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指輪物語「瑶⁄Yō」

ブランド立ち上げての初めてのお客様。この方のおかげでストーリーを書き始めました。

・・・・・・

来年30歳。

肌荒れが悪化してからネックレスをつけなくなった。化粧も最低限になった。終電の窓の私は疲弊していた。

「丁寧に生きたい。」

それから紆余曲折あり、部署異動をもぎ取ってからは少し早く帰れるようになった。自炊も少し凝ることができるし、寝る前にお風呂に浸かることもできる。お肌のケアをする時間もできた。

鏡の中の29歳の私は、30歳になる私に語りだした。

「またおしゃれをしたい。」

そんな折、オーダーメイドの指輪に出会った。なんてちょうどいい!そうして飛びついた私のもとに、数週間後、指輪が届いた。

少し波打った華奢なライン。
つや消しの優しい光。
金銀混ざったような柔らかな色味。
一目で大好きになった。

人差し指に装うと、それは控えめに、温かく、私を彩ってくれた。たったそれだけで少し綺麗になれた気がする。

30歳になり、新たな仕事もまた忙しくなってきた。でもこれからは、穏やかで温かい気持ちを持続できるように、日々自分と会話していきたいと思う。



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