#オヤカク #オヤオリ の問題点(1)

まず,私自身の不勉強につき,この場にて心よりお詫び申し上げます。

近時において,#就職活動 #シューカツ について, #オヤカク #オヤオリ なる言葉を知りました。私は,これらの言葉を #NHK のデータ放送ニュースを通じて知りました。

おそらく #大学生 #短大生 又は #専門学校生 のほとんどはご存じかと思いますが,当記事をご清読くださる方にはご存じない方もいらっしゃると思います。これらの言葉の定義を紹介させていただければ幸いです。

#オヤカク
内定前において,#求人者 が #就活生 の親権者等から,その #就活生に対する #内定 について確約を得ておくこと。
NHKサイトによると,
企業が学生に内定を出す際に、保護者の確認を事前に取っておくこと
と説明されています。

NHKWebサイト 広がる「オヤカク」就職活動に保護者も関わる時代に? | NHK | WEB特集 | 就活

#オヤオリ
内定前又は内定後かつ入社前において,#求人者 が #就活生 の親権者等に対し,#就活生 が応募しようとしている又は応募している #求人者 の職場への来訪を促し,親権者等に職場のありようを知ってもらうこと。
NHKサイトによると,
「親対象のオリエンテーション」のことで、内定者の保護者向けの説明会など
と説明されています。

lNHKWebサイト  広がる「オヤカク」就職活動に保護者も関わる時代に? | NHK | WEB特集 | 就活

私が #オヤカク #オヤオリ の記事を最初に読んだ時,真っ先に「いろいろ問題がありそうだな」と直感しました。
そこで,私が分析した #オヤカク #オヤオリ の問題点を指摘させていただければ幸いです。

1.  #就職差別 につながるおそれがある

#オヤカク#オヤオリ も,#就職差別 につながるおそれがあります。なぜならば,間接的に #就活生#家族構成 を知ることにつながるからです。

以前私は,2回に分けて #就職差別 について申し上げました。
就職差別(1) 就職差別(1)|shi_sha_juken (note.com)
就職差別(2) 就職差別(2)|shi_sha_juken (note.com)
就職差別(1)の記事をご清読くださると,当記事をより深く理解できると思います。

職業安定法第5条の5において求人者等の個人情報の取り扱いに関するルールが定められ,令和4年6月10日厚生労働省告示第198号においてその具体的な取り扱いの指針が示されています。告示第198号第五-一-(二)本文において,

職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、特定募集情報 等提供事業者、労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者は、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、当該目的を明らかにして個人情報を収集することとし、 次に掲げる個人情報を収集してはならないこと。

厚生労働省Webサイト 001003997.pdf (mhlw.go.jp)

と定められ,告示第198号第五-一-(二)-イにおいて,

人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項

厚生労働省Webサイト 001003997.pdf (mhlw.go.jp)

と定められています。家族構成は,ここに含まれます。

さて,職業安定法第5条の5第1項本文によりますと,

公共職業安定所、特定地方公共団体、職業紹介事業者及び求人者、労働者の募集を行う者及び募集受託者、特定募集情報等提供事業者並びに労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者(次項において「公共職業安定所等」という。)は、それぞれ、その業務に関し、求職者、労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報(以下この条において「求職者等の個人情報」という。)を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、厚生労働省令で定めるところにより、当該目的を明らかにして求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。

e-Gov法令検索 職業安定法 | e-Gov法令検索

と定められています。この条項を正しく読みますと, #求職者#個人情報 の取得について,直接か間接かの如何又は収集の方法の如何を問うていません。つまり,#求職者 である #就活生 から直接取得する場合も,それ以外の場合も,「社会的差別の原因となるおそれのある事項」にかかる個人情報の取得は違法とされます。よって,#オヤカク も「社会的差別の原因となるおそれのある事項」にかかる個人情報の取得にあたるため,職業安定法第5条の5違反にあたります。なお,NHKのニュースサイトでは,

#就活生 の内定企業がその保護者に対して電話で直接アプローチする手法
●「入社誓約書」等の文書への保護者の署名

 NHKWebsサイト 広がる「オヤカク」就職活動に保護者も関わる時代に? | NHK | WEB特集 | 就活

が紹介されています。

このように申し上げますと,職業安定法第5条の5第1項但書の規定と告示第198号第五-一-(二)但書を根拠に「正当な事由がある」「業務の目的の達成に必要不可欠」との反論が為されそうです。つまり,「内定辞退の予防」は「正当な事由」「業務の目的の達成に必要不可欠」との反論です。しかし,筆者は,この反論に対し,次のとおり再反論します。

民法第522条第1項において,

契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

e-Gov法令検索 民法 | e-Gov法令検索

と定められ,かつ,労働契約法第6条において,

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

e-Gov法令検索 労働契約法 | e-Gov法令検索

と定められています。つまり,労働契約の成立に際して保護者の同意が絶対的に必要とされるものではないということです。特に,#大学生 #短大生 又は #専門学校生 は法律上「成年者」(民法第4条)ですから,通常自分ひとりで法律行為を為す能力(行為能力)を有しているはずです。つまり,未成年者でないため,民法第5条第1項の「『法定代理人』の同意」は,原則として問題視されないということです。

また,いわゆる「 #内定 」とは,「就労の始期を大学卒業直後とする解約権留保付労働契約」と判例上(昭和54年7月20日最高裁判所第二小法廷判決(民集第33巻5号582頁))確認されています。つまり,内定後大学卒業の時期が到来するまでの間労使双方はお互いに契約の履行を請求できません(民法第135条第1項)から,内定を受けた #就活生 が内定後にこれを辞退することは可能と考えられます。しかし,#内定辞退 は「契約解除」(民法第540条・民法第627条第1項)に他なりませんから,慎重な判断が必要とされます。また,#内定辞退 によって求人者に損害が生じた場合,その損害を賠償する義務が生じます。

さらに,#求人活動 もビジネスの一環である以上,#求職者 #就活生 から断られる可能性が常に存在します。つまり,#内定辞退 の可能性を含みおく必要があるということです。営業活動でも,自社がどんなに素晴らしいプレゼンテーションを為したとしても,競合他社に契約(仕事)を取られてしまうことがあります。これは,#契約自由の原則 (民法第521条第1項)によるものですから,どうしようもないことです。当然のことですが,#求職者 #就活生 にも #契約自由の原則 #職業選択の自由 ( #日本国憲法 第22条第1項)がありますから,それを殊更侵害するような行動を慎まなければなりません。この点に照らしても, #オヤカク は不適切と言わざるを得ません。

少し長くなってしまいましたので,ひとまずここでまとめ。
#オヤカク は,#職業安定法 に違反する可能性があります。

#オヤカク #オヤオリ の別の問題点。次回申し上げられれば幸いです。今回は,このあたりで失礼いたします。

ご清読ありがとうございます。

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