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withコロナ時代。離れながら、繋がりながら、未来の働き方を探しにいこう。

2022年が始まりました。

新年明けましておめでとうございます。
SHIFTBRAIN(シフトブレイン)の代表をしている加藤(@addsugar_takuma)と申します。

ちょうど一年前の今日、新年のご挨拶と共にオフィスを解約した記事を書きました。

1万字近い長文だったにもかかわらず、多くの方々に読んでいただき、ご無沙汰していた同業者の方や、直接の面識がない方からも連絡をいただきました。コロナ禍において、オフィスのありかたや働き方の変革に関心が高まっていたことが理由のひとつとしてあるのかなと思っています。

そして2022年、まだ安心はできませんが、一時期よりは国内のコロナの状況は落ち着き、経済も戻りつつあるwithコロナ時代。
フルリモートに舵を切った結果、昨年一年間で社内にどのような変化が起きたのか、経営面やチームワークに及ぼした影響などについて、今回も少し赤裸々に皆さまにご報告していきます。
リモートワークについてはコロナ渦になって取り上げられることが増えましたが、その反面メリットだけが多く挙げられているようにも思えます。実際にフルリモートにしてみて弊社にもたらされた良いこと、そうでないことについて詳細をお伝えすることで、同じ悩みを抱えている方のお役に立てればと感じています。そして、これらの結果を踏まえた上で、2022年シフトブレインはどのような働き方を目指していくのかについて書いてみようと思います。


過去最高益。そして過去最高額のボーナス

まずは良かった点から。
以前より採用していた独立採算性によって、マネージャーたちが率先して数字に向き合い受注に前向きに取り組んでくれたことに加え、オフィスをなくしたことで販売管理費(以下、販管費)が激減し、創業以来の過去最高益を出すことができました。

ここで、削減できた販管費について少し詳しく書いておきます。
今まではオフィスの賃料と、電気ガス水道などオフィスの運営費に月々約130万円支払いが生じていました。それに加えスタッフたちの通勤費や移動費を含む交通費は月々約37万円。これらの合計値174万円をスタッフ一人当たりに換算すると、約7万円になります。

一方、フルリモート移行後は、まったく使用しなくなったオフィスを解約し、従来の1/10のスペースに移転したため、オフィス賃料を含む運営費は約25万円まで下がりました。
オフィスをなくすにあたり、代わりにスタッフたちの自宅作業をサポートするために全員に1万5千円の「リモートワーク手当」を設けましたが、それを差し引いても一人当たり4.5万円の減額となります。これをスタッフ全員分に変換すると月々113万円の削減となり、年間では約1,360万円もの節約ができたことになります。

次は経営への影響についてです。
前々期はコロナの影響を受けて大きく売上が落ち込んだこともありますが、昨対比180%、営業利益率も12%と非常に良い結果を出せました。また、コミットラインを超えた利益の40%を個人へのボーナスとして還元する「コミットラインボーナスシステム」によって、例年に比べより多くのボーナスをスタッフたちに還元することができました。

しかし一方で、問題も発生しました。

他の部署が、敵になってしまった

経営面で良い効果をもたらした独立採算制ですが、このシステムでは各チーム毎に仮想のお金のやりとりが発生するので、社内でも金額交渉をする必要があります。これは、従来社内でやりとりしていた細かな仕事に対しても、仮想ではあってもお金での価値が可視化されるということです。良い点では、仕事に対するより強い責任感を持つことにつながりますが、一方で同じ会社の中にいながらも、別の会社のように価格交渉しなければならないというシビアさや、価格に対して都度パフォーマンスを比較される点などが、次第にチーム間のトラブルを誘発する原因となっていきました。

あるチームからは、「社内のパフォーマンスが悪いので、外のクリエイターとだけ仕事をしたい」といった不満の声や、「プロジェクトの遅延の保証をしてほしい」といった声も挙がり、最終的には「これではもはや一つの会社である意味がないのではないか」と感じるスタッフまで出てくる事態となりました。こうした状況から、独立採算制について、経営面からではなくコミュニケーション面での課題において、改めて見直す必要が出てきたのです。

