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財金委:2019年度税制改正・所得税 質疑3【総理入り】(野田佳彦2019/03/01)

2019年度税制改正に関する質疑(衆議院財務金融委員会)
 所得税法等の一部を改正する法律案

○野田佳彦委員 一番小さな会派でありますが、他の党にご配慮いただいて均等割の12分をいただきました。
 限られた時間ですので早速質問いたしますが、平成という時代を税財政の面で振り返ったとき、私は、消費税の呪縛との戦いだったと思います。
 昭和においても大平内閣・中曽根内閣、それぞれ一般消費税・売上税、構想はありましたが頓挫しました。平成元年の1月8日、曲折を経ながら、竹下内閣で消費税3%が導入され実施されました。その後8%まで上げるまでに30年かかったわけです。歴代政権それぞれの立場でご苦労があったと思いますが、どうしても消費税は政権が倒れることにつながりかねない、そういう怯えが常にあったのだろうと思います。それが先送りを続けてきた一番の要因だと思うのですね。
 私は、社会保障と税の一体改革を通じて、3党合意で与野党が未来の世代に責任を持つために、「ネクスト・エレクションよりもネクスト・ジェネレーション」という合言葉のもと、お互いに責任を持ち合うことによってその呪縛を解こうとしましたが、残念ながらまた呪縛が出てきているように思えてなりません。
 安倍総理は、8%実現までは実施されました。今度10月1日の10%への引き上げに際しては、残念ながら呪縛にとらわれていると思うのです。それは、堂々と国民の皆さんに何のためにご負担をお願いするか(説明する)という王道からそれ、むしろばらまきをたくさんやってごまかすことによって、その呪縛に取り憑かれていると思っています。これは将来にわたって大変悪い癖を残すことになると思うのですね。
 平成31年度、消費税の引き上げで増収の見込みが約2兆円。一方で、先ほど話題になっていたポイント還元であるとか、あるいは住宅ローン減税の拡充であるとか、国土強靱化とか、さまざまな対策が講じられますが、これ全部合わせると2兆3000億円。過剰なばらまきだと思います。
 これによって、「社会保障の充実・安定と財政健全化のためなら、増税もやむを得ない」と思っていた人たちのその気持ちを裏切ることになり、何のための増税か、政策に対する根源的な不信が生まれると思いますが、総理のご見解をお伺いしたいと思います。
○安倍晋三内閣総理大臣 何のための増税かといえば、それは税収を上げていくためです。
 しかし、ただ税率を上げればいいということではなく、今「デフレではない」という状況をつくり出しましたが、経済が腰折れして再びデフレ経済に陥り、成長が鈍い、あるいはマイナス成長となってしまっては、これは元も子もないわけです。それはまさに税率を上げたにもかかわらず残念ながら税収は上がっていかないということにもつながっていくわけですし、多くの人たちが職を失い、あるいは若い人たちが残念ながら未来を見ることができない、つまり就職がなかなかできないということにもつながっていくわけでして、闇雲に税率を上げるわけにはいかないのは当然のことだろうと考えております。
 税率を上げていくにおいては、いわばそういう状況をつくり出すことが極めて重要になってくるわけです。しっかりと「デフレではない」という状況をつくり、そして経済を上向きにしていく中において税率を上げていく。まさにアベノミクスの効果によって我々は税収を3%引き上げる状況をつくり出すことができました。
 その次にさらに2%引き上げるにおいては、3%引き上げた際に、駆け込み需要もありましたが反動減も相当あった。そして、残念ながら景気は簡単には回復しなかった。のみならず、経済の成長においても、1回伸びて1回落ちただけではなく、その伸び方も鈍くなるという問題があった中においては、この対策に万全を期していくのは当然のことであろうと思っています。
○野田佳彦委員 私も、駆け込み需要と反動減があるということは承知していますし、それに対する一定の政策はとるべきだと思います。その点は理解をしているつもりです。
 ただ、その2.3兆円の中には、先ほど「過剰だ」と表現しましたが、よく精査されないで盛り込まれたものもたくさん入っているように思えてなりません。その代表的なものがポイント還元です。
 これは本会議でも総理に質問をしてお答えいただきましたが、税制のあるべき姿というのは、まず「簡素」であることです。しかし、軽減税率に加えて、2ポイント、5ポイントの還元が加わることによって、10%・8%・6%・5%・3%、これだけ複雑な税率になる。「簡素」からかけ離れている。ポイント還元は歳出項目ですが、税制をゆがめるのです。
 加えて、カードを持っていない子どもやお年寄りは増税になり、そしてカードを持っている人たちにとっては減税になるかもしれない。これは逆進性を助長すると思います。その意味では税制の「中立」「公平」、この観点からも失格だと思います。
 このポイント還元について、委員会で私は随分いろいろ質問しました。経産省が主に答弁したのですが、驚いたことに、例えばいまだに中小・小規模事業者の要件がまだ固まっていない。ポイント還元の対象となる、この対象が決まっていない。商品の対象も決まっていません、「タバコどうなんですか」という質問がありましたが、「まだ決まっていない」と言っていました。
