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パルプンテの海で泳いだ

自分の欲望をきちんと把握している人間はどれくらいいるのだろう?
おそらくとても少ないのではないだろうか。
欲望、普段それは<夢>という言葉で美しく語られることも多い。
じゃあ、どこからが<夢>で、どこからが<欲望>なのか?
その線引きはとても難しい。

田中哲司さん演じるバディの滑稽なまでの横暴さ。
田中圭くん演じるガイがその横暴さと自らの欲と女性との間で変貌していく姿。
野波麻帆さん演じるドーンの女性であるがゆえの苦悩とたくましさ。

時々クスっと笑うシーンをちりばめながらも、おおむねブラック。
胸がギュっと締め付けられるようなシーンも多い。
それはわたしがどこかで感じた不条理と同じだから。

今回、双眼鏡も持参して、大きな動きがないシーンは表情を見るようにしていました。
当たり前だけど、セリフを言っているという感じが全くないのね…。
次に何を言うか、知っているはずなんですよ、俳優田中圭は。
でも、その表情だけ見ていると
(あ、自分で言った言葉に戸惑っているの?驚いているの?)
っていう時がある。
そこには、ガイが生きていて、田中圭はいませんでした。

特に舞台後半の表情の変貌はぜひ注目してほしいです。
ちょっと怖かったですよ、パルプンテとか言っていた人が、こんなにも舞台で豹変するの?って。
本当にゾクゾクしました。
パルプンテ!とんでもないもの出てきちゃってるよ!って思いました。
ちょっと一旦、その狂気を閉まってくれませんか?って。

前回でおおむねのストーリーと流れがつかめたので、今夜第2回目を観に行ってくるんですが、もっと、感情の動きに注目して観てみたいと思います。

― 純粋だと自称する人間ほど、実は腹黒く、狂気じみた一面をみさせられたことはないだろうか?―

わたしはこの舞台を見てからずっとこのことを考えています。

人は自分自身のことをどれほど分かっているのかと。
とっさに取る行動の恐ろしさを。
<言葉>がどれほど自分を惑わせる魔力を持っているのかということを。

そして、入り口でもらったたくさんの舞台のチラシの重み。
それがまたこの舞台を見たことで、ずしりと感じられるのです。
わたしたちにお芝居を届けてくれる側の人は、どういう気持ちで作品を作っているのだろうと。

彼らの生きる世界も、わたしたち観る側の世界も、実は隔てはなく、どこかで一つになっている大きな水槽で、わたしたちの傷口から出る血の匂いを鋭敏に嗅ぎ分けるサメのようなものがいるのかもしれない。
いや、そこに放たれたサメは私たち自身なのかもしれないし、彼らなのかもしれない。

正直、こういう作品を観る機会を与えてくれた田中圭くんに感謝です。
そして、舞台の彼を見て、ますますその底知れない魅力にハマってしまったことを最後に盛大にご報告いたします!

最後まで読んでくれて、ありがとう!
では、また!

わたしは今夜もサメと泳いできます。

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