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創作詩まとめ

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読んで字のごとくです。 昔に書いたものは最後に日付を残しています。
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記事一覧

金魚、呪文、溺死

口をついて出た言葉
「好きです」
それを聞いたクラムボンは笑った

言葉は水のように
音は流れのように
私たちを包んで揺れた
引き金は何だったろう
あなたのまつ毛が風に踊った

ぱしゃんと飛び出た金魚は苦しそうに跳ねた
ぱくぱくと口を開いてひれを震わせた
私の口から飛び出した言葉に
ばくばくと私の心臓は跳ねて舌が震えた
酸素を失った金魚は臓物を吐いて死んでいる

壊れた蛇口のように言葉は止まらない

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おんなのこ

女の子はみんなアマノジャク

好きって聞いたら嫌いって言うし
美味しいって聞いたら美味しくないって言うし
良いって聞いたら嫌って言うし
構ってほしいのに構わないでって言うし

女の子はみんなアマノジャク
それでもかわいい
女の子

いちばんすきなひと

僕は君が大嫌いです
誰にでも笑顔を振りまいて
誰にでも優しくして
そのくせ僕にはそれらを分けてくれない君が嫌いです
でも一番嫌いなのは
そういうとこまで大好きだと思う僕自身です

君はみんなに愛されようと
君の一番良いところしか見せないけれど
僕だけには悪態をついて我儘を言う
僕だけには甘えていいんだって顔をする
そういうところが大嫌いです
でもやっぱり一番嫌いなのは
それら全てが君であることです

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それはとてもつめたくてやわらかい

初めて他人の温度というものを知った時

何の感情より先に驚きました

ああ、こんなに冷たいんだなあと

いやいや、身体はもちろん熱いですが

なんといいますか 内部的な 内側的な

自販機の「あったか〜い」とか「つめた〜い」とか

そういうものと違うんだなあと漠然と

そう漠然と考えて 痛みとか全然気にしなくって

ああきっと愛ってやつが無いからなのかな、なんて

ぼんやり考えながら

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日曜、午前7時半

あなたと朝を迎えたかった

朝日が柔く差し込む部屋で白いシーツに包まって

太陽があなたの頬を撫でる様を

長いまつ毛が影を落とす様を

薄い唇が夢を紡ぐ様を見ていたかった

細い栗色の髪に指を通して

そっと口付けをしたかった

寝惚けたあなたに「おはよう」と微笑みたかった

あなたと朝を迎えたかった

あなただけと朝を迎えたかった

孤独の夜から救ってほしかった

Gemini

Gemini

遠い遠い世界の果てで君と僕は空を見た
昼も夜も境無く
双子座の紡ぐ唄を聴いた
僕らはまるでカストルとポルックスだねと君は言う

それから幾星霜が経った時
僕らは星の唄を聴かなくなった
君がユニコーンに跨って
空を駆けるようになったから
君は闇に一際明るく輝いて
矮星の如く反射した陰は細く鋭く僕の瞳を貫いた

これはいつか見た夢だ
それにしては頭痛が酷い
まるであの凍玻璃に捕まったように
僕だけが地

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もらいタバコの君

もらいタバコの君

駅のすぐそばにある 少し薄暗い公園で
切れかけの街灯の下でタバコを吸った
僕はいつものハイライトで
君はまた銘柄が変わっていた
君そのものみたいだ、と僕は思った
そのタバコは君にとって何箱目なんだろう
僕は君にとって何人目なんだろう
でも僕は知っている
君がいつも違うタバコを吸っているワケを

いつだったか君に聞いたんだ
君は覚えていないかもしれないけど
川沿いにあるクラブの端のソファで
折れそう

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