 いろいろな不正が起こる可能性もある。ポイントを転売される可能性もある。そういう不正防止に対する対策も、まだ決まってない。ほとんど「検討中」でした。
 こんな粗雑な政策に2798億円も血税を使うというのは許されないと私は思いました。「財務大臣、なぜこれを認めちゃったのか」と思いました。この議論をやっていたら、麻生財務大臣からは、「今の話を聞いていて、率直に言って大丈夫か」というような本音がポロッと聞こえたのですね。なぜこんなことが起こったのか。
 麻生大臣おっしゃいましたが、このポイント還元(5ポイント)というアイデアは(経産省から)12月7日に聞いたと。よく練っていないのです。制度として練り上げていない。そんなものが約3000億円も使われる。これはまさにばらまきではないでしょうか。「過ちては改むるに憚ること勿れ」という言葉がありますが、私はこの愚策は撤回すべきだと思いますが、総理のご所見をお伺いいたします。
○安倍晋三内閣総理大臣 消費税の引上げ後、大企業は自己負担でセールなどを実施できるのに対しまして、中小・小規模事業者は大企業に比べて体力が弱く競争上の不備があるわけでございます。
 前回消費税を引き上げたときには消費税還元セールのようなものをしないように指導をしてきたわけですが、例えばヨーロッパにおきましては消費税率を引き上げても駆け込み需要の山が非常に小さいのはなぜかというと、小売店等がそうしたまさに消費税が引き上がる前に少し値上げをしたり、あるいは後に値引きをしたりしているということもありますから、今回はそういうことも可能にしていこうということにしたのですが、その際、今申し上げましたように、大型店・大企業は体力上昇できるが、競争上不利になる。こうした点を踏まえまして、今回は中小・小規模事業者に限定した上で消費をしっかり支えするため、大胆なポイント還元を実施することとしたものであります。
 今の段階でまだ決まっていないというご指摘でございますが、これはいずれ経産省においてしっかりと見解が示されるものと思っております。
 今回のポイント関連では、誰でも簡単に加入できるプリペイドカードなど、多様な選択肢を用意することで、クレジットカードを持たない方々も含め幅広い消費者がポイント還元のメリットを受けられるようになるわけです。QRコードなどは、これはカードがなくても手数料もなしで簡単に使うことができるようになるわけでして、また中小・小規模事業者は雇用の7割を支える、まさに日本経済の屋台骨でありまして、今回の大胆なポイント還元によって中小・小規模事業者の売り上げが大きく伸びれば、従業員の方々の所得拡大など、裾野の広い波及効果も期待されると考えているところです。そうした考え方から、今回導入させていただくわけでございます。
 また、キャッシュレス決済については、これは世界の大きな流れがあるわけでして、中小・小規模事業者の皆様もこの流れの中で今回導入ができるように、国としてもしっかりと支援していくということでございます。
○野田佳彦委員 今は思いつきの政策の問題を申し上げましたが、思いつきと同様に思い込みというのも弊害があります。その思い込みの弊害というのは、「デフレは貨幣的な現象である」と、国会で総理が明快に、確信を持って答弁されました。その思い込みから始まった異次元の金融緩和は、異次元の副作用をもたらすだろうと思います。金融の出口を見つけることは困難だと思います。そして、財政健全化の入り口に立つことも困難になると思います。
 私は、近い将来に、想像のできないような大きなリスクが口をあけて待っているような気がしてなりません。この異次元の金融緩和についても軌道修正していかなければならないと思うし、そうでなければ、後世においてそれこそ安倍政権が、幻想だけ振りまいた「悪夢の政権」と言われかねないと思います。総理のご見解をお伺いしたいと思います。
○安倍晋三内閣総理大臣 従来から申し上げているとおり、デフレはさまざまな原因があるものの、基本的には物価が継続的に下落する貨幣的な現象であり、デフレ脱却において金融政策が大きな手段であるという考えに変わりはないわけでございます。
 まさに、20年以上続いたデフレ経済に、「デフレではない」という状況をつくり出したのは、まさに私たちが進めた、また黒田総裁が進めた、この金融政策があったからこそ、我々は「もはやデフレではない」という状況を早くつくることができたわけです。そういう中で、例えばGDPにおきましても、名実が逆転していた状況を正常に戻すことができた。もしそれをやっていなかったら(デフレが)いまだに続いていたということになるわけですが、それこそ野田政権のときに決めた消費税の引き上げすらできない状況が続いていたのではないかと思う次第です。まさにこの政策を進めたからこそ名目GDPは1割以上成長したわけでして、雇用においても大きな成果が出ているのは間違いないのだろうと思っておる次第です。
 金融政策につきましては、具体的な手法については、この出口戦略を含めて日本銀行に委ねられるべきだと考えておりまして、私は黒田総裁の手腕を信頼しているところでございます。
○野田佳彦委員 終わりますが、今の金融政策も、「自分の任期中に出口を見つける」とか、もう越権行為のような発言で日銀を縛っていると私は思います。そのことだけ強く警告として申し上げて、質問を終わります。

(以上)

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