精神面・体調面で問題をかかえるスタッフも

また、フルリモート化において、次第に健康面や精神面での不安を抱えるスタッフが出てきました。これは、リモートワークだけが直接的な原因ではないかもしれませんが、実際に起こった一つの変化として書いておこうと思います。
弊社ではフルリモート化にあたって、自分の両親が住む地元に拠点を移したり、地方に移住したスタッフも多く、すでに1/4のスタッフが首都圏外で暮らしています。そしてもちろん従来の東京での生活のままのスタッフもいます。そうした状況の中、当初は離れて暮らすスタッフ間の円滑なコミュニケーション促進のための場として、月に一度リアルで集まるイベントの開催を予定していましたが、緊急事態宣言の発令により結局のところ年間を通してたった一度の開催しか叶いませんでした。

自然の近くで家族とともに悠々自適に過ごすスタッフがいる一方で、東京で一人暮らしをしているスタッフは、孤独と向き合いながら仕事をしています。そのスタイルが合う人もいれば、性に合わずにストレスを抱え続けるスタッフも出てきました。

一人で黙々とやる中で深夜作業が当たり前になり、出社していた当時に比べ生活のリズムが乱れて体調を崩しがちになったり、業務自体に支障が生じたりといった事態へと発展。他にも、一人で多くの案件を抱えすぎコントロールできず、やり遂げなければという責任感がプレッシャーになり、自分を追い込んでしまうスタッフも出てきました。

フルリモートに舵を切ったものの、独立採算制の合理的な性質との相乗効果により想像以上に多くの課題が浮き彫りとなり、独立採算制の廃止や、元の体制、つまり出社を基本とする体制に戻すことも視野に入れながら、毎週役員会で協議を重ねる日々が続きました。

準備さえも交流のきっかけとなる、グループ社員旅行

スタッフ間のコミュニケーション面においてのケアとして当初予定していた、リアルで集まるイベントを企画しようとしても、度重なる緊急事態宣言によって行動が制限されてしまい、ただ解除される日を待つしかないもどかしい状態が続きました。
さらに、社内交流イベントの必要性は強く感じながらも、その内容に凝れば凝るほど実施のための労力を要し、運営側の負担が大きくなるという問題もありました。また、時間をかけて企画したとしても、会社側が取り仕切ることで自由度がなくなり、「参加させられている」イベントになってしまうのではないかという懸念もありました。

そんな中、COOの山本がコミュニケーション改善施策のアイデアとして新しい案を提案してくれました。それは、ランダムに少人数のグループを作り、予算以外の「どこに行って何をするのか」はすべて自由というものでした。ただし、条件が一つ。「そのチームにとって最も思い出になる」内容を考えるというものでした。

<グループ社員旅行企画概要(抜粋)>
・部とは異なる4〜6名のチームを作り、日帰りないしは宿泊の社員旅行を実施する
・場所、交通手段、宿泊先、アクティビティなどチームで相談して決める(月2回のオンラインMTGで検討)
・すべての予約はチーム内で行い、予約内容を会社に報告する
・予算は一人あたり2~5万円
・開催4日前までに会社指定のPCR検査を実施する
(★重要)そのチームにとって最も「思い出になる」ことを考えて実施する

※宿泊の可否はコロナの状況を見て判断
※予算は開催日数により変動

本来であれば準備に負荷がかかるという問題点だったポイントを、「自分たちの行きたい場所の計画」という高揚感あふれる楽しい時間へと変換し、その共に計画する時間自体もオンラインではあれど、他のスタッフとの交流の場になり得るという点がこの企画のユニークなところです。

