一つは「国民感情」だ。
 そろばん勘定が、まず間違っている。経済への影響が2兆円というが、それに講ずる平準化の対策は2兆3000億円。「十二分の対策」と言うが、そろばん勘定として対策が大き過ぎる。何のために税金を上げるのかわからなくなる。
 ご負担をお願いするのだから、負担される人たちの国民感情もよく考えなければいけないが、国民感情を損ねているものが二つある。一つは参議院定数6増。消費税を引き上げる前に参議院とはいえ定数をふやすということは、身を切る覚悟を示さないで負担をお願いするという意味で、国民感情として受け入れられない。加えて、最近の統計不正がある。
 負担をお願いするのは、政府が信頼されていることが前提だ。北欧は消費税などが日本よりはるかに高いが、政府への信頼があり、受益と負担の相関関係がわかっているから痛税感につながっていない。その意味で、国民感情からも、今回非常に上げにくい状況になってきてしまっている。
 そろばん勘定においても、国民感情においても、非常に厳しい状況だと思うが、大臣いかがか。
○麻生太郎財務大臣 長期的に見て、最大の問題は少子高齢化だと思っている。今後とも働く人の絶対数が減り高齢者の比率がふえていく中にあって、税(負担)が勤労者に集中していく、偏っていくのは、これは広く薄くみんなで負担する形にするという意味からも、やはり直接税より間接税にかえていかなければいけないのは間違いない流れだと思うが、そろばん勘定として平準化のために2兆3000億はどう考えてもおかしい、やり過ぎだというご指摘は、間違いなくおっしゃっているとおりだと思っている。
 そして、それを裏付けるように統計の話やらいろいろな話が出てきて、政府の出す数字はあまり信用できないという話になってきている。年金に始まり、今日までいろいろそういったことが続いてきている現状は、確かに大きな問題だと思っている。
 国民感情、そろばん勘定、両方とも多くの問題があることはご指摘のとおりだが、そういったものを踏まえて今の状況を何とかしなければならないというのが政府の立場であり、いかにして傷を最小限にしてうまくやっていくか、私どもとしては真剣に取り組まねばならないと思っている。
○野田佳彦委員 私は、野党の中でも、社会保障と税の一体改革の重要性と必要性を最後まで訴えていかなければいけない立場だと思うので、絶滅危惧種になってもそれは訴えていきたい。しかし今回は、3回目の先送りは基本的に許されない。大きく国益を損なう。一方で、現実に進んでいる動きは、ばらまき付き増税だ。それでいけるとはとても思えない。非常にそういう葛藤を抱えている。
 葛藤を抱えている中で、いまさら言ってもしょうがないが、やはり過去2回の先送りは痛恨の極みだ。一般論で言うと、増税は景気回復期間でやるべきで、後退局面に入ったら増税できない。今、ギリギリのところに来ている。あのときに変にリスクなんか出してしまって先送りしたことは痛恨の極みだと思うが、痛恨の極みも共有してもらえるか。
○麻生太郎財務大臣 これはうかつに答弁すると閣内不一致の極みになりかねないので、答弁はちょっと差し控えさせていただきたい。

(以上)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?