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劇場公開じゃないのがもったいない!スティーヴン•キング原作の隠れた名作「スティーヴン・キング/ランゴリアーズ」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(503日目)

「スティーヴン・キング/ランゴリアーズ」(1995)
トム・ホランド監督

◆あらすじ
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ロサンゼルスからボストンへの夜間フライト。眠っていた数名の乗客たちが目を覚ますと、周りから人間が消えていた…。衝撃の事実を前に絶望と恐怖でパニックに陥りながらも、元の世界に戻る方法を必死で探す彼ら。そんな中、想像を絶する悪の手が忍び寄ってくる。(パラマウントピクチャーズより引用)
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『同じ飛行機に乗り合わせた乗客たちが乱気流と雷によって生じた時間の裂け目に入り込んでしまう』

という

“本来の時間に存在していない人々”が力を合わせて元の世界に戻ろうとする群像劇です。

原作はスティーヴン・キングが1990年に発表した中篇小説「Four Past Midnight」に含まれる一遍で、1995年にアメリカABC放送制作で前後編に分けて放送されたテレビドラマであり、日本では1997年にNHKで同じく二夜に渡って放送されました。

2008年には前後編を繋げたものを「スティーヴン・キング/ランゴリアーズ」としてDVDが発売されました。

現在、配信などはないようで、私はまた池袋のTSUTAYAでレンタルさせていただきました。

監督•脚本は「チャイルド・プレイ」や「フライトナイト」のトム・ホランド氏が務めています。

スティーヴン・キングとトム・ホランドのタッグだと「痩せる男」(’96)が真っ先に思い浮かびましたが、今作は95年製作のためおそらく「ランゴリアーズ」が初タッグの作品となります。

ちなみにスティーヴン•キング原作だと「IT/イット」も1990年に二部構成でABC放送でドラマ化しています。2017年にリメイクされた劇場版は劇中に登場するピエロ•ペニーワイズが27年ごとに現れるという設定に合わせたものだそうです。

ペニーワイズはこのドラマ版の方が断然怖いです。

今作は
『時間の裂け目に入り込んでしまった乗客たちがお互いの知恵を出し合って脱出を図る』という大筋の中で、パイロットやミステリー作家、殺し屋、教師など個性豊かな登場人物たちが奮闘する極上の群像劇であり、会話劇でもあります。

裂け目の世界(無人の空港)には音が無い、食べ物は味がしない、マッチや銃なども使用不可、機内は自分たちの時間の空間だから物も使えるし味もする等

そういった状況から推理して自分たちの現状を理解し、もと来た場所に戻れば正しい時間の裂け目に入れるのではと仮説を組み立てていく流れが非常に気持ちよく、3時間があっと言う間でした。

エングル機長役のデヴィッド・モース
「グリーンマイル」のブルータス役や「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のビル役など数多くの作品に出演しています。
(Wikipediaより引用)

デヴィッド・モース演じるパイロットのエングルが主人公ポジションではあるものの、一人ひとりに見せ場があり、全員が主人公と言っても過言ではありません。

実はイギリスの諜報部員だったちょいワルおじさんのニックは常にリーダーシップを発揮し、お邪魔なトゥーミーを窘めたりと存在感のあるキャラです。

ちょいワルおじさんのニック

クライマックスでの彼の決断は涙なしでは見られません。

ミステリー作家のジェンキンスは作家ならではの想像力から魅せる推理力が凄まじく、しかもその一つ一つが的を得ています。彼がいなければ最悪の結末を迎えていたかもしれません。

ミステリー作家のジェンキンス

そして盲目の少女ダイナの存在がこの作品の肝となります。
目が見えないからこそ、聴覚や第六感が冴えに冴え渡っており、時間の裂け目の空間では音が無いことやランゴリアーズの接近にいち早く気付き、何度も乗客たちのピンチを救います。

盲目の少女ダイナ

そしてテレパシー能力を使うことでトゥーミーを導き、結果的には彼をランゴリアーズの囮にして窮地を脱します。

この特殊能力に関してはもう少し説明があってもよかったような気もしましたが、そこまで違和感はありませんでした。もしかしたらダイナがこの作品の裏主人公なのかもしれません。

そして中でも語らずにはいられないのがお邪魔虫のトゥーミーです。

ブロンソン•ピンチョット演じるトゥーミー(右)

この作品の“事起こし担当”でもある彼は、周りの空気などお構い無しに「大事な商談があるんだ!今すぐボストンへ連れて行け!」と喚き立てるウザキャラです。

「ミスト」で言うところのあのおばちゃんです(笑)

しかし彼は幼少期に受けた父親からの行き過ぎた躾がトラウマになっており、すでに精神に異常をきたしているというかわいそうなバックボーンがあります。

自分の思い通りにいかない+時間の裂け目から抜け出さない状況

の最悪コンボによって追い込まれ、壊れていき、狂人と化します。虚空を見つめながら紙を裂き続ける病的なシーンや滑走路での壊れっぷりは一度見たら忘れられないインパクトがあります。

良い表情です(笑)
吹き替えは大塚芳忠さんが担当されています。
堪りませんね。

しかも最後は知らぬ間に囮にされる哀れっぷりで、バックボーンを知っている視聴者からするとあまりにも不憫でなりません。

この作品は彼なしでは語れません。

ちなみに滑走路でトゥーミーが見る幻覚に登場する上司役はスティーヴン•キングです。

あとこれは個人的な感想なんですけど、ランゴリアーズの追撃から逃れて上空に飛び立った後のラスト20〜30分が少々くどいように感じました。

もちろん面白いんですけど、結局戻れるならそんな長くなくてもいいんじゃないかなとも思いました。

そしてテレビドラマゆえの予算の都合なのかそれとも1995年の映像技術の限界なのか、引っ張りに引っ張ってクライマックスでついに登場するランゴリアーズのCGは今見るとかなりヘボいです。

ランゴリアーズに限らず、飛行機や崩壊する滑走路のCGもかなりレベルは低いです。

牙の生えた口だけの怪物で、個性や感情もない感じが、時間の裂け目に迷い込んだ人々を排除するタイムキーパーとしてのみ存在しているようでとても良かったです。

内容が完璧過ぎるがゆえにこのヘボいCGだけがかなり悪目立ちしており、ここさえ良ければもっと有名な作品になっていたのではないでしょうか。

なんとか劇場版でリメイクになったりしないもんですかね。年齢的にスティーヴン•キングがミステリー作家のジェンキンスを演じたりしても面白いと思います。

オススメです!

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もしよかったら覗いてやってください。

渋谷裕輝 公式HP↓


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