結果的には緊急事態宣言が明けたばかりということもあり、全グループ日帰り開催という形にはなりましたが、デイキャンプをするチーム、釣りに行くチーム、豪華な食事会を行うチームと、多種多様な企画が実施されました。実施後のアンケートでは「今回のイベントはチームワークの向上に有効だったか?」という質問に対して、参加者全員が「有効」と回答してくれました。

ワーケーションの様子
(一部の写真では、飲食や撮影のためにマスクを外しています)

もちろんこの一回のイベントで、起きている問題がすべて解消されるようなことはありませんが、この体験の共有が日常のコミュニケーションのきっかけになったことは事実です。また、日ごろ孤独感を抱えていたスタッフや、部間の摩擦に悩んでいたスタッフからも、少しずつではありますが前向きな姿勢が見られるようになりました。
このことから、同じ会社の仲間たちと他愛もない話で笑い合ったり、日々の小さな悩みをぼやきつつ共有するという、一見業務とは関係のないささいなことこそが、日常の業務をスムーズに進めることにおいてとても大切なことなのだと気づかされました。シフトブレインでは、今後も状況が許す限りリアルイベントを継続して行っていく予定です。

そして既出のように、会社の収益改善に大きな影響をもたらしながらも社内のスタッフ間の摩擦を起こす原因となった「独立採算制」については、前期で廃止することとしました。
改めて、全社一丸となってものづくりに向き合うため、元の「一枚岩」に戻すことにしたのです。

気づけば僕は、東京にどっぷりと染まっていた

シフトブレインは今後もその都度出てくる課題に向き合いながら、フルリモート体制を継続します。その理由は2つ。

1つは「スタッフたちがフルリモートを望んでいること」です。
昨年同様働き方についてのアンケートを実施した結果、リモート環境による弊害や帰属意識などの課題はありつつも、約8割のスタッフが「今後もオフィスを利用する意向はない」という回答をしました。
リモートワークについての世間の議論において度々頻出する意見に、「雇用されている側にとっては、自分にとって都合の良い点が多くただ楽だからリモートワークを希望しているのではないか」とするものがありますが、僕はそうは思いません。この一年、リモートワークのいいところも悪いところも経験した上で、より自分たちにとって良いと感じられる働き方を選択しているのだと信じています。
シフトブレインの中核は優秀なクリエイターたちです。クリエイターが最高のパフォーマンスを発揮することこそがより良いクリエイティブを生み出していくと確信しています。彼らが今の環境を望む限りは、その中で最高の環境をつくっていくことが僕の役目だと思っています。

2つ目の理由は、「自分自身の興味が、東京よりも地方や世界に向いてきた」ことです。
前回の記事でも取り上げた厚生労働省の「働き方の未来2035」では、こう記されています。

「働く」という活動が、単にお金を得るためではなく、社会への貢献や、周りの人との助け合いや地域との共生、自己の充実感など、多様な目的をもって行動することも包摂する社会になっている。

厚生労働省「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」報告書

東京は日本の中心として最も人口も多く、経済活動が盛んで、多くの仕事が集まり、一つ一つの単価も高い。よって、利益を効率的に生み出すという点においては最適の場所であると言えるでしょう。しかし、この報告書にある「社会貢献・地域との共生・自己の充実感」を目的とした場合には、一概に良い環境とは言い切れないのではないかと考えるようになりました。

シフトブレインは2005年に渋谷の桜丘町で創業して以来、リモートワークに切り替えるまでの十数年間、東京のオフィスに通勤可能なことを当然の条件としてスタッフの採用を行ってきました。新卒採用をほとんど行っていないこともあり、自然と東京在住歴も東京での職歴も長いメンバーが多い構成となっていました。そのスタッフたちと20年近く東京のクライアントとビジネスやものづくりをしてきたため、僕自身の考え方や価値観もいつの間にかどっぷり東京に染まっていました。

