#104 日本の企業は社会主義?

この本では、次のようなエピソードが紹介されている。


中国に進出した日本企業で働いた中国人が、「日本の企業で

中国に進出した日本企業に就職した中国人が、「日本の企業で働いていると社会主義がうつるからいやだ」と言って転職した、(中略)日本企業は、入社時点で給料の差をつけることはしない。少しずつ差はつくけど、ある程度平等で一緒に働こうという雰囲気です。これは社会主義そのものじゃないかというわけです。

p105

いかにも皮肉が効いたエピソードである。中国(中華人民共和国)はかつて社会主義陣営の筆頭だったが、現在では実質的に資本主義国となっている。「社会主義市場経済」という言い方をしているが、要は「中国共産党の言うことを聞く資本主義経済」というわけである。

エピソードに出てくる中国人が批判したのは、日本企業の年功序列型の賃金体系だろう。日本企業では、高校や大学を卒業した若者を一括採用し、企業で育成して年齢が上がるにつれて少しずつ給料も上がっていくという年功序列型の賃金が当たり前だった。今でも公務員や一部の大企業の賃金体系としては一般的だ。
しかし、資本主義とは本来、実力主義の経済であるはずである。生産性の高い労働者の賃金が高くなり、そうでない労働者の賃金は下がっていくのが当たり前のはずだ。それが、日本企業は同世代はみんな平等という賃金体系をとっていたため、「社会主義」と言われたのである。「日本はもっとも成功した社会主義国家である」と揶揄されたこともあったほどだ(この言い方には政府の規制が多いことも関係しているようだ)。

一方、中国では入社当初から給料に大きな差があり、能力のある人はどんどん出世していき、ダメな人はすぐにクビになるというのが当たり前だった。かつては社会主義だった中国は、今や日本よりも資本主義が浸透した国になっているのかもしれない。

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