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17才4ヶ月と13日目のBase Ball Bear-2019.03.23「LIVE IN LIVE~17才から17年やってますツアー~」@福岡DRUM LOGOS

Base Ball Bear 結成17周年を記念した、「LIVE IN LIVE~17才から17年やってますツアー~」。17周年とはかなり突飛なアニバーサリーなわけだが、彼らにとっては大きな意味を持つ。リーダー小出祐介がベボベを結成した年齢であり(正確には16歳と11カ月なのだけど)、そして初期の作品群で青春と夏を描くワードとして何度も繰り返されたモチーフである17才。青さの象徴ようにも思えるが、バンド歴として考えれば17年とはかなりの長さだ。若さと円熟味が同時に伝わってくる"Base Ball Bear17周年"というキャッチの強さよ。

レーベル移籍後の新EP「ポラリス」のレコ発であり、メジャーデビュー2年目のベボベの状況を勢いづけた2007年の2ndアルバム『十七歳』を中心とした選曲ということであり、歓喜である。リリース当時中学生だった僕は、ライブに行くという選択肢など思いつきもせず、その後アルバムから全く披露されなくなった曲もあり、聴き逃しを大いに悔んでいたので。「LIVE IN LIVE」というシリーズによって、自分の行けなかった作品のライブを再び観れる環境ができたのは本当にありがたい。是非『LOVE&POP』もやってね。

くるりの「ばらの花」が会場SEとして流れる中、客電が落ちて3人が登場。「17才」のCコードが鳴らされライブはスタート。装飾も何もないステージ上で、この清廉でエバーグリーンな名曲が素直なポップネスを持って広がっていく。3ピース編成でより削ぎ落された音になっているにも関わらず、輝きは全く色褪せない。それはきっとベボベの在り方が常に生まれ直し続けているからだろう。それは2曲目「試される」のクールな興奮でも強く証明された。11年前の曲も新曲も、ひと続きであることを示すオープニングだ。

ツアーコンセプトを説明するMCを経て「ヘヴンズドアー・ガールズ」である。この曲、聴けるの11年待ったぞ。モラトリアム期の漠然とした死へ羨望が、瑞々しい切なさとともに贈られる1曲。ティーンの光と影を映す『十七歳』を象徴するこの曲の披露ですっかり気持ちは2007年へ飛んでいた。そしてぶっといベースラインが響いて「抱きしめたい」である。agehasprings玉井健二氏との共同制作によって、キャッチーなメロディ、恥ずかしいくらいオープンな歌詞を解禁して作風の幅を大きく広げた節目のシングルだ。

『十七歳』収録のシングルはどれも前作『C』までのベボベのロックバンド文脈の音作りを発展させ、J-POPのフィールドへと進もうとしていた転換期の産物である。それらを今のベボベが新たに編曲し直していると解釈すればこれはただの懐古ライブではない。リードギターがサビ裏で鳴ることで派手に展開させていた原曲と比べ、ぐっと熱情とリビドーを押さえたような今回の「抱きしめたい」は大人の哀愁を感じさせるリアレンジだった。その後に続いた「Flame」がそんな在りし日を振り返っているようでとても沁みた。

関根史織がチャップマンスティックに持ち替えた「Transfer girl」、生で観るとはっきりとベースとリードギターのフレーズを1人で黙々と鳴らしていて恐ろしさすら感じた。ちなみにこの曲で彼女はコーラスを行わず、代わりにドラムス堀之内大輔が裏声を用いて<苦しくて~>と歌っていて、思わず「お前が歌うんかい」と言いそうになってしまった。サビでもしっかりコーラスしていて、おじさん2人が一緒に歌う月夜のプールサイドにおけるボーイミーツガールソングっていうのもなかなか粋だな、と思って楽しかった。

今まで1番辛かったライブの思い出(小出、関根→2009盛岡、ホリ→デビュー前LOFT)の小噺を経て、「そんな日々の積み重ねを経て今がある」という流れに持ち込んだMCも流石の仕上がり。そして妖しさ渦巻くアッパーな「FUTATSU NO SEKAI」で空気は一変。そんな不倫ソングから「初恋」に繋いだ流れ、意図したか知らないけど僕はそのギャップにちょっと笑ってしまった。どちらともフリでもありオチでもある、みたいな。凄い曲順。そして「PARK」のストイックなグルーヴが会場のボルテージをあげていく。

ベボベ共通の友人・アサカワ君のぽっちゃりエピソードから、「アサカワがメンバーだったら福岡に来れてないかもしれない」と並行世界にまで言及しつつ、アサカワに感謝を込めて「ポラリス」をドロップ。これは非常にライブ映えする曲!メンバーそれぞれがボーカルを取るスタイル、最後のサビで全員が声を重ねたシーンはシンプルにグッとくる。そして北極星のモチーフを引き継いで「星がほしい」に接続した流れったらもう!<どうせ消えてしまうなら灯りならば君のために輝いていたいと思うから>が共振している。

名物・小出祐介による鬼カッティングから「青い春.虚無」だ。『十七歳』はベボベには珍しくリスナーへのメッセージ性が強いアルバムである。自分たちのライブに足を運び支持してくれる10代のファンが生活の中で秘める感情に思いを馳せ、小出祐介自身の中高時代の暗い記憶を吐き出して昇華するということに意味を見出したことがこの作品へ辿り着くきっかけだったと当時のインタビューで語っている。『十七歳』の暗部のようなこの曲が、今フロアを熱狂の渦に導いている。そして今もきっと誰かを救済しているはず。

ああ 今は光が見えなくとも
暗がり 走り抜けろ
そう 訳も無くからっぽの季節だけど
それが 青い春だ                                                
                                       青い春.虚無/Base Ball Bear

「LOVE MATHEMATICS」と「The Cut」という『ポラリス』Disc2にも収録されていた楽曲が終盤をアジテートしていく。それにしても「The Cut」の仕上がりっぷり。元々、ファンとしてもライムスターとの企画曲という印象だったのだが、すっかりライブのテンションを一段階上げるキラーナンバーと化している。楽曲が育っていくこと、バンドの変わっていくこと、それらすべて、本当に音楽ってめちゃくちゃドラマチック、、という流れで、本編ラストの「ドラマチック」。ベタでシンプル、だけど最も心揺さぶるシメだ。

小出の17才からの親友が結婚する際に作られた「協奏曲」がアンコールで演奏された。当時は歌うのがこっぱずかしかったらしいが、34歳の小出が歌うと素直な感動がしっかりと生まれる。原曲はソフトで温かなプロダクトだったが、ここでは無骨でハードなロックバラードへと変貌を遂げ、じっくりとタフな余韻を残してくれた。そしてダブルアンコールでは「夕方ジェネレーション」も!インディーズデビュー作までもまるっと回収、"ベボベとseventeen"という軸を味わい尽くした2時間だった。

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