以前はそのこと自体に何の疑問も抱いていなかったのですが、この1、2年の間にそんな自分の在り方にいつしか違和感を覚えるようになっていきました。そして、一度染まってしまった価値観をリセットするためには、自分の過ごす場所そのものを変える必要があるのではないかと考えるようになったのです。

「東京ではないどこか」へ移住し、未来の働き方を模索する

そのような心境の変化もあって、実は僕自身も今年4月から福岡へ移住する決断をしました。とはいっても、本社は東京にある状態は変わらないので、月に2回程度、数日は出社する予定です。

同業の知り合いの方で移住の例を出すと、ベイジの枌谷さんやワントゥーテンの引地さんも、同じ福岡という地へ移り住む決断され、それぞれの記事でその理由について触れていらっしゃるので、興味のある方はぜひ読んでいただきたいです。読むと確実に福岡に移住したくなります(笑)。

僕に関して言えば、移住の直接のきっかけをつくってくれたのは、saltの代表の須賀さんという方でした。元々下北沢でSDAというWeb制作会社を営み、震災をきっかけに福岡へ移住された方です。

海を目の前にしたコワーキングスペースsaltを発信基地として地域のコミュニティーを作ったり、廃業になった温泉の再生をプロデュースするなど、まさに社会貢献や地域との共生を実践されています。

https://way.salt.today/kaiseikan-event/

ただ、自分も同じように福岡に根ざした活動をしていきたいのかというと、現時点ではそこは必ずしもイコールではありません。最初の出発点は、あくまでも東京ではないどこか、東京以外の場所に身を置くことで、客観的な視点を持ち、未来の働き方の価値観を養っていくことでした。
そして、今は福岡が僕にとっての「東京ではないどこか」の最良の地だと思っています。その大きな理由の一つは、中心地の天神から10分で空港にアクセスできる利便性があります。空港が都市に近いということは、つまり外に向けて常にドアが開かれている状態で、「世界や地方に最も近い政令指定都市」といえるからです。

また、地方の魅力という点において、弊社の広島サテライトオフィスも活動を始めました。
デベロッパーの佐藤が先月広島に移住をし、江田島の元幼稚園だった場所を借りて、シフトブレイン広島サテライトオフィスとして運営を開始しました。この様子は地元メディアにも取り上げていただき、注目を集めました。今後、広島の様子も情報発信していく予定です。

元は幼稚園だった施設をオフィスに改装しています

世界のクリエイターをつなげるコミュニティプラットフォーム「iDID」の始動

最後にひとつ。
僕自身が、東京にとらわれず地方や世界に目を向けたいと今強く思っている理由があります。それは本日フォーデジットさんと共同でプレスリリースを出した「iDID」です。

詳細はタイミングを見てフォーデジット代表の田口さんと語る場所を作る予定なので、ここでは具体的な内容については割愛しますが、「iDID」は世界中のクリエイターたちを実績でつなげる、コミュニティプラットフォームサービスです。構想は10年前にスタートし、水面下で一歩ずつ進めては止まり、進めては止まりを繰り返していました。このままではいつまでたってもローンチできない!とお互いに奮起し、会社としても株式交換による資本業務提携をして本気で取り組む覚悟をしました。

プラットフォームサービス以外にも、自分を育ててくれた業界をもう一度盛り上げるため、さらにはデザイン業界全体の発展のために、業界内の情報発信に加え、世界や地方のクリエイターとの交流会やイベント、さらには若手のクリエイターが評価を得る機会となるのアワードなど、様々なサービスを企画しています。

若手のクリエーターが、住んでいる場所にとらわれることなく、わくわくしてものづくりに没頭できるような世界をつくるため、また彼らのさらなる価値向上のために、本気で取り組んでいきたいと思っています。興味を持っていただいた方は、「iDID」のティザーサイトをご覧ください。

長くなりましたが、以上です。
また来年、皆さまにシェアできそうな出来事があれば、その内容もまとめてみたいと思います。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


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Illustration: Sunao Nakamura